やっぱりエロス

やっぱりエロス 03 ~GAME







玲「さ、着いたよ。」
「・・・。」








(ウ、ウソだろ・・・)








そして現在、午後3時。



目の前にはでっかい看板。

そこには嫌でも目に入る巨大な文字・・・







ひたすらアンティーク!夢のヨーロッパ展!







古城展、資料館に続き、本日なんと3軒目のアンティーク。

もはやアンティークに恐怖すら感じる。







(も、もうムリ・・・)







恐るべし相川玲。

まさかこんなデートを計画してるなんてチラリとも想像できなかった。







「あのー玲さん。しばらく別行動しません?」







3件目のアンティーク展に入って30分。
あまりの辛さにとうとう言ってやった。


15分でいい。

出来れば喫煙スペースに引きこもりたい。
癒しという名の煙を吸わせてはもらえないだろうか。







玲「ダメ。」
「10分、いや5分でいいんで!」
玲「ヤダ。透ちゃんがいないと困る。」
「は?」
玲「・・・困るんだよ。」
「?」







困るって・・・

そういえばさっきも言ってたな。







「なんで困るんですか?」
玲「なんでって・・・透ちゃんがいないとゆっくり展示品見れないから。」
「何言ってんですか。むしろ一人の方が気も遣わなくてのんびり出来るでしょ。」
玲「違うよ。そういう意味じゃなくて。」
「じゃあどういう--」




『きゃー!ちょっと見て見て!』
『や、やだ!すっごいイケメン!』








突然

悲鳴のような女子の声に会話を遮られた。









『うわぁ、カッコいい・・・』
『モデルさんかなぁ!』
『王子様みたい!』







今度は別方向から声が聞こえてきた。







(・・・?)







よくよく耳を澄ませば至る所から聞こえてくる羨望の声。

そういえば随分視線も感じるけど・・・







玲「はぁ・・・」
「・・・。」







玲さんを見るとなぜか困った顔。

目が合うと苦笑いが返ってきた。








(お、おいおい王子・・・あんたまさか---!)








玲「行こ、透ちゃん。」
「え!」








不意に手を握られた。
そして引っ張られた。

ついでに周りからは「きゃー!」的な悲鳴が上がった。







『強引な王子もカッコいいー!』
『いいなぁ、あんな彼氏がいて・・・』







(・・・・・・。)







耳を澄まさなくてもガンガン聞こえてくる女子の声。

思い返してみればさっきの資料館でもコソコソ見られてたような・・・

もっと思い出せば初めの古城展でも騒がれてた、ような気がする。







(やっぱ目立つんだなこの人・・・)







まぁ、騒ぐ気持ちは分かるぞ。

雰囲気も穏やかで優しそうだし
細身で長身でスタイル抜群だし

極めつけはこの甘いプリンスフェイス。

「実は俺の前世、王子なんだ」って言われても全く違和感がない。











いやいやちょっと待て。

王子の分析なんかどだっていい!











ちょっと思い出してみよう。

①一緒にいてくれないと困る発言
②女子の悲鳴に対する苦笑い
③そして女子の視線から逃れるような行動



以上をふまえて考えると・・・



一つの不吉な可能性にたどり着く。







「玲さんあの・・・」
玲「え?」











「今日デートに誘ってくれたのって・・・

 もしかして、女避けのため?」












頼む。

ウソでもいいから違うと言え。

そんなことの為に貴重な日曜を失ったなんて冗談でも受け入れられない。







玲「何言ってるの。そんなわけないだろ?」
「!」







だ、だよねー!

さすが玲さん。
だてに笑顔が可愛いわけじゃない!







玲「今日は透ちゃんとアンティークを見ようと思ってデートに誘ったんだよ?」
「うんうん!ありがと!」
玲「だってこんな所に一人で来ると大変だからね。女の子が寄って来ちゃうから。」
「うんう-----」







ん?








玲「さっき透ちゃんがお手洗いに行ってる時も大変だったんだよ。」
「・・・ふーん?」
玲「だから透ちゃんと一緒に見て回りたいんだ。」
「------。」








うぉい玲さん。








世間一般ではソレを








「女避け」と言うんだよ。









玲「とにかく、俺から離れないでね透ちゃん。」
「・・・。」
玲「ほら、はぐれないように手繋ごう?」
「・・・。」







軽く放心する私の手を、まるで彼女を労わるように優しく握って歩き出す玲さん。

そしてチラリと振り向いてはにかむように微笑んだ。

うん、悶絶レベルのナイススマイル。








しかし---









(くっそー・・・!)









ふざけやがってこの王子。

せっかく貴重な休日を投げ打ったってのにまさかの女避け!

まさか復讐か?
約束をすっぽかした復讐のつもりか?







とにかく、押し寄せる脱力感が半端じゃない。







世の中全ての王子に裏切られたような気がする。








(この腹黒王子め・・・)








どう見ても名作とは言えない絵画をじっと見ている玲さん。

その横顔を睨んでやる、が全く気付かない。

またしても真剣な目で展示品を見つめている。







「はぁ・・・」







思わずため息。

アンティークなんてもううんざりだ。
さっさと家に帰りたい。












しかしそんな願いも虚しく












なんとここから2時間

ひたすらアンティークと共に過ごすこととなる。