やっぱりエロス

やっぱりエロス 06 ~GAME






「玲くん玲くん。この豆腐もすっげぇ美味いよ。」
玲「これ?・・・あ、本当だ、美味しい。」
「あぁ、幸せ・・・」
玲「うん、幸せだね。」







玲くんのキュートワールドに呑まれる寸前
タイミング良くお料理が到着した。



これがまた色鮮やかな見事なもので味も絶品。

一口食べては感動し、二人して幸せを噛み締めている。







玲「透ちゃん、この和え物も美味しいよ。」
「あ、ほんとだ、美味。」
玲「やっぱり仕事を頑張った後のご飯は格別に美味しいね。」
「そうだな。」







私は仕事じゃなかったけどね。

女避けの為に玲くんのボディーガードして
情報収集の為にもくもくと歩き回って

あれ、ある意味仕事だったのかも。







「それにしても・・・玲くんって目立つんだなぁ。」
玲「え?急にどうしたの?」
「いやぁ、今日を振り返るとさ。ずっと誰かが玲くんを見てたような気がする。」
玲「ふーん?」
「特に"王子!"って言う女子が多かったよな。」
玲「・・・それ嫌だ。」
「なんだよ、気に食わないのか?」
玲「俺は王子じゃない。」
「?」







不機嫌そうに眉を寄せる玲くん。

どうやら"王子"に納得がいかないらしい。








玲「だって・・・王子様ってクルクルの長髪じゃん。」

「・・・へ?」









クルクル?







玲「それに白タイツだしカボチャみたいなパンツ履いてるし。」
「え・・・」
玲「俺ってそういうのが似合いそうに見えるわけ?」
「・・・。」
玲「それってカッコいいの?どっちかって言うとカッコ悪くない?」
「・・・。」







とっても不機嫌そうに筑前煮を食す玲くん。

いたって真面目に口を尖らせてるけど・・・
これはふざけているわけではないのだろうか。







(え、えーと・・・ここは笑ったらダメなんだよな?)







どうやら彼の中の王子はクルクル頭で白タイツとカボチャパンツを装備しているらしい。

その王子も間違ってるとは言えないが・・・
今時そんなプリンスを連想する大人がいるとは思わなかった。







「ま、まぁいいじゃん。案外カボチャパンツも似合うかもよ?」
玲「うわ、人事だね透ちゃん。心の中では想像して笑ってくるくせに。」
「あ、ばれた?」
玲「えー!酷い!」
「今日一日騙されてやったんだ。このくらい我慢しろ。」
玲「・・・分かった。」
「ぷぷ!」







玲くん。
君ってからかうと面白いね。







玲「ところで、透ちゃん。次のデートはいつにする?」
「え?」
玲「今日は仕事に付き合わせちゃったから。今度は透ちゃんの行きたいとこに連れてくよ。」
「マジで?」
玲「うん。どこに行きたい?」
「そうだなぁ・・・」







行きたいとこか・・・

まぁ、今はアンティーク以外ならどこでもいい気がするけど。


あ、久々に映画もいいかもな。
がっつりアクションでスカッと発散。

そうだ、ペットショップもいいかも。
家では飼えないけど癒しを求めに--












こらこらちょっと待て。













(あ、危ない危ない・・・)







なんだ今の彼氏彼女トークは。

私もなんで素直に考えてんだ。

うっかり次のデート話に花を咲かせてしまうところだったじゃないか。







「えーと玲くん。」
玲「ん?」
「せっかくだけど次のデートはもういいよ。」
玲「え?なんで?」
「実はさ、ゲームやめることにしたんだ。」
玲「えっ?」
「だから。君たちとのゲームをやめることにした。よって玲くんとの次回デートも無し。」
玲「-------。」







玲くんの箸からコロンと里芋が落ちた。

どうやらものすごくビックリしたらしい。
見開いた目が落ちそうなくらい丸い。







玲「やめるってなんで?もしかして誰かのこと好きになった?」
「そんなんじゃないよ。」
玲「じゃあなんで?」







(なんでって言われてもな・・・)







理由がありすぎて上手くまとまらない。
ていうかまとめきれない。







「ま、まぁ・・・理由なんてどうでもいいだろ。」
玲「・・・。」
「とにかく、ゲームはやめる。」
玲「・・・。」







何か言いたそうな表情の玲くん。

だが何を言ってもムダだ。
私の決意は固い。







「まぁそういうわけだからさ。ゲームは他の女の子を捜してくれよ。それと、もう連絡もしないで--」
玲「ねぇ透ちゃん。」
「ん?」
玲「初めに言ってたよね。」
「なにを?」
玲「男を好きになれないって。」
「え?」







急になんだ?







