初体験

初体験—03 GAME



「---くぁっ!飲んだぁぁ!!」
葵「く、くそー!また負けたぁぁ!!」
香「透すごーい!!」
直「・・・・・・・。」






時刻は午前0時前。

結構な量をハイスピードで飲んでる。

ヤケ酒根性も手伝って大分いい気分になってきた。






葵「もうダメっす。ちょっと休憩・・・」
「もう終わりかよー!」
香「葵くん頑張って!」
葵「う・・・うぷ・・・」
香「もう、大丈夫~?ほら、コレ飲みな?」






口を押さえる葵に水を恵んでやる香織。

うん、ナイスコンビ。





直「透さん、大丈夫ですか?」
「ん?」
直「結構飲んでるような・・・」
「大丈夫大丈夫!ちょっと飲みたい気分なんだ!」
直「そう・・・ですか。」
「あぁ!」






何気に心配してくれる直樹。

お前って本当にいいヤツだよな。
私も見習おう。






直「透さん。」
「ん?」
直「あの・・・ちょっといいですか?」
「んー?」






ちょいちょいと手招きされる。

なんだなんだ、内緒話か?

少しうきうきしながら耳を寄せる。






「どうした?」
直「明日なんですけど。」
「うん? ---あれ、ちょっと待って。」
直「え?」
「携帯鳴ってる---」
直「電話ですか?」
「ちょっと待ってくれ。確認する。」





ポケットに入れてた携帯が震えてる。

電話か?-----電話だな。

誰だこんな時間に。







「あ。」







ディスプレイを見て少し酔いが冷めた。








なぜならそこには【相川 玲】の文字。








「・・・うーん。」
直「・・・・?」






相川玲。

別名・エロス王子。





初めての電話だな。

こんな時間に一体何の用だ。

その前にこれって出た方がいいのか?






「・・・ちょっと出ていいか?」
直「どうぞ?」
「話の途中でゴメンな?」
直「いえいえ。」






本当は出たくない。

でも出ないと怖い・・・ような気もする。

なんといってもエロスの王子だからな。






「・・・モシモシ。」
玲「あ、透ちゃん?」






電話越しに爽やかな声が聞こえた。

玲さんってこんな声だったっけ・・・
そういえば顔もあんまり思い出せない。






玲「遅くにゴメンネ?今大丈夫?」
「はぁ、大丈夫ですけど。」
玲「透ちゃん、明日休み?」
「・・・・・仕事です。」
玲「そうなんだ、大変だね。」
「仕事熱心なんで。」






とっさに嘘をついた。

コレはどう考えても今日か明日、俺に付き合えって言うつもりだろ?

悪いが君に付き合う暇も元気も無い。






玲「で、今どこにいるの?」
「ど、どこって・・・・・・・・自宅ですけど。」
玲「そうなんだ。随分賑やかなんだね透ちゃんの家。」
「へ?」
玲「まるでどっかのBarみたい。」
「え、えぇぇそうですかぁ?テ、テレビかなぁ!」
玲「ふーん。」






しまった。

音楽とざわめきが筒抜けじゃないか。

外で話せばよかった・・・


それにしてもどっかのBarってなに。
もしかして居場所バレてんの?






玲「で、どこにいるの?」
「葵クンとこのBarです。」






白状した。

なんとなく嘘ついたらいけない気がした。

なんか怖かった。






玲「葵くんのとこってBlue Hawaiiだよね。そこなら30分くらいで着くかな。」
「へ?」
玲「じゃぁ、待っててね?」
「え!?」






ちょっと待て---





言葉が出る前に電話が切れた。






「・・・・・チッ。」
直「?」






携帯を見つめて舌打ち。


そうじゃないかと思ってたけど・・・

王子、君も人の都合を考えないムカつくヤローなんだね。






香「電話?誰だったの?」
「・・・エロス王子。」
香「エロス王子!?王子がエロスなの!?」
「そうだ。」






(はぁ・・・)






来るつもりだよ王子のヤロー。

出来れば今日は・・・

いや出来ることならずっと会いたくないんだが今日は特に会いたくない。


なぜなら最近、休みになると拉致されたり振り回されたりで全く休んだ気がしない。

たまには安息をくれ。






「仕方ない。掛け直すか・・・」
香「え?」
「途中で切れちゃったからさ。」
香「ふ~ん?」






やっぱり今日は勘弁してもらおう。

明日は晋のこともあるし今から会うのは非常に面倒臭い。




そうと決まれば、ポチ。

エロスに向かって、通話を押した。







(あれ・・・?)







ボタンを押した瞬間、なぜかディスプレイに通話の表示。

もう出たのか?

随分早いな・・・






「あ、あのー?」
『・・・・・。』
「え、えぇと透ですけど。すみません、やっぱり今日は中止に---」
『・・・どこだ。』
「は?」
『今どこにいる。』
「え、だから葵クンとこのBarですけど。」
『葵クン?』
「Blue Hawaiiの葵クンですよ。」
『・・・あぁ、分かった。』
「は・・・あの、玲さん今日は---」






(・・・・?)






あれ、と思って確認すると---まただよ。

電話切れてる。

さっきとほぼ同じ会話だったけど何がしたかったんだ?再確認?



ていうか断れなかったじゃないか。

どうしよ・・・

また電話しないといけないのか?






葵「ちょちょ、ちょっと透さん!今のってまさか、玲さんですか!?」
「へ?あ、あぁ・・・葵の知ってる玲さんだと思うけど。」
葵「い、いつの間に知り合いに!」
「いつの間にって---」
香「ちょっと待ってよ!玲さんってまさか---最後のイケメン!?」
直「最後のイケメン・・・」






最後の変人の間違いだ。


そんなことよりマジでどうしよう。

帰ろうかな。

いやいや、黙って帰るのはさすがに怖い・・・






香「玲さんってどんな人!?」
葵「玲さんはですねー!」
香「うんうん!」






また始まったよ葵のイケメン談義。

どうせならあの3人の心がいかに病んでるかレクチャーしてやってくれ。






「はぁ・・・」
直「透さん?」






(まぁ・・・いっか。)






せっかく気分良く飲んでるし
香織と葵は頼りないが直樹がいるし

今日は無理矢理連れて行かれるなんてことはないだろう、多分。






「なぁ、直樹。」
直「なんですか?」
「今日は何があっても一緒に帰ろうな?」
直「え・・・えっ?」
「いいか?何が起こっても私から離れるなよ?」
直「そ、そんなっ・・・!」






何か起こってからじゃ困るんで前もって頼みこんでおくことにした。

お前だけは最後まで私の味方でいてくれ。






「そういえば話の途中だったよな?」
直「えっあっ、そ、そうでしたね!」
「なんだ?」
直「え、えっとですね。」
「うん。」






手団扇で顔を仰ぐ直樹。

もしかして酔ったのか?
帰るなら私も連れて帰ってくれよ?






直「え、えーと明日なんですけど。時間があればご飯食べに行きません?」
「メシ?あ、もしかしてこの前言ってた店?」
直「は、はい。」






そういえばそんなこと言ってた。


明日は何かあったっけ・・・
用事といえば晋のことだけか?

アイツと話すのはそんなに時間はかからないだろうと思う。

「この前はゴメン!」

大体2秒で終わるな。






直「何か予定入ってました?」
「いや、大丈夫だぞ。」
直「ほ、本当ですか?」
「うん。何時に待ち合わせする?」
直「な、何時がいいかな。」






直樹とメシ食いか。

いいね、久々に心が癒され---








「うぁっ!?」
直「え!?」








話の途中







突然、腕を後に引かれた。