「ふんふんふーん。」
ただ今、少し早い夕飯を作っている。
何作ってんのかって?
まぁあれだ。
唐揚げとかサラダとか。
あ、パスタもあるぞ。
ちなみに6人分だ。
累「今日は有希の歓迎会だからな。皆早く帰って来いよ!」
なんていう累たんの命令に誰も逆らえるはずもなく
今日は皆さん早く帰ってくるらしい。
純「ただいま。うわ、すごくイイ匂い。」
「お、純君お帰り。君が最後だぞ。もうすぐ出来るから着替えて来いよ。」
純「えっ!姫が作ってくれてるの?」
これでも一応女子なんで。
一通りの・・
いや、とってもベーシックなものくらい作れますぞ。
「簡単なヤツをちゃちゃっとね。それより純君、いい加減"姫"って呼ぶのやめてくれよ。そんな年でも柄でもねぇ。」
純「俺にとって姫は姫だからいいの。」
「・・・そうなんすか。」
さすが桜館住人。
この子もやっぱり何かが変だ。
「とにかく着替えて来い。」
純「うん。」
見た目は優しい王子系のいい男なんだけどなぁ。
なんであんななんだろう。
孝「…お前料理なんてできたのか?」
純くんと入れ替わりで孝君がおりてきた。
「ま、少しだけな。」
孝「・・・・・・。」
なんで黙るんだよ。
「-----おいてめぇ。今失礼なこと考えてるだろ。」
孝「お前も心を読めるようになったか。」
「…ふーん。孝様は夕飯いらないんですねぇ。」
孝「・・・・・いる。」
「んじゃ皿持って来い。」
バカなヤツめ。
地雷踏みやがった。
孝「・・・・ほら。」
「はいはいありがと孝様。」
孝「…その"孝様"ってやめろ。」
「え?なんで。」
孝「不愉快だ。」
「"孝君"よりしっくりくるだろ?それとも"オレ様"のがいいのか?」
それともお医者様か?
孝「・・・・・孝。」
「へ?」
孝「"孝"と呼べ。」
「孝?はいはい了解。全く、ここの奴等は名前を呼ばせたがる奴ばっかりだな。」
孝「あ?」
「累は少し違うけど…エロ・・・じゃなかった真樹もお前も"呼べ"って言うし。ま、私は呼び捨ての方が楽でいいけどな。」
孝「-----真樹が・・・自分から?」
「あぁ。あいつもお前に負けず劣らずの俺様だよな。」
皿に飯を分けながら会話する。
はいはいコレも持ってって。
孝「何があった。」
「は?」
孝「何かあっただろ、真樹と。」
「何かって-----あぁ、引越し手伝ってもらってな。」
孝「他は?」
「他は…お前と同じく仁のとこのBARに度々出没するようですが・・・」
孝「それ以外にだ。」
「え・・・・・他に何か----」
(…あるじゃねぇか。)
そう言えばディープなヤツを一度食らったことがあったな…
くそ---
思い出せば思い出すほど奴の所業は許せねぇ!
孝「やっぱりなんかあったんだろ。言え。」
「べ、別にお前に言うような事は何も…」
孝「------。」
「ま、気にすんなって!さーて、おーい野郎共!飯出来たぞー!下りて来ーい!」
孝が手伝ってくれたおかげで早く準備が済んだ。
お手柄だぞ。
「手伝いサンキューな、孝。」
孝「さっきの話、後でちゃんと報告しろ。」
「…なんだよ報告って。」
舌打ちして席に向かう俺様。
こいつも意味不明に不機嫌になる奴だな。
分かりやすいって言ったら分かりやすいが扱いが大変だぞ。
要「お、美味そー。」
累「すげー!」
真「まあまあだな。」
純「さすが姫!」
孝「毒入りだ、気をつけろ。」
「はいはーい。真樹と孝はいらないみたいなんで。こいつらの分皆でいただきましょうねー。」
真・孝「・・・いる。」
累「バカだなぁお前ら。」
本当にバカだ。
累「ではでは!」
全員席についたところで累がグラス片手に立ち上がる。
累「大分遅くなったけど…今日は有希の歓迎会ってことで集まってもらいました!それでは有希、挨拶を---どうぞ!」
え-----挨拶?
挨拶。
あいさつ・・・
「ど・・・・どーも、宜しく。」
「「「・・・・・・・・・・・。」」」
純「…短いね。」
累「…うん。」
す、すみませんね。
いきなりだったんで何も用意してませんでした。
「い、今更堅苦しいことは無し無し!とりあえず食おうぜー!いただきまーす!」
累「うん!いただきまーす!」
それぞれご飯に手を合わせて食事開始。
大勢での夕食なんて久々だな。
なんだかワクワクする。
要「それにしても有希ちゃんてば随分打ち解けちゃったよね。まさかの真樹と孝が懐くとはびっくりよ、俺。」
真・孝「・・・・・・。」
懐く?
どこをどう見たらあいつらが私に懐いてるように見えるんすか。
高野要、やはり変人。
お前の目は究極のお気楽眼鏡だな。
純「姫、俺とも仲良くしてよ。」
「あたしらは既に仲良しだろ?」
純「ほんと?やった!」
累「・・・アホ。」
純「ちょっと累。ダメだろそんな言葉遣っちゃ。」
累「言葉遣いなら有希に注意しろよ。」
ご、ごもっとも。
それにしても騒がしい食卓だ。
皆が揃うといつもこんななのか?
集まってるのは大人ばっかだってのに、これじゃまるで学校の給食じゃないか。
要「いやぁ有希ちゃんすごいよ。こいつらと打ち解けるなんて。」
「----これって打ち解けてるんすか?」
ニュアンスが微妙に違うような気がします。
要「うんうん打ち解けすぎ。純と累は置いといて真樹と孝が自ら女の子に話しかけるの見たことないし。」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ4人をスルーし、目の前にいる要ちゃんと会話を続ける。
「そう・・・なんすか。-----え、待って。それって要するに私のことを女子として認識してないってことじゃね?」
要「有希ちゃんのことを女として見ない男はいないでしょう。」
「いやいやお気遣いは嬉しいんですけどね。こいつら常識を持たない変態野獣共ですから。女として見て欲しくもねぇがそうと分かれば傷つくなぁ。-----このヤローがっ!」
孝「---ってぇな。何すんだよ。」
「・・・八つ当たり。」
孝「意味が分からん。後で覚えとけ。」
「ゴメンナサイ。」
たまたま隣に座っていた孝を殴っておいた。
要「くっ!有希ちゃんあんた面白すぎ。見てて飽きないわ。」
「…そりゃどーも。」
それにしても、いつ以来だろう
こんな賑やかな食事は。
たまには悪くないなぁ…
なんて思いながら完食です。
要「いやぁ、美味かったぁ。」
孝「毒は入ってなかったみたいだな。」
累「ご馳走様!」
真「まあまあ食えた。」
純「やっぱり姫は最高だね。」
「まぁ・・・色々変なのも聞こえたが…完食サンキューっす。そして歓迎会もありがとなー。」
なんと皆さん、全部食ってくれましたよ。
これは地味に嬉しい。
しかも全員集まってくれたし。
感無量!と言えないまでもなかなか嬉しいぞ。
純「片付けは俺らでするから。姫はゆっくりしてなよ。」
「え、別にいいのに。」
純「いいからいいから。」
「・・・ありがと。それじゃお言葉に甘えて----ん?」
PIPIPIPIPIPI-----
(この着信音は・・・)
My携帯が鳴り響く。