『何言ってんの。』
「へ?」
『他の女より有希に惹かれた。それだけじゃない。』
「・・・・・。」
『ねぇ有希。あんたさ、新名君と付き合ってる期間が長かったから分からないのかもしれないけど。有希ってすごく魅力的だよ?』
「み、魅力・・・?」
『どこがって言われると困るけど・・・なんと言っても面白いから。』
「お、面白・・・」
それって喜ぶところなんすか?
『住人さん達にとっては特に衝撃的な女だったと思うわ。』
「なんで。」
『有希の究極の面白さが見た目で絶対釣られないことだからよ。』
「・・・は?」
『普通、あんなにカッコ良かったら少なくともドキッとするし、間違っても男として見ない女はいないでしょ。』
「・・・そんなもんすか?」
『そうよ。』
そういえば前に誰かに言ったことがあるような気がするがドキドキしないのは普通の女子より鼓動の速さが遅いだけだと思います。
イケメンを見たら普通に『兄ちゃんカッコいい!』とか思います。
『私の経験から言って、特に孝君や真樹君みたいな人は自分から求めたり優しくするタイプじゃないからねぇ。』
「へぇ・・・」
『あんたにそこまでちょっかい出すってことは・・・多分、真樹君も有希に好意を持ってると思うよ。』
「・・・なに言ってんすか。冗談はよし子--」
『それにしても・・・孝君は女を本気で好きになったことが無いんじゃないかな。』
「へ?」
『有希に対する気持ちが何なのか自分で分かってないような気がする。』
「・・・・・。」
ストローで氷を突付きながら淡々と分析結果を述べるあっ子。
ていうか---
「お、お前・・・・恋愛博士なのか?」
合ってるかどうかは疑問だが
見たことも無い奴らのことをそこまで推理するとは・・・
あっ子様恐るべし。
『あのねぇ。同じこと私から相談されたって考えてみなよ。多分有希も私と同じこと言うんじゃない?』
「・・・そうか?」
『そうよ。』
(そうは思えねぇけどな・・・)
せっかく相談に乗ってもらったけどゴメン。
恋愛沙汰を避けまくってきたからか、それとも元々だろうか
好きだの嫌いだの、繊細な感情を読むのは苦手だ。
とにかくはっきりしてるのは
やっぱり今は
男はいらない。
「まぁ、あいつらが男だってことと女として見てくれてるかもって・・・考えてみる・・・」
『うんうん。有希も大変ねぇ。普通の男5人でも大変なのに。スペシャルイケメン5人だなんて。』
「いやいやだから・・・好きって言葉をくれたのは累だけだ。」
『皆好きになるって、絶対。』
「お前も引かねぇなぁ。まぁもしそうだとしても・・・私は、まだ無理だ。」
『・・・そっか。』
あっ子は少し悲しそうな顔をした。
ごめんな。
変に心配かけちまったかな。
とりあえず
何かが解決したわけではありませんが
奴らが本当に私を女として見ていたとしても
私が奴らを男だと意識したとしても
---私が『恋』をすることはありえない
という結論が出ました。
「ありがとな。マジで。」
『また報告してね!』
「なんだよ報告って・・・」
またねぇ!と手を振りあっ子は元気に帰っていった。
「・・・はぁ。」
どれだけ長い時間話してたんだろ。
店から出たら外は薄っすら暗くなってきていた。
(・・・帰ろ。)
前進も後退もしない現状にため息をついて
私も桜館へ帰宅した。
・・・・・Help Me・・・(完)