玲「まだ出合って間もないけど。俺達の誰かを好きになれそう?」
「え・・・?」
玲「それともやっぱり・・・男は好きになれそうにない?」
「・・・。」







どんどん話が変わっていくけど・・・

もしかしてはぐらかすつもりなのか?







「そんなのどうだっていいだろ?とにかく--」
玲「質問に答えて。」
「・・・。」







(え---)







風穴でも空けるつもりなのか。

じーっと真剣な顔で見つめてくる玲くん。



なんでだろう。

迫力に押されてしまうんですけど--








「・・・まぁ、初めに言ったとおりかな。男は好きになれそうにない。」








迫力負け。

真っ直ぐな視線から目を逸らして答えた。






ていうかなんだ?

なんでそんなことを聞くんだ?








玲「そっか。」
「・・・。」
玲「良かった。」
「え?」







(・・・?)







ごちそうさま、とお箸を置く玲くん。

そして背筋を伸ばし、改まってこっちを見る。








玲「あのさ、透ちゃん。」
「ど、どうした?」
玲「俺、女の子が好きだよ。可愛いし小さいし、柔らかいし・・・」
「へ、へぇ。」







そ、そうなんだ。







玲「でも・・・好きになってくれたらそこで終わり。」
「え?」
玲「それ以上の気持ちはいらない。求められても応えられないから。」
「え・・・」

玲「簡単に言うと---振り向いてくれるまでの過程が好き。」

「・・・。」

玲「デートしたりプレゼントしたり好かれるように努力するのって楽しいし。」
「・・・。」
玲「でも残念なことに・・・大して努力する間もなく振り向いてくれる女の子が多くてさ。」
「・・・。」


玲「でも透ちゃんは俺のこと簡単に好きにならないだろ?」
「・・・。」
玲「そんな女の子、今まで出会ったことがないんだよ。」
「・・・。」

玲「だからゲームやめるのはダメ。却下します。」







---にっこり








例のごとくとろけるような笑顔を浮かべる玲くん。








しかし・・・








返す言葉が見つからん。








玲「ねぇ、透ちゃん。」
「・・・。」
玲「俺、透ちゃんに好きになってもらえるように頑張る。」
「・・・。」
玲「でも」
「・・・。」














玲「透ちゃんは俺のこと

  好きにならないでね?」
















---必殺奥義・王子スマイル









とんでも発言とは裏腹に

その笑顔はやはり犯罪級にキュート・・・










だが











(---病んでる。)











病んでるよこの子。











(なんだかなぁ・・・)








こんなに綺麗に笑えるのに
こんなに光り輝いてるのに

それなのに---













「・・・君って、カワイソウなヤツだな。」













ポロッと本音が出た。








玲「カワイソウ?」








目を丸くする玲くん。

ま、こんなこと言われるなんて思わなかったんだろ。

私だって言うつもりはなかったけど・・・








「適当な女を捕まえて、好きになってもらえるよう頑張って・・・で、惚れられたら終わり?」

玲「・・・。」

「そんな付き合い方しかできないなんて、玲くんはカワイソウなヤツだよ。」

玲「・・・。」






ゲームなんてくだらない遊びに参加してるくらいだからな。

玲くんがそういう奴かもってことは予想してた。


なのになんだか悲しいというかなんというか・・・







「まあ、どうでもいいや。私には関係ないもんな。」
玲「・・・。」
「とにかく、ゲームを続ける気は無い。」
玲「・・・。」
「申し訳ないけど他の女子を探して--」









(え・・・)










突然










玲くんが立ち上がった。










「え、あの・・・どうした?」
玲「・・・。」
「な、なにやってんだ?」
玲「・・・。」
「コラ!なんでこっち来んの!」
玲「・・・。」







テーブルを迂回してゆっくり近づいてくる玲くん。

こっちを見下ろす顔は無表情。
感情が全く読めない。

これはもしや---








(・・・怒っちゃった?)








どうしよう。

やっぱこれ、怒ってるよな?

逃げた方がいいのか?
逃げた方がいいよな?

それとも戦うべきか---








「・・・。」

玲「・・・。」








すぐ隣に座り込む玲くん。

その距離、約50cm








そして無言のまま

ジーッとこっちを見つめてくる---