BAR・Black Part2

BAR・Black Part2 / 3 SAKURA∞SAKU first

陽「だっ誰ですか!このスペシャルイケメンはっ!?」
有「なんだよお前、彼女いるのにこっちに座っちゃうわけ?タバコ持ってっていいからあっちに行けよ。あ、陽子ちゃん。こいつは帝王真樹様ね。」
「なんだその自己紹介は。しかもあっち行けって・・・俺が隣に座るのが不満なのかよ。」
仁「あわわわわわ!!!!!」

 

なんて女だ。

言葉の全てに"失礼"が着いて回る。

 

有「お前も孝君ももはや同類としか言いようがねぇな。」
「は?」
有「デート中は彼女を大切にしてやれよ。あんな別嬪さんほったらかすなんて。どういう神経してんのお前は。罰が当たるぞ。」
「別嬪さんって・・・」
有「しかもほら!見てるよ彼女、こっち見てるー。少しは私に迷惑かけるかもーとか気を遣ってはくれませんかね。」

 

がたがた音を鳴らしながらイスを離す有希。

かなりムカつく行動だ。

まぁ、確かに女も見てる。
見てる先は有希なんだが。

 

「そんなの俺の勝手だろ。それにあいつは彼女じゃねぇ。」
有「はぁ、まただよ。どうにかしてくれよ仁。私には理解できねぇよー。」
仁「おお、俺に振るんすか!?」

 

紫煙を吐きながら店員に話をふる。

何が理解できねぇんだよ。
お前の言動の方がよっぽど理解不可能だろうが。

 

「それよりお前は何してんだよ。」
有「私か?私は待ち合わせ時間までの時間潰しだ。」
「待ち合わせ?これからか?」

 

時計を見るともうすぐ0時。
こんな遅くから誰かに会うっていうのかよ。

 

有「そ。」
「・・・男か?」
有「相手か?男だぞ。」

 

(・・・・・んだと。)

 

・・・全くもって不愉快だ。

俺が隣に座るのをこんなに拒否るくせに今から男に会いに行くってのか?

…これじゃまるで初日の再現じゃねーか。

激しく面白くない。

 

「その約束、今度にしろ。今日は俺に付き合え。」

 

どうにも押さえつけたくなった。

お前は俺のオモチャだ。
勝手な行動するんじゃねぇよ。

 

有「は?何言ってんだ?」
「今日は止めにしろ。」
有「意味分かんねぇ。我儘なら彼女に聞いてもらえ--や、やべっお前早く戻れって!すげー見られてる!見られてるよ!」

 

側に置いてあったメニュー表で自分を隠してる・・・・つもりらしい。

行動が怪しすぎるんだよお前は。

 

「だから、彼女じゃないって言ってるだろうが。」
有「どっちでも関係ねぇんだよ!女子に睨まれるのは趣味じゃねぇ。あ、でも今日はこんな格好だし…もしかしたら男子に見られてるのかもな。お前よりもカッコいいーなぁんて思われてたりして。」

 

今度はへへんと効果音付きでふんぞり返りやがった。

どこまでも幸せな頭をしているらしい。

 

「お前が女だって気付いてるぞ。そんなのはどうでもいい。今日は付き合え。」
有「何!?気付いてる!?だったら今すぐ戻れ!迷惑だ!」

 

迷惑・・・・・だとぉ?

 

仁「ええええぇ有希さんっ!真樹さんから誘われてるんすよ!?断るなんて有り得ないっすよ!!」
陽「そそそそうですよぉ!こんなスペシャルから誘われるなんて二度とないチャンスかも・・・・!」
有「何言ってんだお前ら。陽子ちゃんもスペシャルって--」
「今から会う相手は誰だ。」
有「へ?」

 

(外野は黙っててくれよ。)

 

有希の奴---絶対行かせねぇ。

あっち行けだとか迷惑だとか・・・
絶対許さねぇ、説教だ。

いや…こうなったら徹底的に躾けてやる。

 

有「友達だけど?」
「断れ。」
有「嫌だ。どうしたのお前。」
仁「有希さーん!!」

 

ここまでスルーされると・・・

ムキになっちまうじゃねぇか。

 

「・・・・・・・・・・有希。」
有「あ?・・・ぇ・・・・あー。」

 

視線を捕えるとみるみる焦り始めやがった。

そうだ、そのまま流されて言うことを聞け。

 

有「あああれあれー!とどどうしちゃったのかなぁ帝王は!マジモード?やだやだ大人気ないっすよー!」
「・・・・・・・・・。」

 

