初体験

初体験—15 GAME





「はぁ・・・」






なぜ透は怯えるのか。
シノブってのは何者なのか。





なんで「護ってやりたい」なんて思うのか。
この不可思議な感情は何事なのか。








透のことも自分のことも

分からないことが多すぎる。








だがとにかく

今分かってることは一つ。










やっぱり、やめられない。










「なぁ透。」
透「・・・ん」

「ココ。」
透「え?」

「俺が入ってるのが分かるか?」
透「----。」







頬から手を滑らせ下腹部をなぞる。

一瞬目を泳がせたが、透は俺を見たまま小さく頷いた。







「お前を抱いてるのは俺だろ。」
透「ぅ、んっ・・」

「お前に触ってるのも俺だろ。」
透「---ん。」







濡れた目元をなぞる。

そして隠すように唇に添えられた手を取り、
細い指にキスを落とした。







「分かってるなら他の男のことなんか考えるな。」
透「え?」





「俺のことだけ考えてろ。」

透「・・・。」






何があったか知らないがシノブが怖いのは十分分かった。

だが今は俺のことだけ考えてればいい。


それに---








「透。」
透「な、なに・・・」

「そんなに怖がるな。」
透「え?」











「---護ってやるから。」












どうやって、と聞かれたら困る。

だが










護ってやりたいと思う。











透「へっ・・・」










素直に頷くとは思ってなかったが代わりに返ってきたのは間抜けた声。

おまけに零れ落ちそうなくらい目が丸い。








「とにかく---」
透「え、え、あの、晋・・・?」






「やめるのは無理だ。」

透「ぇ?・・・・ぁッ!」








異常に瞬きを繰り返す瞳。







それを見つめたまま







ゆっくり、律動を再開させた。








透「ぁッ---コラっ--!」
「逃げるな。」







やはり逃れようと捩れる腰。

出来るだけ柔らかく引き寄せた。







今度こそ失態は許されない。







出来るだけ優しく。

優しく

優しく








透「やめろ・・・動くなッ---!」
「目ェ閉じるな。俺を見てろ。」
透「---し、んっ!」
「優しくするから。」
透「ぁっ---」







今にも閉じてしまいそうな瞳。


だが、またシノブを思い出されたら堪らない。

頭の後に手を回し、至近距離で視線を奪った。







透「待っ---ぁ、あっ・・!」







この程度の刺激は大丈夫なのか。

さっきのような強い抵抗は無い。







透「---あっぁ・・んっ--」







少しずつ官能の色を取り戻していく表情。
律動に合わせて漏れる艶やかな声。

そしてすがるように肩に触れてくる手・・・







(・・・。)







無意識なんだろうと思う。


だが透らしくない弱々しい仕草がなんというか・・・

妙に女を感じてしまうというか・・・

そんな様子がなんとも








可愛い。








透「---ぁッ・・・晋っ---!」
「・・・。」








やっぱり可愛い。








「透。」
透「ん--ッ・・・んっ・・!」








目を合わせたまま何度も名前を呼ぶ。

髪を撫で頬に触れ

安心させるために時々深いキスを落とす。








そして背中に手を回し








華奢な体を、抱きしめた。










(柔らけぇ・・・)










女特有の柔らかさ。
初めて味わうわけじゃない。


なのになんでだ。


こんなに気持ち良かったか?なんて

そんな新しい感覚に陥ってしまう。









「透・・・」









(優しく・・・)








とにかく、優しく

出来るだけ、優しく・・・









透「---っ・・あッ!」
「・・・。」
透「ゃぁッ--ぁっ・・・やめッ---!」
「・・・・・・・・。」








ずっと優しくしてやりたい。








だが








最後は---勘弁してくれ。









透「いやッ---晋っ---やめ、ろ!」

「-------。」









(無茶、言うな・・・)









俺だってそろそろ限界だ。








透「ぁあっ--ぁッ---ゃ、ゃあっ!」








奥を突かれるのが怖いのか

繋がりが深くなるに連れて拒否も抵抗も激しくなる。







だがもう止められない。







抱きしめたまま片膝に手を入れ足を開かせる。

そして敏感に反応する部分を突き上げた。

拒絶するように締まるソコを、何度も何度も・・・








透「ゃッ---ぃやっ・・やぁッ・・・!」
「透、怖がるな---」


透「嫌ッ---イきたく、ないッ--!」
「----?」









イきたくない?









