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「・・・・・・・・。」
晋「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
晋「・・・・・・・・。」
「あ、あのぉ・・・」
晋「・・・・・・・・。」
し、しーん。
(な、なにコレ・・・)
今日は連れ去られることはない・・・
さっき思ったばっかりなのに。
気付けば俺様の車の中。
しかも激しく気まずい沈黙。
一体これは何の嫌がらせだ。
「・・・ど、どこで話す?」
車で走行することしばらく。
辛い沈黙に耐え切れず話しかけてみた。
晋「俺の家。」
「・・・は?」
晋「だから俺の---」
「いやいや聞こえてるけど・・・」
チラッとこっちを見る晋。
問題でも?と言いたそうだが大問題だぞ。
「なんでお前の家?話すなら他でもいいだろ。」
この前のこともある。
まさかとは思うが警戒は怠らない。
晋「邪魔されないならどこでもいいが・・・」
「じゃぁ---」
晋「取りに来なくていいのか?」
「え、何を?」
晋「お前の服。」
「・・・・・・・・は!」
そ、そういえばそうだ。
服も下着も何もかもコイツの家に置きっ放!!
(またかよ!)
今回は人質に取られてるわけじゃないが・・・
晋といい辰巳さんといい、服を取り上げる癖でもあるのか?
ちなみに我が家には辰巳さんと晋の服が投げ散らかしてあるけどな。
じゃなくて!
「・・・取りに行く。」
晋「ん。」
今日は話がメインだし
邪魔されなけりゃどこでもいいらしいし
もちろん服も下着も返して欲しいので素直に着いて行くことにした。
謝って服を回収してさっさと帰ろうと思う。
「・・・・・・・・・・・。」
晋「・・・・・・・・・。」
それにしても今日は一段と無口だな。
晋ってこんなに静かなヤツだったっけ。
それとも私が気にし過ぎなだけ?
それともまさか・・・怒ってんの!?
晋「お前、何時から飲んでる?」
「え、何時だったっけ。」
晋「酒臭ェ。」
「・・・すんません。」
喋った!と思ったらまさかの苦情。
全く話が続かない。
晋「適当に座ってろ。」
「う、うーっす。」
晋「まだ飲めるか?」
「え、あ、あぁ。」
晋「ちょっと待ってろ。」
「了解。」
家に到着。
ジャケットを脱ぎながら奥の部屋へ入っていく晋。
その後姿を見ながらソファーにどっかり座りこんだ。
(はぁ・・・)
それにしてもまた来ちゃったよ晋ハウス。
ボーっと周りを見回してみる。
シンプルと黒系で統一された空間。
相変わらず生活感が全く無い家だ。
晋「ん。」
「あぁ、サンキュ。」
軽装に着替えたらしい晋。
目の前に立ち、ズイッと酒を寄越す。
相変わらずどんな格好でも画になるねぇ。
なんとなく服が活き活きしてるぞ。
「じゃぁ、遠慮なくいただきますよ。」
とりあえずグラスを受け取った。
緊張で喉も渇いたことだし、一声かけてグラスに口をつけた。
いや
つけようとした。
「え・・・?」
何も言わず目の前に突っ立ってる晋。
そしてその手が
頬に・・・触れた。
「あの・・・・晋?」
意味不明な行動にビックリ。
見上げるとさっきと同じ、真っ直ぐな瞳と目が合った。
(だ、だからなんで・・・)
なんでそんな目で見るんだ?
目も逸らせない。
体も動かせない。
恐らく十数秒、不思議な時間が流れた。
「--------?」
しばらくするとスッと手が離れた。
瞬きと同時に目を逸らす晋。
そしてクルリと背を向けて歩き出し・・・
何も語ることなくテーブル向こうの対面ソファーに着席。
(え、えぇぇ?)
な、なんだったんだ今のは。
なんかおかしい。
いつもおかしいけどマジでおかしい!
「た、体調悪いのか?」
晋「は?」
「なんかお前、変。」
晋「・・・お前にだけは言われたくない。」
「なんだと。」
考えすぎだったか。
せっかく心配してやったのに返って来たのはいつもと変わらないムカつく反応。
失礼な、とでも言いたそうな目でこっちを見ながら酒を煽る晋。
負けずに睨み返しながら私も酒を頂く。
(調子が狂う・・・)
変なヤツだと思っていたがマジで変人だ。
何を考えてるのかさっぱり分からない。
(ま、まぁいい・・・)
「え、えーと、話があるんだよな?」
晋「・・・・・・・。」
「私も話したいことがあるんだけどさ。先にいいか?」
晋「・・・・・・・。」
今日は晋の変人観察に来たんじゃない。
スッキリする為に来たんだ。
ぐだぐだするのも面倒だしさっさと本題に入ろう。
(この前はゴメン!この前はゴメン!)
