初体験

初体験—17 GAME




「・・・。」
晋「・・・。」
「・・・。」
晋「・・・。」






腹への天誅から2分後。




我々は今、ベッドの上で対面し

沈黙という気まずさをむさぼっている。






晋「・・・。」






胡坐をかく晋。

さっきの天使なお前はどこへ行ったのか。

眉間にシワを寄せ口元を引き締め
全く可愛くない表情で私を見ている。






「・・・。」






対する私はというと相変わらず素っ裸状態。

もちろん頭から布団で身を包んでいる。

真っ黒な布団に包まるこの姿、例えるなら明日の天気は嵐オンリー的なテルテル坊主・・・







いやいやそんなことはどうだっていい。







「・・・。」
晋「・・・。」







相変わらずの沈黙地獄。

何か話さなければ、と思うがどう切り出したらいいか分からない。

---お先にどうぞ

恐らく考えてることは晋も同じだと思う。







(・・・参ったな。)







本当は文句のひとつでも見舞ってやるつもりだった。

でもね・・・

思い返してみれば私も流されそうになったわけだし、一方的に文句を投げるのは違うような気がする。



だがこの状況は?
この気まずい空気はどうやって乗り切ればいい?






晋「なぁ。」
「は、はいっ!」






突然話しかけられてビビる。

軽く声が裏返った。






晋「・・・体は?」
「・・・へ?」
晋「体、平気か?」
「え・・・」






か、体?






「体はまぁ・・・ボロボロだ。」
晋「・・・。」
「腰が痛くて堪らん。」
晋「・・・。」






腰、っていうか体中だけど。






晋「・・・悪かった。」
「-------は?」
晋「だから、悪かった。」
「・・・。」






すっごくバツの悪そうな顔を見せる晋。

思わず「気にすんなよ!」なんてフォローしそうになってしまう。

ていうか・・・







そんな顔するくらいなら初めからヤるな。







(でもまぁ・・・)







「謝るなよ。昨日は私にも非があったし・・・お互い痛み分けってことで水に流さないか?」
晋「・・・非?」
「え?あー、いや・・・それはこっちの話。」
晋「?」







流されそうになりましたなんて言えない。
口が滑っても言えない。






「・・・。」
晋「・・・。」
「・・・。」
晋「・・・。」






は、話が続かん。






「え、えーと、そういうことで・・・そろそろ帰るよ。」
晋「帰る?」
「ああ。体だるいし帰って寝たい。」
晋「・・・。」
「いいよな?」
晋「・・・。」







再び沈黙コースに突入しそうだったので切り出した。


気まずい空気なんてもうこりごりだ。

それにマジで帰りたい。
心身共に限界です。






「よいしょっと。」






そうと決まればさっさと退散しよう。

布団がずり落ちないよう押さえつけ、ゆっくりじわじわと後退する。







(あ。)







「あーそうだ、忘れるところだった。」
晋「・・・。」
「お前に言っておくことがある。」
晋「言っておくこと?」







後退を一時中断。

これだけは言っておかないとな。





不思議そうな表情の晋をまっすぐ見る。









「これ以上ゲームには付き合えないからな。だからもう、連絡してくるなよ?」









ビシッと指をさし、眼力五割り増しで凄んでやった。







晋「連絡、するな?」
「ああ。」
晋「なんで。」
「なんでって・・・」
晋「・・・?」






首を傾げる晋。

今説明したばっかりだろ。
聞いてなかったのかよ。







「だから、お前らにはもう付き合えない。ゲームはお前の勝ちでいいから。もう私に構うな。」







---ゲーム

それはすなわちターゲットの心を奪う遊び
オプションとしてエッチも有り





内容は分かってた。

エッチ有りなんてふざけんな!とも思ったがルールもちゃんと知ってた。




もちろん逃げるつもりだった。

万一、捕まった場合は鉄壁で身を守りきるつもりだった。

我ながら逃げ足にも腕っ節にも自信があったし、私なら大丈夫!なんて思ってた。








だがダメだった。








しかも2回もダメだった。








初めのころの自信?

そんなもの、この変人共を前に跡形もなく砕け散った。

自分の身は自分で守れ?
誰だそんな言葉を作ったのは。








こんな展開、予測もしてなかった。








そしてこんな展開になってしまったからこそ強く思う。








これ以上ゲームなんかに振り回されるのはゴメンだ。








「正直言ってさ。マジでエッチに発展するなんて思ってもなかったよ。」
晋「・・・。」
「でもまあ・・・不本意とは言え一回ヤっちまったことだし。お前もこれで満足しただろ?」
晋「-----------」
「だからもう連絡よこすな。見かけても声かけるな。もちろん私も接触しない。」
晋「・・・。」
「お前との縁もこれで終わりだ。」
晋「・・・。」
「分かったか?」
晋「・・・。」






返事なし。

まぁ、返事がない=OKってのは世の中の常識。

それに実際に満足したんだろ。
一人の女と何回も、ってタイプじゃないもんなこいつ。






とにかく、お前とはこれでさよならだ。






思い返せば短期間で色々あったよなぁ。

短い付き合いだったけど、これからも適当に元気でやれ--















「-------っっ!!?」















突然、視界が一変した。







「----!?-------!?」







腕を引かれたのは分かった。

次の瞬間背中への軽い衝撃
ベッドに押し付けられる両手

そして視界には真っ白な天井と---









静かに怒る、俺様。









「な、なにす--!」
晋「・・・ふざけんな。」
「なにっ!?」
晋「ふざけんな。」
「だからなにが-----っっ!!」








切れ長の男らしい瞳。



相変わらず美しすぎるソレが

ギラッと光ったような気がした。







「な、な、なんで睨むんだよっ!」
晋「黙れ。」
「-----!」








(ウ、ウソだろ---)








視線ってこんなに鋭くなるもんだったっけ








空気ってこんなにビリビリ震えるもんだったっけ














晋「好き勝手言いやがって・・・」














まっすぐな視線とオーラが突き刺さる。











なんかこいつ











すっげぇ怒ってる---