秘密

秘密—7 SAKURA∞SAKU first

(・・・ったく。)

 

なんでこんなとこにいるのか知らねぇがトラブルに巻き込まれてんじゃねぇだろうなこいつ・・・

なんて心配をよそに、後の男が俺を社長と呼んだことで激しく驚いている有希。

どうやら知らなかったらしい。
一緒に生活して大分経つんだが・・・
ここまで興味を持たれていなかったとはさすがに少々傷つく。

 

『ちょっと無視しないでよね!』
『よ、呼び捨て!?なんで!?』
有「へ・・・」

 

それにしても煩い女共だ。
初対面かつ素性も知らない相手にここまで噛み付くのはどうかと思う。

 

(あぁ、なるほどねぇ・・・)

 

ふと、純と累の言っていたことを思い出した。
聞くところによると、純と累がいるのにもかかわらず有希に食って掛かってきた奴らがいたらしい。

つまり・・・
あの2人もこんな状況に遭遇したってわけか。

 

あいつらがどういうつもりで「彼女」だとか「好き」だとか言ったのかは分からねぇ。

だが確かに、有希の存在は呈のいい女よけになる。

ある意味「同棲」してるわけだし、辻褄合わせもばっちり可能だ。

 

有「え、えーとですね。私は杉浦君が住んでいる家の--」

 

(そうはさせねぇよ・・・)

 

なぜかふんぞり返って事実を話そうとする有希。
だが、そうはいくか。

 

「有希。」
有「え・・・?」

 

俺の後方から目を逸らしこっちを見る有希。

その視線を捕らえてじっと見る。
すると見事に喋るのをやめた。

 

(面白ぇ顔・・・)

 

疑問符たっぷりの表情で俺を見上げてくる。
なぜ言葉を遮られたのか分からねぇんだろう。

だがまぁとにかく、ここはお互い協力しようじゃねぇか。

 

有「うわっ!」

 

ずいぶん下にある肩を掴む。
そして話しやすいように引き寄せた。

 

『え、えぇっ!?杉浦さん!?』
『や、やだっなんでぇ!?』
夏「え、えっ?」

 

まぁ予想通りの反応だな。
だがこれで有希との話がスムーズに運ぶ。

 

有「なっ何す---!」
「騒ぐんじゃねぇ。」

 

奴らに聞こえないよう、耳元に唇を寄せた。

 

「なぁ、手を組もうぜ。」
有「は?」
「お前、困ってんだろ?」
有「え・・・」
「後ろの男だよ。」
有「あ、あぁ。まぁな・・・」
「俺もここに来る度にだりぃんだよ。彼女のフリしろ。」
有「・・・それは無理。ここらの世界じゃ遼の彼女で通ってる。」

 

(・・・んだと?)

 

---遼の彼女

なぜか、いい気持ちはしねぇな。

 

「後の男も知ってんのか?」
有「・・・分かんねぇ。」
「・・・そうか、分かった。じゃぁ適当に合わせとけ。」
有「え?」

 

耳元から離れて見下ろすと不安そうな顔。
だが説明してる時間は無い。

 

(まずは・・・・)

 

そわそわとこっちの様子を伺っている女共に目を向けた。

 

「こいつは有希。俺がずっと狙ってる女だ。」
有「-----は!?」

 

ま、この反応は想定内だ。

びっくりして離れようとするもんで肩を強く引き寄せた。
横から抱きつかれる体勢になる。

 

「誘いは有り難いがこいつに夢中なんだ。悪いな。」
『『そ、そんなぁ!』』

 

そう言いながらも2人はまだ有希に鋭い視線を向けている。

 

(女は怖いねぇ・・・)

 

とにかく今は作戦遂行が最優先だ。
向かい合うように有希を正面に引っ張り目を合わせる。

ていうかマジで面白ぇ顔だなお前。
さっきより不安そうな表情で見上げてくる有希。

女共に見えないよう身振り手振りで何かを訴えてくる。
だが何をやってるのかさっぱり分からない。

 

(まぁいい・・・)

 

訴えを全て無視して

 

思い切り有希を抱きしめた。

 

「ごめんな?」

 

片方の女の視線を捕らえると目に見えるようにそいつの顔が紅くなっていく。
隣の女も同様だ。

 

(それにしても・・・やけに抵抗がねぇな。)

 

腕の中に捕らえた有希。
こいつにしては怖いくらい大人しい。

家だったら間違いなく拳が飛んで来るはずだ。
なのに協力し合っているとはいえこれは大人しすぎる気がする。

 

---一体、なぜ?

 

『す、杉浦さんがそう言うなら・・・』
『う、うん。』

 

(取り込み中だったな・・・)

 

意識を女達に戻す。

場の空気に居たたまれなくなったんだろう。
2人はそそくさとその場からいなくなった。

 

(次・・・名前は、夏目か。)

 

ネームプレートを確認して男の方を見る。
そんなにビックリしたのか、正に驚愕した様子で放心している。

 

「夏目さんは有希の彼氏のこと知ってるんですか?」
夏『えっ!?は、はい・・・』

 

勢い良く目を泳がせバツの悪そうな顔をする夏目。

なるほど。
つまりお前は「有希=遼の彼女」と認識してるわけか。

 

「そんな顔しないで下さい。あいつとは古い友人で、実は俺の気持ちも知ってるんですよ。」
夏『えぇ!?そ、そうなんですか!』
「はい。色々と抜けてるヤツですが・・・あいつのことこれからも宜しくお願いします。」
夏『も、もちろんです!こちらこそお世話になってて!』

 

どうやら騙されてくれたようだ。

それにしてもこんなドロドロな三角関係を信じるなんて・・・
素直なヤツだな夏目。

 

「ところで有希。用は済んだのか?」
有「えっ!?う、うん。もういいですよね、夏目さん。」
夏『はい!今日はありがとうございました!』
有「い、いえ。」
「夏目さんと一緒だったんですか。それじゃ、こいつは俺が責任持って家まで送りますので。」
夏『は、はい!』
「では、失礼します。」

 

ビシッと背筋を伸ばす夏目に営業スマイルを送り
有希の肩を抱いたままその場から離れた。

 

とりあえず

 

上手くごまかせた、のか?