BAR・Black Part1

BAR・Black Part1 / 5 SAKURA∞SAKU first


--孝--






---気持ち良くない






最近、悩んでいる。






---気持ち良くない






女との絡み合い。






そして---






専らキスに関してだな。






あいつの唇は重ねて心地よかったのに・・・






ちなみにあいつとは---






不本意だが

あの男女のことだ。






突然やって来た管理人、有希。






特別美人でもないが、男受けする可愛らしい顔はしている。

スタイルもまぁまぁだ。



年上らしいが童顔が邪魔して見えたもんじゃない。

累と同じくらいかと思った。

しかも口が悪い。

女ってのはウソで、実は少年なんじゃねぇかと疑っている。






---女は媚びて寄ってくるもの






求められても求めることはない。

飽きれば次に手を伸ばす。



幸か不幸か、それでもいいという女は周りにたくさんいる。

それに、個人的にはそういう関係が楽で気に入っている。

突っかかってくる女?

そんなのもってのほかだ。






---桜館恒例の管理人いびり






つまりは有希で遊んでやろうってことなんだが

・・・今回は参加する気にならねぇ。





なぜって?





そりゃあんなじゃじゃ馬・・・

手なずけるのは面倒だし

そもそも好みじゃねぇからだ。






勝気な女-----とは少し違う。

じゃあどのジャンルに属するんだ?

・・・・・・その他か?






明らかに俺達のことを男として意識していない女。

そんなヤツは初めてだ。






好みじゃない、興味もない。

だから男として意識されなくても構わない---

のだが・・・






あまりにも自然にスルーされると

無性に腹が立ってくる。






あの真樹を面と向かって拒否。

俺に限ってはキスしたら殴られる始末。






当然ながら初めての経験だ。

しかもあの女、真樹と俺を一つにまとめやがった。

失礼極まりない。






だがあいつが不意打ちで笑顔を向けてきた時






不覚にも、動けなくなってしまった。






---抱きしめたい






なぜかそう思った。






あいつの笑顔に目を奪われたのにはもちろん

頭に浮かんだ有り得ない思考に寒気を覚えた。





だって意味が分からない。





何が抱きしめたいだ。

自分の思考ながら気分を害する。






---飲まないと眠れないんでね






「・・・・・。」






いちいち引っかかる奴だ。

飲まないと眠れない?

あの年でアル中かよあいつ。








『五十嵐君、どうしたの?』

「・・・?」






ふと、女の声が耳に入り込んできた。






『酔っちゃったの?』

「・・・・・・・・・。」






視線をやると隣には女がいた。


あぁそうか、今日はこいつに声を掛けられて・・・

誘われるまま時々来るこの店に来たんだったな。






「いや、別に気にするな------あ?」

『え?』






女の後方。

目に入ってきたのは少し離れた席に座る2人組み。

店に入った時には気付かなかったが---






(なんでいるんだよ・・・)






そこにいたのはついさっきまで頭を占領していた女。

それとおまけが2名。








(有希・・・・・・)








なんとなく






胸がざわついたような気がした。






(・・・なにやってんだ?)






累と店員と顔を寄せてひそひそと話しこんでいる有希。

そしてちらちらと感じる視線。





・・・なるほど





どうやら俺に気付いているらしい。






(なんだよ・・・その格好。)






良く良く見ると、見たことも無い『女』の格好をしている有希。

そして隣には累。






まさかお前ら・・・






くっ付いちまったんじゃねぇだろうな。






(--------。)






別にくっ付いてもいいじゃねぇか。






どうやら俺は少し酔ってるらしい。

あいつらを見てるとなんとなくイライラするし見てると気分が悪い。






『五十嵐君、私ね…ずっと好きだったんだ、五十嵐君のこと。』






女が腕に絡み付いてきた。

・・・ちょっと待て。

今はそれどころじゃねぇ。






(あ-------)






店員がばればれの態度でこっちを見ると

あいつが店員を掴んで阻止した。






(・・・・触ってんじゃねぇよ。)






なんか・・・

なんかムカつく。






何が?






・・・そんなの分かんねぇ。






でもとにかく





ムカつく・・・






(あ・・・)






見過ぎたか。






とうとう有希と目が合った。






わたわたと焦り出す有希。


ていうかお前・・・

こんな時間に夜の世界をうろちょろしてんじゃねぇよ。

うちに来てから一度も外に飲みに出たことなんてなかったじゃねぇか。

酒が飲みたいなら家で大人しく飲んでろ--






「------ったく・・・」

『え-----五十嵐君!?』






限界だ。

堪らず立ち上がった。



同時に腕を強く引かれる。

あー、香水の臭いがきつい。






まぁ、そんな事はどうだっていい。






今はただただ・・・






あいつが気になって仕方ねぇ。







「悪い・・・・今日は帰る。」

『えっ・・・ちょっと、五十嵐君!?』

「じゃぁな。」

『ちょ・・・』






伝票と荷物。

そしてグラスを持って席を後にした。






向かった先はもちろん






「よぉ、何してんだお前ら。」






都合良く空いてた






有希の隣の席。