初体験

初体験—9.5 GAME








「---ぁッ・・・ぅ・・・」







指が引き抜かれると同時にのけ反った体が脱力する。

そしてポスッという音と共に体がベッドに沈みこんだ。






「ハッ・・・は---ぁッ---!」







(苦、し・・・)








心臓の音が凄まじい。

まるで暴走族のバイク。
いつ弾けてもおかしくない。






「ハァッ、ハァッ---ぅッ・・・」






苦し紛れに横を向く。

霞む視界に無防備に投げ出された自分の手が見えた。








(なん・・で---?)








素朴な疑問。

そして重大な問題。











---どうして私は、恐怖に堕ちない?












(キス、なんだろうな・・・)









どうして?なんて思いながら実は確信を持ってたりする。









---なぜ恐怖に堕ちないか









それは

キスに夢中になるうちに恐怖が消えるから。








いや、消えるってのは少し違う気がする。

正確に言うと---









キスに夢中になりすぎて恐怖を忘れるから。









(・・・どんだけキスが好きなんだよ。)









晋はキスが上手い。
それは認める。

でも私達は恋人同士じゃないし、キスを交わす間柄でもない。


しかもこれはゲーム。


晋にとってキスはただのオプション。

気持ちの篭ってない業務的な行為だと分かってるのに---







それでも私は、キスに感じてしまう---







(最低だな・・・)







なんて快感に貪欲な体だ。

我ながら自分に嫌気がさす。









「---ハッ・・・ハァッ---」








それにしても苦しい。

空気薄いんじゃないかこの部屋。







(眠、い・・・)







酸欠のせいか睡魔まで襲ってきた。

無意識に瞼が落ちてくる。
目を閉じた瞬間眠れそうだ。



それに今眠れたらきっと---



極上の---








安眠・・












---チュッ











「----ッ!?」








唇から-----リップ音?



大きな音じゃなかったと思う。

だがヤケに頭に響いて体がビクついた。

反射で上を見るとクスクス笑ってる晋。







晋「眠いのか?」







なんで笑ってるのか分からずボーっとしてるとそう聞かれた。

どうやら寝そうになってたらしい。






晋「寝るなよ?」






フッ、と笑って唇をなぞる。

ついでに頬を包み綺麗な顔を近づけてきた。

どうやらキスするつもりらしい。








いやいや、悠長に考えてる場合じゃないだろ。








晋「・・・なんだこの手は。」







ハッとした。

そして慌てて口を押さえた。
もちろん両手で。






晋「退けろ。キスしたい。」
「-----ッ!」






軽く睨まれる。

だが怯むわけにはいかない。
口を押さえたまま必死に首を横に振った。






(キスは---絶対ダメだ!)






今まで何度も何度もダメだと思ってきた。

だが今度こそマジで本気で真剣にダメだ!!





今この状態でキスされたら---
もう一度でも深く重ねられたら---









次はきっと










耐えられない。










「-----!」








フッと表情が緩んだと思ったら手にキスしてきた。

優しく啄ばむように
時々可愛い音を立てて

飽きずに何度も唇を押し付けてくる。





晋「早く退けろ。」
「-----。」
晋「まだ抵抗するのか?」
「-----。」
晋「ふーん・・・」
「-----。」






正にイタズラ小僧のように目を細める。






そして不敵に口角を上げ、ゆっくりと指に舌を絡ませてきた。








「---っッ!?」







小指、薬指、中指、人差し指

指先から関節、付け根まで
焦らすようにじっくり舐め上げてくる。







(な、なんだ---!?)







なぜか背中に震えが走る。

慣れない感覚だからか?
体が敏感になってるからか?


なんでこんなに---









晋「感じるのか?」
「---ぁッ!」








強引に手首を掴む晋。

そして自分に引き寄せ、見せ付けるように指に舌を絡ませてくる。






「やッ、やめろ---ッ!」






少しずつ濡れていく自分の指。

それがヤケに卑猥に見えて顔に熱が集まっていく。







---恥かしい







出来れば今すぐ逃げ出してしまいたい。
もっと出来れば気絶してしまいたい。





でも









(や・・やば・・・い-----)








私は、バカだ。








ほんのり濡れた艶やかな唇
イヤらしく指に絡みつく紅い舌








強烈な色気を放つソレらに目を奪われて










手を振り払うことすら出来ない。












晋「透・・・」












薬指へのキスを最後にシーツに押し付けられる左手。

未だ口を護っていた右手も難なくシーツ行き。





そして再び









唇が近づいて来る。









(ちょっと---待って・・・)








キスはダメだって言ってるだろ。






キスされたら確実に流される

そしてそのまま呑まれてしまう







(そんなの、イヤだ---)







流されるなんてイヤだ
呑まれるなんてイヤだ


絶対イヤだ


イヤだ--















「し、ん----」

















イヤ、なのに---














近づいて来る唇を

どうやって拒否すればいいのか














分からない。