初体験

初体験—07 GAME




「えぇぇーとっ!そ、そうだ話!お前の話は終わったのか!?」






咄嗟に話題を変えた。

そうしないとやばいような気がした。







(バ、バカか私は---!)







何が好きな女だ。

勝手に盛り上がって勝手にトキメクとは・・・

恥を知れ恥を!







「ほらほら話は!終わったのか!?」
晋「・・・なんで。」
「なんでって・・・私も話があるからだよ!」
晋「・・・。」
「と、とにかく離れろ!これじゃ話どころじゃない!」






思い切り暴れるとしぶしぶ体が離れた。

舌打が聞こえたがそこは無視。






「ななっなんだこの手は!」
晋「・・・・・。」
「放せ!早く!」
晋「チッ・・・」






やっと体が離れたと思ったら今度は手首を掴まれている。

このくっ付き虫め。
ていうか舌打ちすんな!






「そ、それじゃ仕切りなおすか!ほら、突っ立ってないで座れよ!私も座りたいんで!」
晋「・・・まだ。」
「なんだ!?」
晋「話。」
「は?」
晋「まだ終わってねぇ。」
「え、そうなの?オッケーオッケー。ちゃんと聞いてやるからな!」
晋「ん。」
「その前にいつまで手ェ握ってんだ!いい加減に放しなさい!」
晋「・・・。」






全く、寂しがり屋さんかお前は。


それにしてもまだ話があるらしい。

どうでもいいが次こそは穏やかな内容にしてもらいたいもんだ。






「透。」
「なんだ。」
晋「来い。」
「うわっ!?」






こいつの行動はいつも唐突だ。



突然歩き出す晋。

自然、手を引かれてバランスが崩れる。
首がカクンッと後に落ちそうになった。






「ちょ---引っ張るな!」
晋「・・・。」
「どこ行くんだよ!」
晋「・・・。」






問いかけに応えることなく歩き続ける晋。

そしてなぜか駆け足の私。
理由は聞かないでもらいたい。







ヤツが向かった先は一番奥の部屋だった。







---バンッ!





俺様はドアを乱暴に開け放ち、電気もつけずに進んでいく。


観葉植物
小テーブル
ブラックカラーのでかいベッド

シンプルなそれらが目に飛び込んでくる。



なるほどここは寝室か。

そういえば前回お邪魔した時はそのベッドで爆睡したんだっけ・・・

この前は見回す余裕なんて無かったがリビング同様、殺風景な部屋だな。






いやいやちょっと待って!






「なななんで寝室!?」
晋「・・・。」
「おおおいっ!」
晋「・・・。」






ちなみに小テーブルの上に綺麗に畳まれた私の服を発見。

晋が畳んでくれたんだろうか。
意外に几帳面な奴だな。





-----って違う!







「待て待て止まれ!ちょっと待--------お、ぁっ!」







飛んだ。






ベッドに向かって体が飛んだ。






「ぶっ!!」






一瞬の浮遊感の後、見事な顔面着地。

地味に痛い。






「ななっ何すんだ---ああぁ!?」






飛び起きた。

いや、飛び起きようとしたら肩を押されてベッドにリターン。

スプリングでピョンと体が跳ねる。






「何すんだコラ!嫌がらせのつもりか---ああぁ!!」






起き上がろうと挑戦するも再び押される。
しかも今度は転がしやがった。

そして押し転がしを二三度繰り返し、気付けばここは・・・







ベッドの中心。







(ちょ、ちょっと---)






顔の横に沈む両手。

見上げると視界には真っ暗な天井。

そして---







頼りない明かりに照らされる

ヤケに色っぽい、俺様。








「て、てめぇっ何しやがる!話があるんじゃなかったのか!」







ヤバイと思った。

大声出さないと呑まれると思った。






なぜなら、晋の表情がさっきと全然違う。








これは------「男」の顔だ。









晋「話ならある。」
「そ、そっか!それならリビングで聞いてやる!」
晋「透。」
「だから---」







晋「キスしたい。」

「-------はっ!?」







キ、キキ--

なんだって?







晋「触りたい。」

「えっ・・・は---?」







ああ、あのあの・・・・・え?













晋「お前を、抱きたい。」













・・・・・・・・え。








「なな、何言っちゃってんのおおお前・・・」








ダメだ。
さすがに動揺を隠し切れない。


だって仕方ないだろ?


元々イケメンにトキめかない体質とはいえ相手は最強の美男子、晋。

しかも現在、色気とフェロモン放出量が通常値を軽く超えてる気がする。

なんとなくクラクラするし。




いやいやそうじゃなくて!

どんな女子だって「お前を抱きたい」なんて真顔で言われたらうろたえるだろ!




いやいやその前に!

話ってそれ!?







晋「ダメか?」







ダメに決まってんだろー!!


ちょ---顔に触るな!
髪をクルクルするな!

色っぽい顔するなー!!






晋「透・・・」
「むむ無理!無理ムリむりMURI!もももしや溜まってんの!?だったら可愛い子紹介してやるから!」
晋「他の女なんていらねぇ。」
「ちょ、調子のいいこと言うな!それにっ---それにエッチすんのが怖いって何度も言ってるだろ!いい加減覚えろ!」






ピクッと反応する晋。

よーしその調子だ。
マジでそろそろ覚えてくれ!








晋「今度こそ、ちゃんと優しくする。」








ち、ちがーう!!






「そ、そういう意味じゃ---っ!」






言い終わる前に頬を優しく撫でられた。

そして静かにヤツの顔が近づいて来る。