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『あのさ透ちゃん。
俺・・・透ちゃんと付き合っていく自信が無い。』
え?
『ごめん。』
なんで?好きな女でも出来たのか?
『違うよ。』
じゃあなんで---
『透ちゃん、俺のこと好き?』
す、好きだぞ。
『本当に?』
ああ。
『それじゃ今からエッチしよう?』
えっ・・・
『・・・やっぱりダメなの?』
そ、それは・・・
『・・・』
・・・ごめん。
『理由は?』
え
『エッチできない理由。』
・・・
『それもやっぱり言えないの?』
・・・ごめん
『はぁ・・・』
・・・
『あのさ、透ちゃん。どんな理由があるのか知らないけど・・・』
・・・
『彼女に拒否されるのは辛いよ』
・・・
『ごめんだけど・・・透ちゃんとは一緒にいられない。』
「・・・・・・・・チッ」
思わず、舌打ち。
「あー・・・くそ。」
ため息と一緒に布団に抱きつく。
どうやら体が強張ってたらしい。
温かいそれに体の緊張がとける。
「・・・朝、か?」
なんとなく空気が冷たいけど今何時?
ていうかすっげぇ眠い。
熟睡できなかった。
「----はぁ。」
久しぶりに、嫌な夢を見た。
2年前に別れた元彼の夢。
いいヤツだった。
3ヶ月くらいの付き合いだったけど、明るくて優しい男だった。
でも、コロッとフられた。
理由はアレだ。
エッチが出来なかったから。
そして出来ない理由を話せなかったから。
「----チッ」
再び舌打ち。
正直言っていい気分ではない。
出来れば思い出したくない過去だからな。
もっと出来れば記憶から消してしまいたい。
「チッ・・・・・チッチッチッチッくそっ!」
なんだかなぁ・・・
どんどん気分悪くなってきた。
大体、恋人同士ってのはエッチしないといけない決まりでもあるのか?
世の中にはエッチが苦手な人間だっているんだ。
だったらエッチしないカップルがいてもいいんじゃないか?
一緒にいるとホッとして
ずっとこいつの傍にいたいなぁとか
こいつのこと大切だなぁとか
そういう「想い」があれば十分なんじゃないのか?
「---------。」
(ま、今時そんなカップルいないよな。)
彼女なのにエッチを拒否。
しかも理由はシークレット。
誰だってそんな彼女はお断りだよ。
そりゃフられるわ。
「あーもう終わり!やめだやめだ!」
無理矢理思考を追い出した。
朝っぱらからネガティブシンキングはやめよう。
彼氏いなくても生きていけるし
エッチ出来なくても生きていける!
とにかく今は---
「二度寝しよ・・・眠い。」
マイラブリー布団にぐりぐり顔を埋めた。
「私の味方はお前だけだー。ずっと傍にいろよ・・・ふぁ・・・」
休日の二度寝って極上の贅沢だよね。
あーあったかい。
あーシアワセ---
---ぎゅっ
「・・・、・・・?」
・・・・え
----え?
(な、なんだ今の。)
抱きしめていた布団が
私を抱きしめ返してきた。
(・・・・・・?)
有り得ない現象に少々焦る。
とりあえず五感を総動員。
全神経を集中させる。
(う、うーん・・・?)
布団を撫で撫でやってみる。
あったかくてスベスベだけど・・・
なんだこれ、布団じゃなくね?
それに頭と腰に絡まるコレはなんだ。
これじゃまるで何かに包まれているような---
(なな・・・なんだ?何が起こってるんだ?)
怖い、確認するのが怖い。
だが、恐る恐る目を開けてみ---
「---っ!?」
ビックリした。
すっげぇビックリした。
なぜなら目の前に
綺麗な、鎖骨。
「え----えっ?」
背筋が凍りそうだ。
だって、なんで鎖骨?
まるで狐に抓まれた気分。
出来れば放心したい。
だが---
「-----っ」
頭に置かれた手をそーっと掴むと・・・
おお、拘束が解けた。
腰の手は---ダメだ、離れない。
(ま、まぁいい・・・)
とりあえず上半身だけでもいい。
背中を反らし、じわじわと距離をとる。
そして胸板の持ち主をチラ見---
「えっ・・・!」
(なな、なんだこりゃ!)
見上げた先には
天使がいた。
(天使!?いや、し、し、晋!?)
ビビる、普通にビビる。
なぜなら常に何かを狙ってるような鋭い目は閉じられ
いつもキリッと引き締まってる唇は半開き
なんて無防備。
なんて天使。
殴りたくなるくらい可愛らし--
いやいや天使なんてどうでもいい!
