(なんて顔すんだよ・・・)
---遼に幸せでいて欲しい
そう言った後、有希は時々見せる悲しそうな表情を浮かべた。
こんなに間近で見たことも
もちろんまともに見たことだってない。
(やめろ・・・)
そんなの見たくねぇよ。
今にも泣き出しそうな顔なんて・・・
有「真樹・・・?」
「・・・・・・。」
なぜだかは分からない。
とにかく無性に
傍にいたくなった。
「ど、どうしたんだ?」
立ち上がり、対面する有希の元に向かった。
さっきの表情はもう無い。
既に元に戻ってる。
(嫉妬、か・・・)
そうだな。
イライラの原因は確かにそれだ。
それじゃなんだ。
俺はこいつが好きなのか?
まさかこいつに惚れてるとでも?
有「ま、真樹?どうした?」
隣に座るともはや条件反射。
有希はいつものように焦り出した。
(・・・有希に、惚れてる?)
いや、それは違う。
そんなに深いものは感じない。
有「あ、あのぉ・・・?」
「・・・・・。」
物は試しだ。
左手を伸ばし、頬に触れてみた。
(----------。)
なぜだ。
なぜか安心感が湧き出てきやがった。
(感情が勝手に揺れやがる・・・)
これが恋愛感情とは思えない。
だが、自分がこいつに惹かれてるのは確かだ。
(しかも-----遼に嫉妬?)
考えらんねぇ・・・
あまりの滑稽さに笑えてくる。
だが悠長に笑ってる場合じゃねぇ。
なぜならさっき
有希のあの顔を見た時
---守りたい
そう思った。
有「え!?お、おいコラ!やややめろー!」
「・・・・・。」
言っておくが感情に流されたわけじゃない。
頬を包んでいた手を抓られたんで・・・
そのままうなじを引き寄せて抱きしめてやった。
だがこれは失敗だった
(おいおい・・・)
抱きしめた体は驚くほど細くて・・・
有希が女だということを無理矢理自覚させられたような気がした。
「・・・お前、時々悲しい顔するよな。」
有「え?悲しい顔?」
「あぁ。」
有「そ、そっか?なんでもねぇよ?」
嘘をつくな。
ばればれなんだよ。
有「て、ていうか何やってんのお前。ちょっと離れてくれよ。」
「・・・・・・。」
少しは大人しくしてろ。
さっきみたいに。
「・・・泣きそうな顔するな。」
有「そ、そんな顔してねぇって。」
「してんだよ。」
有「・・・もしそうなら大好物だろ、ドS様。」
ドS様?なんだそれは。
ていうか話を逸らすんじゃねぇ。
有「は、放してくださいよー!」
「・・・悲しそうな顔は見たくねぇ。」
有「えっ?」
何に驚いたのかピクッと反応する有希。
そして動きを止めて勢い良く見上げてきた。
(隙だらけだぞ・・・頼むから今日はしっかり警戒してくれ。)
いつもより丸く見開かれた目。
唇もポカンと開き、いかにも間抜け面だと思う。
それでも、有希の唇に触れたい。
だがダメだ。
今キスしたら多分・・・
止まらなくなる。
(はぁ・・・)
唇から視線を逸らして目を瞑り
唇の代わりに額を合わせた。
有「マ、マジでどうしちゃったんだよ。気分が悪いのか?」
失礼な女だな。
今の俺が気分悪そうに見えんのかよ。
まぁ、日ごろあれだけ苛め抜いてたらそう思われても仕方ねぇが・・・
「・・・何があったか知らねぇけどよ。」
有「ん?」
「お前は俺が守る。だからもう、あんな顔するな。」
(だせぇ・・・)
まさか自分の口でこんな言葉を吐く日が来るとは・・・
だが今のは間違いなく
本心だ。
有「ぇ・・ぁ、ぁの・・・ぇ?」
「・・・・・?」
ぼそぼそと何かを呟く有希。
しかし全く聞き取れない。
(・・・なんだ?)
額を離す。
そして目を開け--
(・・・・煽ってんのか?)
こいつ・・・
すげぇ可愛い顔してんだけど。