セリフを心の中で数回反芻した。
そして背筋を伸ばして晋の目を見る。
こういうのは先手必勝。
いざ、参る!!
「あ、あのさ!この前はッごめ---」
晋「待て。」
「-----っ、んん!?」
思い切り出鼻を挫かれた。
小石につまずいてつんのめった気分。
「なんだよ、お前が先?」
晋「・・・・・・・・・・。」
「?」
晋「・・・・・・・・・・。」
だからなんで黙るんだよ。
空気が重たくなるだろうが。
こっちの気も知らずゆっくりグラスを置く晋。
しかも威嚇するような鋭い目。
なんだよその目は。
やはり文句があるのか!
「な、なんだ!」
晋「・・・・・・・・。」
「早く言え!」
晋「・・・・・・・・。」
言葉を遮ったくせに何も言わない晋。
そのくせ視線だけは無駄に攻撃的で・・・
頼むから何か言え!
でも文句ならソフトにお願いします!
晋「この前は、悪かった。」
「へっ・・・?」
思わず、変な声が出た。
(悪かった・・・・?)
悪かったって-----え?
「な、なんで謝るんだ?」
謝罪の意味が分からない。
まさか-----強引に迫ったことに対してか?
いやいやそれは有り得ない。
悪いと思える常識人なら初めからやらないだろ。
じゃあ・・・一体何に対しての謝罪だ?
晋「怖がらせて悪かった。」
(え・・・?)
怖がらせてって・・・
お前が私を?
怖がらせたのか?
「な、何言ってんだ?お前なんか怖くないぞ。」
マジで。
晋「-----ふざけんな。」
「ふ・・・ふ!?」
晋「怖くなかったなんて有り得ねぇ。あんなに怯えてたじゃねぇか。」
「な、何言ってんだ?」
これって------この前のことを言ってんだよな?
確かにヤメロ!とは思ったが晋を「怖い」と感じた記憶は無い。
むしろキスにメロメロになって流されそうになった自分を殴ってやりたいくらいだ。
それに怖かったのはアイツの声が聞こえたような気がしたからだ。
だから晋が怖かったわけじゃなくて---
(・・・・・・ん?)
もしかしてこいつ
「俺のせいで気絶(爆睡)した」なんて思ってる?
「・・・・・。」
晋「・・・・・・。」
勘違い・・・してるっぽいよな。
実際謝られてるわけだし・・・
いや、絶対勘違いしてる。
ちょ、ちょっと待て。
それじゃあ---
「お前の話ってそれ?」
この前は悪かったとか
怖がらせて悪かったとか
まさかこいつ
謝る為に私を連れてきたのか?
晋「あぁ。」
「!」
(う、嘘だろ・・・!)
咄嗟に目を逸らしてしまった。
晋「・・・なんだよ。」
「い、いや・・・」
焦る、普通に動揺する。
だって---
謝られるなんて全く想像して無かった。
取っ付きやすいヤツだとは思ってたぞ。
友達になれそうなタイプだとも思った。
だがこいつはあのくだらないゲームヲタクの一員だ。
心も病んでるし性格も破綻してるし
女に対しても
①性欲処理の道具
②傷つけても平気
そう意識している自己中俺様ヤローだとばかり思ってた。
そんなヤツが謝罪だなんて---ねぇ?
(でも・・・)
「あ、あのさ。怖いなんて思ってないよ、マジで。」
晋「・・・・・・。」
正直、謝られるとは思ってなかった。
でもこいつが真剣だってのは、分かる。
「勘違いさせたみたいで悪かった。でもお前が怖かったわけじゃない。」
晋「・・・・・・。」
確かにあの時怖かった。
でも晋が怖かったんじゃない。
だから謝られるのは間違ってる。
「お前なんか怖くない。だから謝るな。」
真剣には真剣。
しっかりヤツの目を見て伝えた。
(え・・・)
思わず息を呑んだ。
なぜなら晋の顔に
あの時と同じ表情が張り付いたからだ。
何かに傷ついたような、辛そうな表情。
晋「だから、嘘つくんじゃねぇ。」
「嘘じゃない。」
晋「じゃぁ何が怖かったんだよ。なんであんなに怯えてた?」
「お、怯え・・・?」
それ、さっきも言ってたな。
だが何のことだかさっぱり・・・
晋「お前まさか・・・」
「?」
晋「覚えてないのか?」
「え?」
驚いた素振りを見せる晋。
顎に手を当て何かを考えている様子。
その前に、覚えてないってなんだ?
晋「なぁ。」
「なんだ。」
晋「シノブって、誰だ。」
「--------。」
思っても無い名前が出てきて
背筋に寒気が走った。
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