 

(お前は・・・・・俺を煽る天才だな。)

 

 

どこまでも俺を馬鹿にしてくれる。

 

そして---

 

どこまでも俺を煽りやがる。

 

有「うわっ---!」

 

ウロウロと泳ぎまくる哀れな目。

 

そんな有希の胸倉を掴んで

 

思い切り引き寄せた。

 

有「なにす・・・・・・ん!」
仁・陽「----え---えぇっ!?」

 

何か言いたそうに開く唇に

 

 

軽くキスを落とした。

 

 

(・・・・・・なんでだろうなぁ。)

 

 

何故か、やけに苛めたくなる。

 

有「なななななにすんだてめぇ!」

 

(なにって・・・キスしたんだろうが。)

 

焦る顔に慌てふためく態度。

なかなかいい。
もっと困らせてやりたくなる。

 

「名前で呼ばなかったらキスするって言っただろ。」
有「なななな・・・・なんだとぉ!?こ、このっ------エロスヤローがぁ!!」
仁「ぎゃ、ぎゃぁぁ!!言っちゃったー!!」
陽「ひぃぃぃぃ!!!!」

 

店内は有希とその他2名のせいで大賑わいだ。

凄まじく煩い。
その中に自分がいるなんて考えられねぇ。

 

有「おいこら帝王!この手を放せぇぇ!」

 

必死に俺の手を引き剥がそうともがく有希。

それは抗っているつもりなのか?

こういうところはやっぱりお前も女だ。
そんなの、なんの抵抗にもならない。

 

「てめぇまた言いやがったな?よほど口を塞いでもらいたいらしい。」
有「よ、寄るんじゃねぇ!仁!陽子ちゃん助けてくれよ!」
仁・陽「むむむむ無理ですぅぅー!!」
有「うわぁぁ!!」

 

抗う手を掴み、今度はゆっくり引き寄せる。

ぶんぶんと首を振り焦りに焦りまくる有希。
なかなかいい顔だ。

 

有「まま真樹様帝王様美人様!ゴメンナサイスミマセンモウシマセンワタシガワルカッタデスソーリーソーリーユルシテーー!!!」
「・・・お前、謝ってるつもりなのか?」
有「心から謝ってんだろーが!!」
「そうなのか。」
有「謝ってんだから放してくれよー!!」

 

バーカ、もう遅ぇよ。
謝っても絶対許さねぇ。

 

有「ひぃぃぃぃぃー!!」
仁・陽「----------っっ」

 

周りの奴らが息を呑んだのが聞こえた。

 

だがそんなのはどうでもいい。

 

この口が二度と失礼なことを言えないよう

 

しっかり塞いでやる--

 

 

『ちょっと杉浦君!!』

PIPIPIPIPIPIPIPIPI--------

 

 

もう少しで0距離、というところで

 

女の制止と誰かの携帯が鳴った。

 

『誰なのこの女!?』
「!」
有「---!」

 

女に強く腕を掴まれ、不意に力が緩んだ。

その一瞬、どこにそんな機敏さがあったんだってくらいの速さで俺から距離を取る有希。

そして

 

有「ははははーい!あ、遼!?今から行く!即行行く!!」

 

騒ぎ立てる携帯を掴み取り電話に出た有希。

どうやら鳴ってたのはこいつの携帯だったようだ。

それにしても--

 

(遼?前にも聞いたことがあるような…)

 

どこでだ?

珍しい名前じゃない。

だが最近聞いたような・・・

 

有「ささ財布財布---あった!たたたた足りるかこれでっ!?」
仁「足りるかって・・・多すぎですよ!」
有「えぇぇぇとじゃぁ次来た時の代金にしてくれ!」
仁「えぇ!?」

 

遼に気を取られている間にバッグをガサゴソ漁る有希。

そして金をカウンターに叩きつけ---

 

ていうか逃げるつもりか?

そうは行くかよ。

 

「おい待て。今日は行かない約束だろうが。」
有「んな約束してねぇよ!!」
「・・・てめぇ、逃げられるとでも思ってんのかぁ?」
有「にに逃げねぇとやばいだろうが!」

 

わたわたと身支度を整える有希。

こいつ、マジで逃げるつもりか?

 

「おい有---」
『ちょっとあんた!待ちなさいよ!』

 

有希を捕まえようとした、その時

女が目の前に立ち塞がった。

 

有「お姉さんの方が1000倍綺麗っすーー!!」

 

女の制止も見事に無視。

 

そして意味不明な捨て台詞を残し

 

飛ぶように走り去った。