BAR・Black Part2

BAR・Black Part2 / 4 SAKURA∞SAKU first

「…はぁ」

 

イスに座り直し、あいつが置いていったタバコに火をつける。

 

・・・また逃げられた。

非常に面白くない。

せっかく今から楽しもうと思ってたのに…

一気に楽しみが無くなった。

 

それよりこの展開…
まるっきり初日と同じじゃねぇか。

まったくどこまで馬鹿にしてくれるんだあの変人は。

 

今回は紛れも無く

---誘いを断って男と密会

こう何度もやられると結構応えるってもんだ。

 

『なんなのあの女!誰なの!?』
仁「おおお姉さん落ち着いて下さいっ!!有希さんは俺のご主人様っす!」
陽「違いますよ!有希さんは私の未来の彼氏ですぅー!」

 

騒ぎ立てる女と意味不明な二人。

ていうか有希が何なのかって?

そりゃお前---

あいつは我が家の変人管理人だよ。

そして

 

 

「…気に入ってる女だ。」

 

 

『えっ!?』
仁「は・・」

 

おっと…

独り言のつもりが口に出てたらしい。

 

『き、気に入ってる・・・・・?』
「あぁ。」

 

そう、気に入ってる。

あれは俺のモンだ。

 

『どういうこと!?あんな男みたいな子がいいっていうの!?』

 

男みたい、か。

確かに男みたいな奴なんだが…

 

「結構いい女だぞ。…多分。」

 

立ち上る紫煙を見つめながら答える。

…今のは自分に言ったのか?

 

仁「ま、真樹さん?」
『な、なにそれ・・・・・』

 

一番いいのはキスの相性がいいってことか。

あいつとのキスはなかなか良かった。

柔らかくて甘い、感触の良い唇。

---また重ねたい

そう思った。

 

そして時々見せる、女の一面。

出し渋りしてるわけじゃないんだろうが

---もっと見たい

そう思わせる。

まぁ、トラウマ持ちってのが引っかかるとこなんだけどな。

 

とにかく…

 

家に帰ってきたら覚えてろよあいつ。

 

「・・・帰る。」
仁「え?」
『えっ!?か、帰るって・・・』

 

こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。

今から女とホテルに、って気分でもなくなった。

今、傍に置いておきたいのは

 

"あいつ"

 

ま、大人しく言うこと聞くとは思えねぇがな。

 

『帰るってどういうこと!?』
「悪い。」
『え・・・・・なんで・・・・』

 

なんで・・・・・か。

なんでだ?

お前じゃ満たされない

から?

 

今のは変だな・・・

あいつは俺を満たすようなこと何もしてねぇぞ。

満たすどころか枯渇させられてるような気もする。
追いかけて縛り付けたくなる衝動に駆られる。

 

「これで足りるか?」
仁「あのっ・・・・多すぎです。」
「じゃあ有希が来た時の飲み代にしてくれ。」
仁「は、はい。」

 

ざわつく店内と、その他諸共を後に店を出た。

 

(明日は晩酌に付き合わせるか。あぁ、俺が付き合うことになるのか?)

 

 

なんとなくイラつく気持ちと

 

 

別に悪くはない気持ちを両手に

 

 

家へと足を進めた。

 

 

 

 

 

---BAR Black Part2(完)