変人だって。医者だって。

変人だって。医者だって。06 SAKURA∞SAKU second





『じゃぁな。幸せになれよ、孝。』

「・・・・・・・んだよ、それ。」







目の前にいるってのに
届く距離にいるってのに

手を伸ばしても掴むことができるない。






なんで






なんで離れて行くんだよ・・・







『・・・・・・・・さよならだ。』

「---------!」















有「うぉ!?な、なんだ?また怖い夢か?」









「・・・・・・・・・は?」










また・・・・・・夢-----?









有「大丈夫だ安心しろ。ここは家だぞー。」

「・・・・・・有希?」

有「そうだ、私だぞ。」






いつの間にか






また有希の手を掴んでた。






(なん・・・・だよ。あんな・・・夢・・・)






頭の靄が晴れて、だんだん視界がはっきりしてきた。

心配そうな表情で有希が顔を覗き込んでる。






「-----は・・・・ぁ。」

有「大丈夫か?よっぽど怖い夢だったんだな。」






思わず脱力。

ため息と一緒に手で顔を覆う。

夢にうなされて目が覚めるなんて・・・

ガキかよ俺は。






有「なぁなぁ、どんな夢だったんだよ。」

「え・・・」






心配してるぞ、でも興味津々だぞって顔を向けられた。

ていうかどんな夢って・・・

お前の夢だよ。



お前が俺に背を向けて

そして---











思い出したくない。








有「お前が怖がるものってなんだ?今後の参考に是非聞いておきたい。」

「・・・・・・・・・。」






今後の参考ってなんだ。






有「あれ、顔赤いな。熱が上がっちまったかな・・・」






頬に触れる手。

冷たいそれが悪夢を癒してくれるようで

気持ち・・・いい・・・・・











----------さよならだ。











「--------っ!」

有「わ!どど、どした!?」






思わず体を起こす。

あまりの勢いにビックリしたのか有希が後に倒れそうになった。






(くそ・・・・・なんなんだよ。)






ただの夢じゃねぇか。

なんで頭から離れないんだよ。

なんで振り回される---






「・・・・はぁっ・・・・は・・・・ぁ・・・」






動悸が激しい。

心臓の音が聞こえそうなくらい大きい。






(く、そ------)






・・・・苦しい。

上手く息ができねぇ。






有「大丈夫か?そんなに怖かったのか?」






俺に手首を捕まれたままの有希。

遠慮がちに下から覗き込んでくる。






(・・・・・・・怖い?)






確かに・・・怖かった。

こいつが離れて行く。

それがこの上なく・・・

怖いと感じた。






「・・・・・・っ!」

有「お、おい大丈夫か?何か飲むか?」






(さよならって------)






ゆっくりと目を開き、有希に視線を向ける。

すっげぇ心配そうな顔。

掴まれてない方の手をベッドにつき身を乗り出して俺を見てる。






(この有希が-----いなくなる?)






顔も見ることができない
声も聞くことができない

触れることもできない・・・










こんなに愛しくて堪らないのに?












「・・・どこにも行くな。」

有「え?」






掴んでいた手を離し、有希の頬を包む。

ちゃんと・・・・触れる。

有希はここにいる。






「俺の前からいなくなるな。」

有「お前・・・もしかして私がいなくなる夢でも見たのか?」

「・・・・・・」

有「心配するなって!良くなるまでずっとここにいるからな。」






『看病なら任せろ』と親指を立ててニコッと笑いかけられた。





「・・・違う。」

有「は?」

「そういう意味じゃねぇ・・・」

有「へ?」






さっきのアレが夢だってのは分かってる。

分かってる----

だが、もし現実になったら?






さよならなんて・・・・






(絶対イヤだ・・・・)






所詮夢の中の出来事。

現実に起きても無いことを恐れるなんてバカみたいだ。






だがあの夢のせいで

こいつを手に入れたくて堪らない渇欲が、一気に膨れ上がったような気がする。





抱きしめたくて
触れたくて

愛しくて






欲しくて欲しくて






堪んねぇ・・・







(やば、い・・・)






有希に対する欲求がグラグラと湧き上がってくる。






ただでさえ自分を抑えるのに日々苦労してんのに






熱で朦朧としてる頭で制御すんのは---






有「うわっ!!?」







無理・・・・だ・・・







有「---え----ぁ、んぅ?!」







驚く有希をベッドに引っ張り込んで







唇を奪った。