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「木戸さんも着いて来てくださいよ。」
木「すっごく行きたいんすけど。今からどうしても外せない用があって。」
「嘘をつくな。」
木「嘘じゃないっすよ!」
「じゃぁちょっとだけ待ってろ。すぐ戻るから私を家まで送っていけ。」
木「あ、やばい。時間に遅れそう・・・それじゃ!」
「えっ・・・ちょ---おい!木戸ーーー!!」
現在、変態マンションの駐車場。
「きどー・・・きどー・・・・きどー・・・・・」
遅い時間に迷惑ですが私の声がこだまする。
置いて行かれた。
あっさり置いて行かれた。
なんて薄情なヤツだよ木戸。
「あのヤロー!!」
辰「あーあ。行っちゃったね。」
楽しそうに車を見送る変態。
なにが「行っちゃったね」だ。
お前がそうさせたんだろうが!
「くそ・・・あんなヤツはもう知らん!とにかくさっさと下着ちゃんを返せ!」
辰「はいはい、着いておいで?」
「なんでだよ。持って来てくれよ。」
辰「イヤだ。面倒臭い。」
「て、てめぇ----!!」
プイッとそっぽを向く変態。
言っておくが全然可愛くないぞ。
辰「とにかくおいで?ちょっとゆっくりしようよ。」
「さっさと返せ。自分の家でゆっくりする。」
辰「はいはい。」
「・・・・・・・・・・。」
歩き出す辰巳さんに着いていく。
エレベーターに乗り込み上へ上がっていく。
辰「ただいまー。」
「・・・・・・・・・。」
そして・・・・・辰巳家に到着。
まさかまた来るとは思っていなかった。
二度と来たくもなかった。
辰「どうぞ、上がって?」
「だからイヤだって。待ってるから持って来てくれよ。」
辰「上がらないなら返してあげない。」
「------んだとぉ!!」
振り返らずにどんどん部屋へ入っていく変態。
そしてポツンと玄関に取り残される私。
放置・・・・
放置なのか・・・・?
「そっちがそのつもりなら----勝手に探して持って帰るからな!!」
カバンを置き去り靴を脱ぎ捨て、腕をまくってドカドカと部屋に上がりこむ。
どこだ下着ちゃん。
一緒に帰るぞ!
「どこにあるんだよ!?」
辰「さぁ、どこだったかなぁ。」
「チッ!!」
バサッとジャケットを脱ぎ、あー疲れたなんて言いながら冷蔵庫の中を物色し出した。
無視か・・・・無視するつもりか!?
まぁいい。
タンスの中ひっくり返してでも探し出してやる。
辰「透ちゃんも飲む?」
「いらん!」
辰「ゆっくりすればいいのに。」
「早く帰ってゆっくりしたいんだよ!」
手始めに洗面所を探した・・・
が、見つからなかった。
洗面所から出てきたところ酒を勧められる。
ふざけてんのかこいつは。
「ここかぁッ!?」
辰「違うよ。」
それにしても・・・広いぞ辰巳ホーム。
これじゃ探し出すころには夜が明けてるんじゃ・・・
そんなの絶対嫌だ。
早く帰ってのんびりしたい。
ビール片手にテレビに向かって笑いたいんだよ!
「はぁ・・・はぁ・・・おい、いい加減白状しろ!さっさと出せ!!」
部屋を物色してどのくらい経っただろう。
目に付くところを全てひっくり返し部屋の中は泥棒に入られたかのよう・・・
それなのに見つからない。
軽く息切れする。
「聞いてんのか!?」
辰「・・・・・・・・・。」
ソファーに座り雑誌を見ている辰巳さん。
聞こえてるはずなのに返事がない。
なんだその態度は。
お前は一体何がしたいんだ!
「こら!!」
辰「・・・・・・・・・・・・・。」
イライラする。
もう-----イライラすんぞー!!
「帰りたいんですけど!頼むから教えてちょーだい!!」
辰「なぁ・・・」
「なんだ!」
パタン。
やっと雑誌を閉じやがった。
よしその調子だ。
下着ちゃんのありかを言え。
辰「なんで連絡しなかった?」
「は?」
連絡しなかった?
何を。誰に。
「何のことだよ。」
辰「ふーん。とぼけるんだ。」
雑誌をテーブルに置き、スッと立ち上がる。
そしてこっちに近づいて目の前に立ち・・・
睨まれた。
「・・・・な、なんで睨むんだよ。」
軽くひるんでしまった。
これだけの身長差。
上から睨まれるとさすがに・・・ねぇ?
それになんか・・・顔がマジだし。
なんとなく・・・
視線に押されて後ずさってしまう。
辰「なぁ、なんで連絡しなかった?」
「だ、だから何を・・・ていうか近づくな!」
辰「お前・・・今日の約束すっぽかすつもりだっただろ。」
「えっ・・・」
すっぽかす・・・
つもりでしたよ。
そして逃げ切ったと思い込んでましたよ。
---ていうか!
「そ、そもそも約束なんかしてないだろ!それにデートしたようなモンだろうが!偶然とはいえ一緒にメシ食って酒飲んで!」
辰「へぇ・・・・・・反省は無し?」
「なんで反省しなきゃいけないんだよ!」
辰「透。」
「なんだ---」
(-------なっ!!)
ヤツの大きな手が近づいてきた。
もはや条件反射。
ぞわぞわと寒気が走る。
「----------!!?」
とっさに後に身を引くと最悪だ。
背中が壁にぶつかった。
そしてその隙に、顔を挟むようにヤツの手が後の壁に触れる。
辰「透。」
「-----ッ!」
思わず見上げると鋭い瞳。
視線を取られ・・・
目を逸らせない。
「な・・・なに---」
辰「逃げるな。」
ゆっくりと顔が近づいて来る。
逸らそうとすると頭の後に手が滑り込んで。
強引に正面を向かされる。
「--------ッ・・・」
唇が触れそうなくらい・・・近い・・・・
辰「反省は・・・無し?」
(またそれかよ・・・・・)
大体反省って・・・なんだよ。
「今日は顔合わせが入ったからデートに行けなくなった。」
そう連絡するべきだっただろって言いたいのか?
(ふざけんなよ・・・・・・)
こっちの話なんか全然聞かないくせに自分じゃ勝手なことばっか言いやがって---
「は、反省するのはあんただろ。私は悪くない。」
至近距離で繋がった視線。
ちょっと怖かったが思い切り睨み返した。
辰「やっぱりお前・・・面白い女だな。」
「・・・・・・・・・。」
クスッと笑ったかと思ったら少しだけ唇が遠ざかった。
内心・・・・・・ホッとした。
ここまで近づかれると・・・
さすがに私だって心臓が騒ぎ出す。
辰「だが・・・・・・・」
「----?」
辰「今日は・・・・・・お仕置きだな。」
お、お仕置き・・・・?
「----んッ!?」
頭に回った手に力が入ったかと思ったら
唇に熱を感じた。
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