「-----!? ぎゃぁぁぁ!!」
叫んだ。
こっそり抜け出すつもりだったが叫んだ。
だってもうビックリマックス。
服が・・・服がありません!!
(ひぃぃぃぃ!)
バサバサッ!!
すかさず本物の布団を引き寄せしがみつく。
どうやらアイアム真っ裸。
ちなみに下は履いてるようだが晋も上半身は裸族!
「なななんで晋!?なんで晋が私の家にいるんだ!?なんで------あれっ!!」
良く見たらここって私の部屋じゃない!
シーツも枕もふわふわだし、真っ黒だし!
「おおおちおち落ち着け!」
とにかく落ち着け。
そして思い出せ。
なんで晋と一緒に寝--
(は-------っ!)
雷に打たれたとは正にこのことだ。
そして思い出した。
ドバッと思い出した。
なんで晋が目の前にいるのかも
なんですっぽんぽんなのかも
全部ごっそり思い出してしまった。
「え、えぇ---」
ショックのあまり、体が硬直。
思い出さなければ良かった。
今からでも「夢」だったと思い込みたい。
だがダメだ。
目の前の天使と
そして自分の体が叫んでる。
昨日のアレは「現実」だと---
(ウソだろ・・・)
目の前が真っ暗になった。
巻き戻したい。
頼むから時間よ巻き戻ってくれ。
「おおおいコラ放せ!離れろ!」
とりあえず現実逃避は後だ。
ひとまずこいつから離れたい。
そして服を着たい。
「力緩めろー!」
腰に絡まる腕を引っ張った。
が、離れない。
もしや起きてる?
いやでも天使だし・・・
「可愛い顔向けるなバカ!くそ・・・放せよコラ!」
寝てるくせになんでこんなに力んでるんだ。
やっぱり起きてんのか天使ヤロー!
「いててて---こ、腰が・・・」
体をひねると腰に鈍痛。
思えば体中が気だるい。
まるで部活直後のコンディション・・・
(最悪だ---)
もう、マジで最悪だ。
だって・・・またヤっちゃった。
こんな短期間に2人もの男と
しかも彼氏でもない男なのに・・・
「くそっ・・・」
なんでだろう。
罪悪感に襲われる。
別に悪いことをしてるわけじゃない
誰かに迷惑かけてるわけじゃない
なのにとっても悪いことをしてしまったような
そんな感覚に陥る。
---罪悪感
それは多分、昨日の自分のせいだ。
強引に迫られたとはいえ
逃げられなかったとはいえ
快感に溺れて、流されそうになった。
好きでもない相手との行為なのに・・・
(ふざけんなよ---!)
心の中で悪態を吐く。
ひとつは快感に敏感な自分の体に対して
そしてもうひとつはもちろん
「ゲーム」という異常な状況に対して。
「なにがゲームだ!!」
だんだんイライラしてきた。
今まで溜め込んでた怒りがドカンと込み上げてきた。
だって、だって
なんで私がこんな目に---!
「いい加減放せバカ!アホ!俺様!」
未だ離れてくれない腕。
寝顔に向かって文句垂れる。
だが反応なし。
相変わらず天使な俺様。
「よーし分かった!そういうつもりなら覚悟しろよ!」
こうなったら裏技だ。
その無防備なおでこに一発---
「食らえ-------あ!」
あ!
「起きたか!」
晋「・・・。」
迷惑そうに開かれた真っ黒な瞳。
どうやらやっと目覚めたようだな!
「てこずらせやがって!コラ!さっさと手ェ退けろ!」
晋「・・・。」
「聞いてんのか!放せ!ほら!」
晋「・・・・・・寒い。」
「え!?おいコラー!!目ェ覚ませぇー!」
しばらくこっちを見つめていた晋。
ギュッと眉間にシワを寄せた瞬間---
「なんで抱きついてんだー!離れろって言ってんだろ!!」
晋「眠い・・・」
「寝てもいいから離れてくれぇーー!」
晋「・・・朝からうるせェな。」
「なんだと!え、ちょ・・・ぎゃぁぁ!!?」
朝に弱いのか。
どうやら寝ぼけているらしい俺様。
いやいやそんなことはどうでもいい!
「きき、貴様ァッ!」
音にするなら「むぎゅっ☆」
その音の通り。
なんとこの俺様・・・
私のぷりぷり生尻を鷲掴みやがった!
「食らえ天誅ッ!!」
晋「-----ってぇ・・」
懇親の一撃。
無防備な脇腹に怒りの鉄拳を食い込ませた。
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