初体験

初体験—18 GAME





晋「目ェ逸らすな。」
「ちょっ---」
晋「透。」
「---っ!」






あまりの迫力に視線を切った。

だが無駄な足掻きだった。

顎を取られ無理矢理視線を奪われた。







晋「-----。」
「----ッ・・!」







正に獣の目だ。

睨んでるのか威嚇してるのか。
至近距離でギラつくソレに背中が震える。




抵抗?




もちろん抵抗できないわけじゃない。

あられもない格好だが片手と両足は自由。
突き飛ばすくらいは出来るかもしれない。







だがダメだ。







反抗したらいけない気がする。







ていうかなんで?







なんで怒ってんのこいつ!







晋「透。」
「------っ」
晋「撤回しろ。」
「えっ」
晋「なにが"終わり"だ。撤回しろ。」







・・・え?







「え、あの--」
晋「早くしろよ。」
「なな・・・なんで撤回しなくちゃいけないんだよ。」
晋「なんで、だと?」







(な、なんだよその顔・・・)







なんで分からないんだ、とでも言いたそうな呆れた顔を向けられた。

しかし大変申し訳ないが本気で意味が分からない。




だって---"終わり"を撤回しろ?




それはつまり

---お前との関係は終わらない

そう言い直せってことか?



え・・・なんで?















晋「お前は、俺のモノだからだ。」





















ん?











晋「俺のモノが勝手にいなくなるな。終わりなんて---絶対許さねぇ。」






「・・・。」










気のせいだろうか。

世にも奇妙な言葉が聞こえる。







「俺のモノって・・・何言っちゃってんのお前。」
晋「あ?」
「しかも許さねぇってなんだよ。まさかエロエロ関係を続行したいのか?AHAHAHA~。冗談ならもっと面白く--」
晋「冗談じゃない。続行だ。」






な---なんだと!?






「バ、バカヤローふざけんな!これ以上エロゲームには付き合えないって言っただろ!」
晋「ゲーム?」
「そんなにエッチがしたいならエロい女を探せ!そしてそいつとゲームを楽しんでくれ!」
晋「バカかお前は。ゲームなんか関係ねぇ。」






か、関係ねぇって---

え、関係ない!?






「なにワケの分からんことを!ゲームが関係ないなら私らの関係も終わりでいいだろ!」
晋「よくない。」
「よっ、よくないの!?なんで!」
晋「なんでって・・・分からないのか?」
「え!?え、えぇーと・・・!」






や、やばい。
さっぱり分からない。






晋「・・・はぁ。」
「す、すみません。説明をお願いします。」
晋「あのなぁ・・・」
「・・・。」














晋「お前が気になるからに決まってんだろ。」














-------






----------?








晋「言動も行動も。なぜかお前が気になって仕方がねぇ。」
「・・・。」
晋「だから俺のモノにすることにした。」
「・・・。」
晋「そして俺のモノは俺の傍にいる。当然そうあるべきだろ?」




「・・・。」




晋「なのにお前ときたら・・・一体何様のつもりだ。」
「・・・。」
晋「連絡するな?声もかけるな?」
「・・・。」
晋「お前こそつまらん冗談抜かすな。ボケるならもっと上手くボケろ。」




「・・・。」




晋「それに体にも満足してない。大体あのくらいで満足できるわけ--」

「ちょちょ、ちょっと待てーーー!!」

晋「?」






ちょっと待てマジで待て。







「・・・え?」
晋「あ?」







目の前の俺様・・・

普通だ、至って普通の表情だ。
決してギャグを披露している顔ではない。





じゃあなんだ?





さっきのアレはまさか・・・

こいつまさか---!














「もしかしてお前---私に惚れちゃった?」














まさか・・・
まさかまさかの、祝ゲームオーバー?








晋「・・・調子に乗るなよ。」
「・・・。」
晋「お前なんか全然好みじゃない。」
「・・・ですよねぇ。」






うわ。

おいおいそんなゴミを見るような目で見るな。
ちょっと聞いてみただけじゃないか。







いやいやそうじゃなくて!







それじゃさっきのはなんだ。

一体どういう意味・・・







晋「とにかく、お前は俺のモノだ。勝手に離れるのは許さねぇ。」
「え、え、あの、ちょっと待--」
晋「それにアレも約束しただろ。」
「ア、アレ?」
晋「忘れたのか?」
「え、えーと・・・」







アレって・・・

なんだったっけ。













晋「護ってやるって言っただろ。」













「・・・。」










まるでそよ風のような

穏やかなビューティフルスマイルを向けられた。










いやいやちょっとタイム。










(お、おいおーい・・・)








な、なにそのほんわか優しい笑顔。


ていうか護ってやるって・・・

確かに言われたのは覚えてるぞ。
でもなんでお前が私を護ってくれるんだ?







(え?ちょ、ちょっと・・・!)