透「ゃめ、あっ--ぁッ----------っッ!!!」

「----っ!」








体を仰け反らせ、背中を震わせて

そして吐き出せと促すようにナカを激しく痙攣させる。








(-------っッ・・!)








震える体を強く抱きしめる。








そして引きずられるように欲を吐き出した。








(あー、くそ・・・)







散々我慢したからか。

開放感が半端じゃない。








透「---ぁ・・・・・ッ・・ぅ・・・」
「------。」







体を起こすとポトッと手がシーツに落ちた。

透は・・・

ぐったりと目を閉じている。







「・・・おい。」
透「----ッ--。」
「透。」
透「・・・・・。」







頬を抓ると反応が無い。

どうやら意識を飛ばしたらしい。









「・・・・・。」











---ヨかった。











率直な感想だ。

肉体的に、今までで最高に気持ち良かった。









だが---後味が悪い。









「透・・・」










涙の跡が痛々しい。

なんとなく罪悪感に苛まれるというか・・・

せめてもの罪滅ぼしだ。
目じりに溜まった涙を拭いてやった。








「はぁ・・・」








複雑な気分だ。








原因はまぁ・・・分かってる。



一つは自分を求めない女を抱いたこと。

当たり前だが初めての経験だ。






そして二つ目の原因は








---護ってやりたい









自分のこの、不可思議な感情。

そして・・・







「・・・。」







透の頬を抓ってみる。

まぶたに触れて髪に指を絡ませてみる。







普通だ。

全く普通の女だ。







だが・・・









「・・・可愛い。」








そう、可愛い。

なぜか俺の感情は透を可愛いと認識してしまう。








(これは・・・参った。)








まさかこんな展開になるとは思っても無かった。








なんのことって・・・









まぁ、ゲームのことだな。








「一度ヤッた女とは二度は寝ない」

そんなふざけたことを言うつもりはない。

だが今までは一度ヤったら満足してた。

もう一度抱きたいと思う女がいなかったとも言うが・・・







とにかく、自分に惚れようがそうじゃなかろうが

一度寝たらそのゲームから手を引く。







それが俺のゲームの流れだった。







だがこいつは・・・









「・・・・・・。」









もう一度抱きたいかどうかといえば抱きたい。

欲を言えば俺を求める透を抱きたい。








(・・・ふーん。)








初めて抱く欲求だな。

なんとなく妙な気分だ。








だが








悪い気分ではない。








透「ん・・・」

「---!」






さっきの残りか
それとも嫌な夢でも見てるのか

再び涙が頬を流れた。







「透?」

「・・・。」







拭ってやると次の涙は流れてこない。

どうやら夢を見てるわけじゃないようだ。







(涙・・・)







いい意味でも悪い意味でもこいつの涙は心臓に悪い。


いい意味でのそれは、まぁ置いておく。

悪い意味でのそれは---








「・・・シノブ。」








この前も今日も

透は恐らくシノブに怯えて泣いてた。






(彼氏・・・じゃねぇよな。)








シノブ=彼氏

それはないか。
彼氏に対してあんなに怯えるはずがない。


そういやさっきは「昔の友達」なんて言ってたが・・・

どう考えてもウソっぽい。



それじゃなんだ、元彼か?

それともまさかストーカー・・・










「・・・まぁいい。」










シノブが何者だろうがどうだっていい。

とにかく、ゲームから手を引くのは無しだ。







可愛いとか護ってやりたいとか、妙な感情はよく分からないが

もう一度透を抱きたい
俺を求める透を抱きたい

その感情は素直に受け入れられる。

つまり俺は








心も体も

透のすべてが、欲しい。









そういうことだ。









「透・・・」








彼氏だろうが元彼だろうがシノブだろうが

もちろんゲームだろうがそんなものは関係ない。









この可愛い生き物は










俺のモノだ。










「・・・・・・。」









動かない透の頬をなぞる。








そして薄く開く無防備な唇に








自分のを重ねた。