「あいつとは・・・別れた。」
あ『・・・・・そう、なんだ。あんまり深く聞かない方がいい?』
固まっちまったのは不意に名前を聞いたせい。
乙女のようにそいつに未練があるとか忘れられないとかそんな感情は一切無い。
「別に構わねぇよ?懐かしい名前聞いてビックリしただけ。あいつとは3年位前に別れた。」
あ『そうなんだ。なんでって聞いていい?』
「お前らしくねぇなぁ。別にいいって言ってんじゃん。」
妙に気を遣うもんで笑ってしまった。
「別れた理由か・・・簡単言うと女に取られた。」
あ『えっ!?』
「そんだけ。」
あ『詳しく聞きたい。』
「えー。」
あ『聞いていいって言ったの有希じゃん』
「あ、あぁ・・・」
『ドンマイ。』
別にいいんだけども・・・・
聞いても楽しいことなんてないと思うけどな。
「卒業して、あいつが医療関係の会社に就職してしばらく経った頃かな。同じ会社で薫のことすっげー好きになっちゃった子がいてさ。その子が薫に猛アピールするようになったんだ。それがえっと・・・2年くらい続いたかな。」
あ『えっ!?』
「私の存在ももちろん知ってたし、私も薫も彼女に止めてもらえるように何度も話したんだけどな・・・3人で話し合いになったこともあった。」
『な、何それ。・・・それで?』
『懐かしい』なんて言えるようないい思い出じゃないな。
思い出したくない部類に入るのは間違いない。
「まぁ、アタックされ続けた期間も長くて薫も疲れてたみたいだし。最後は流れちゃったのかね。」
『・・・新名君はその子の方に行っちゃったってこと?』
「そうだな。」
思い出すのも、このことを話すのも
本当に久しぶりだ・・・
『・・・・なにもされなかった?』
「え?」
『そんな男とは別れて正解よ。有希のためにも良かったと思う。それよりもその彼女しつこかったんでしょ?有希は何もされなかった?』
「・・・・・・・・・・・・。」
『・・・・・・・・・・有希?』
自分がどんな顔してるのか分からない。
でも・・・
あっ子の表情からひどい顔してるってのは分かる。
顔に出るなんて
まだまだガキだ、私は。
「悪ぃ。それ以上は・・・話したくない。」
『・・・・・ううん。ごめんね、聞きすぎたね。』
「いや。こっちこそ悪かった。」
あっ子、ごめんな・・・
そんな顔しないでくれよ。
『・・・でも良かったじゃん!有希、新名君と結婚しようと思ってたでしょ?』
「・・・あぁ。」
まぁね・・・
最後の方はぐちゃぐちゃしてたけどかなり長く一緒にいたからな。
お互い将来を約束してたし、こいつと結婚するんだなぁって疑ってなかった。
それに、好きだったからな。
「ま、まぁ・・・・そういうことがありましてですね。私はまだ恋愛する勇気がないんですよ。」
『ふんふん?』
「そこでですね。今日は相談したいことがあるんですが---」
『なるほど!!』
「----。」
ざわつきが売りのファミレスが一瞬にして「しーん」と静まり返った。
「あ、あっ子さん・・・声がでかいっす。」
『なるほどねぇ。』
「・・・・・あのぉ。」
再びざわめき出す店内。
そしてうんうん頷くあっ子。
一体何に納得されてるんでしょうか。
ぜひ教えてもらいたい。