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有「また、ここに来るとは思ってなかったな。」
ボソッと呟く有希。
上着にすっぽり包まれて、袖からは少ししか指が見えない。
チビの方じゃない。
どちらかというと女子の中では普通より高めの身長だと思うがやはり男物の服はでかいらしい。
温かそうに包まる姿が可愛くて仕方がない。
「俺も・・・まさかお前と来るとは思ってなかった。」
正直な気持ちだな。
有希が引っ越しても俺の実家はここにあるわけだし。
昔のように溜まったりすることは無くなったが近くを通ったりすることはある。
苦しくなるから極力避けてたけど。
この公園が悪いわけじゃない。
むしろキラキラした思い出がたくさんある。
ほとんど仲間とバカやった記憶だけど。
その綺麗な思い出をずっと、じいちゃんになっても持ち続けるはずだったんだけどな。
あんなことがあって以来、ここにくると傷口を無理矢理開かれるような感覚に襲われて・・・
苦しかった。
有「なぁ遼。本当にありがとうな。」
まっすぐ前を見詰める有希。
そして小さな声で礼を述べた。
「・・・何の礼?」
急に言われても分からない。
さっきやったカツサンドのことか?
有「お前がいなかったら・・・今も笑えてなかったと思う。」
あぁ、なんだ。
そんなことかよ。
「礼なんかいらねぇって、前にも言わなかったか?」
落ち葉が風に乗ってかさかさと音を立てる。
やけにその音が耳に響いて・・・
昼間だってのに静か過ぎるんだよ。
有「言ったな。でも、何回言っても足りな---」
「俺はお前が笑ってくれるだけでいい。」
うわ・・・・・・何その恥ずかしいセリフ。
キザを通り越して崖から落ちそう。
でも言ってしまったものは取り消せないので。
『今はな』と補足説明を付け加えた。
有「そそ、そうか!」
俺の可愛いお姫様は引かずに照れてくれている。
余計に愛しさが増すってもんだ。
やっぱりこいつって可愛い。
「そうだ。ずっとそうしてろよ。」
少し俯いて照れ隠ししてる有希の髪をもう一度くしゃくしゃにした。
『止めろー!!』と叫ぶ。
無邪気に笑った顔があまりにも可愛過ぎて。
抱きしめたい衝動を抑えるのが大変だ。
「さぁて。そろそろ行くか?」
有「そうだな。」
そうだ、今からデートしようデート。
せっかく有希を連れ出したんだ。
抜け駆け上等だな。
どこに行くか・・・
せっかく女の格好してるし。
やっぱショッピングデートか?
立ち上がりながらそんなことを考えていた。
有希に目を向けると上着を脱ごうとしている。
「着とけよ。」
有「え?い、いいよ!」
「そんな格好してるとマジで風邪引く---」
『もしかして・・・遼か?』
「ん?」
またしても真正面からの接近に気付かなかった鈍い俺。
顔を上げると仲睦ましそうに腕を組むカップル。
男の方は見覚えがある、気がする。
えーと、えーと。
・・・・・・名前なんだっけ。
多分同級生。
多分隣のクラス。
多分、確か、多分、多分・・・・・・
「おー、アツシじゃん。」
必殺☆あてずっぽ。
ア「久しぶりだなぁ!」
「そ、そうだな。」
当たった!!
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