なんで頭を撫でるんだ。
なんでソフトタッチなんだ。

なな、なんで髪にキスするんだ!?







「おおお前っ---やっぱ私に惚れてんだろー!!」
晋「は?」
「とぼけんな!言うことやること熱っぽいんだよ!」
晋「何言ってんだお前。ワケ分かんねぇ。」
「そ、それはこっちのセリフだバカヤロー!」
晋「?」







(どど、どうしちゃったんだよこいつ!)







お前は俺のモノ?
気になって仕方ねぇ?

挙句の果てには護ってやる?


おまけに大切なものに触れるかようなVIP扱い。

まるで「好きだぜ」と言われてるような気がしてならない。





まさかお前、マジで私のこと---





いやいやもちろん勘違いだって分かってるぞ。

だがこの思わせぶり&不審な行動はなんなんだ?
そもそも自分が今どんだけ優しい顔してるか分かってんのか!?







晋「・・・透。」
「なな、なんだ!」
晋「お前・・・顔が紅い。」
「---え!!」
晋「なんでそんな顔してんだよ。」
「-----っ私に聞くな!自分で考えろ!」
晋「・・・。」







どうやら私は赤面しているらしい。




とりあえず顔を逸らしてみた。




人と話すときは目を見て話せ?

無茶言うなコノヤロー。
恥ずかしすぎて目なんか見れるか!






(おいコラ落ち着け透----!)






ジョークだ。

きっとこれは晋なりの俺様ジョークなんだ。
そうだ、絶対そうだ!




とにかく動揺してる場合じゃない。

深呼吸しろ。
ヤツのペースに呑まれるな!







「すーはー!すーはー!!」
晋「・・・。」







(えええーと-----!)







と、とにかく話だ、話を戻そう。


何だったっけ。

なにを話してたんだったっけ・・・





---ゲームを終わらせる





ああそれだ!

ゲームなんてもうウンザリだって話だ!







「あああのあの!ちょっといいですか!」
晋「---!」







恥辱心をねじ伏せてヤツを睨み上げた。

まだ顔が赤い?
そんなの構うものか!








「えーと!さっきの話の続きなんですけどね!」
晋「・・・。」
「やはり!ゲームともお前ともおさらばしようかと思います!」
晋「・・・。」
「でで、でも!ま、護ってやるって気持ちはその・・・ありがとー!」
晋「・・・。」
「でも私は大丈夫なんで!だからもう連絡は---!」
晋「なぁ・・・」
「あ、あの!とりあえず話を聞いて--」






晋「その顔・・・ヤバイ。」



「え!?」








顔がヤバイ?

え?

それって・・・ブサイクってことか!?





















晋「・・・可愛すぎる。」



「・・・。」


















それはそれは色っぽく目を細めて









爆弾発言を投下しやがった。









(私が---かか、可愛い、だと・・・?)








ほ、本当にどうしちゃったんだよ晋。

何か辛いことでもあったのか?


それともまさか・・・

マジで私が可愛く見えてるのか!?








晋「お前・・・なんでそんなに可愛いんだ?」
「・・・。」









どうやらこいつの目には

リアルに可愛い私が映ってるらしい。









(・・・重症だ。)









ダメだと思った。
ムリだと思った。


出来れば今回でゲームともこいつとも縁を切りたいと思っていたが

今日のところは諦めようと思う。









だってどう考えても

今のこいつはまともじゃない。









前々から不思議なヤツだとは思っていたが










今は特に

何を言っても無駄なような気がする。









「あ、あの、どうもありがとう。」
晋「・・・。」
「ところで・・・話は今度でいいからさ。そろそろ帰るよ。」
晋「なぁ・・・」
「聞いてんのか?ちょっと退いてくれよ。いい加減服を着させ---」





晋「抱きたい。」

「・・・。」







今度はなんだ---












晋「そそられた。抱かせろ。」



「・・・・・・・・・。」












予想以上のミラクル発言に

立ってもないのに立ちくらみを覚えた。












---高原晋












雄雄しいオーラと造形物のような綺麗な容姿

スラリと美しい体は身長182cm(香織情報)

しかも肩書きは堂々の医者






多くの女子がきゃー!と騒ぐだろう。

ほとんどの女子が理想の男!と叫ぶだろう。







だが・・・














「いっ---いい加減にしろーーー!!」















性格面に---激しく難有り。















「まま、待て!触るな!ちょ---手ェ放せ!!!」
晋「おいコラいい加減にしろよ。」
「は!?」
晋「それ以上可愛い顔すんな。抑えられなくなる。」
「-------!?」









ここまで話の噛み合わない・・・

不思議な人間に出会ったのは初めてだ。









頼む。

マジで---頼むよ誰か。











「やや---やめろぉぉぉーーー!!!」












誰でもいい。












こいつの取扱方法を教えてくれェ!!



























-----------------GAME・初体験(完)