BAR・Black Part1

BAR・Black Part1 / 8 SAKURA∞SAKU first




何故か飲み仲間が増えてしまったこの席。






追加されたのはセクハラモデルお医者様と掴めない美男子。






全くもって意味が分からない。






孝「おい、もっとゆっくり飲め。」

「うるせぇなぁ!早く飲まねぇと帰れねぇだろうが!」

仁「ひ、ひぃぃ!」






そして何故か怯える仁。

こちらもリアルに意味が分からない。






「なんなんだよあいつは。なんであんなに怯えてんだ?」

累「気にしなくていいよ。有希の変人っぷりに着いていけてないだけだから。」

「・・・おい。」






累たんは酔ってしまったんでしょうか。

言葉に棘を感じます。


『こら!失礼だろ累!』

なぁんて純君に怒られる累。

もっとしかってやってくれ。






孝「それにしてもお前・・・なんで今日はそんな格好してんだ。」






累と純君のやり取りをながめていたら

隣の孝君がボソッと呟いた。






「あ、あぁ・・・これには深い訳があってですね。」

孝「なんだ。」

「え、いや、別にお前に説明するようなことじゃ--」

孝「言え。」

「言えって・・・」

孝「早く言え。」






なんでこいつはいつも命令口調なんだ。

てかなんで説明しなくちゃならんのだ。






孝「・・・・・・・・有希。」

「---------!!わ、分かった分かった!」






スーッと伸びてくる手。

先日殺されかけたのもあってこいつのマジモードには逆らえない。

軽くトラウマだ。






「る、累に頼まれたんだよ。これ着た有希が見たいなぁって。」

孝「・・・それで?」

「それでって・・・それだけ。」

孝「・・・・・・・は?」

「お前なぁ。あのキューティー累たんの言うことを簡単に断れるわけねぇだろうが。あの可愛らしさは凶器よ凶器。」






もはや逆らえる気がしねぇ。







孝「・・・・・・・ぷっ。」

「------へっ!?」







わ-----わわわわ笑った!?

有り得ない。

有り得ない!

あまりの衝撃に2回言ったぞ。

そして3回目。


有り得ない!!!






孝「累が--------"可愛い"?」

「え、あ、あぁ…可愛すぎる。頼まれたら断れねぇよ。」

孝「・・・・・・・。」

「願わくば弟になってくれねぇかな。」

孝「・・・それは言わない方がいいと思うぞ。」

「えっ、やっぱ迷惑か!?」






ガーン。地味にショック。

さっきは笑ったくせに急に真面目な表情を浮かべる孝君。

なんでだ、やっぱり迷惑なのか。

リアルにショックだ。






孝「迷惑とかそんな意味じゃなくて。」

「じゃぁなんだよ。」

孝「悪い意味じゃない。とにかく・・・言うなよそれは。」

「・・・なんだよ。分かったよ。」






なんだか分からんが孝君の方が累との付き合いは私より全然長いからな。

ここは素直に言うことを聞いておこうと思う。








「・・・あれ、ちょっと酔ったかも。」







ふと、目の前がぐらりと揺れた。






「おっと・・・」






思わず額に手を当てる。

賑やかに話してたからな。

もしかして結構飲んでたのか?






孝「帰るか?」






孝君が顔を覗き込んできた。

やっぱり視界が少し歪む。






「あらら・・・気付かないうちに飲みすぎたみたいだ。そろそろ帰ろっかな。」

孝「・・・分かった。」






(ふーん・・・)







こいつらと飲むのって






結構楽しいのかもしれねぇ。






(遼と飲んでる時みたいだな・・・)






酔ってると分かったらどんどん頭がグラグラしてくる。




おー珍しい。

久々にフラフラだ。

これはやばい。

早く帰って寝よう。






(へ、へへ・・・)






バッグから財布を取り出そうとする自分の手。

なんてスローモーション。

シラフで今の自分を見たら腹抱えて笑えそうだ。






孝「いいから。」

「へ?」






スッと隣から手が伸びてきた。

財布を探す手を掴まれ、おまけにバッグを取り上げられた。



いやいや実況してる場合じゃなくて----






「こ、こら返せよ!このまま帰ったら仁が困るだろ!」

仁「へ?」

孝「全く・・・大人しくしてろ。」

「え・・・」






なぜか頭をぽんぽんと撫でてくる孝君。

そして仁に諭吉様を数枚差し出して--





って、ちょっと待て。






「あ、あの、孝様。自分のくらいちゃんと払うから。てか今日は私が出すって--」

孝「ほら、上着着ろ。」

「え?あ、はい。ありがと。」






イスに掛けていた上着を羽織らせてくれる俺様。

これは夢か?

酔っ払いの都合の良い夢を見てるのか?



おーい純君、累たん。

言い合いしてないでこれは夢だと言ってくれ。

てか君達、いつまで言い合ってんですか。






仁「・・・こ、孝さんが優しい。」






おい仁、夢と言えって言ってんだ。

現実を実況するんじゃない。






孝「お前ら帰らねぇのか?」

純「え?」

累「え、あ、有希!もういいの?」

「あぁ、むしろ飲みすぎた。」






孝君に腕を支えられて立ち上がる。

すんませんね。

マジで飲みすぎました。






純「俺、もう少し飲みたい。累、付き合ってよ。」

累「えー!?ヤダ!」

純「ヤダじゃない。居残り決定ね。」

累「え---えぇぇ!?」






純くんに捕まり絶叫する累。

一体どうしたんだ。

お前も酔ったのか?






孝「じゃあ有希は連れて帰るからな。」

純「うん。姫、気をつけてね。」

「ああ。累、今日はサンキューな。あんまり遅くなるなよ。」

累「・・・わ、分かった。」






何故か落ち込んでしまったしまった累。

頼むよそんな顔しないでくれ。

明日いっぱい遊んでやるから・・・







「じゃ・・・・・お先・・・・」







弱々しく手を振って







孝君と共に店を出た。