ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part2

ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part2—–1 SAKURA∞SAKU second

 

(最っ悪だ・・・)

 

そう、最悪だ。

 

どうしたのかって?
なにがそんなに最悪なのかって?

それは、それはですね・・・

 

 

---遡ること10分前

 

 

「ネネさん。5番テーブルにご指名です。」
「え・・・指名?」

 

夜のお仕事にも少しだけ慣れてきた今日この頃。
といっても役に立たない従業員であることに変化はない。

だって相変わらず少ない出勤日。
お店にとっては迷惑極まりなかろう。

もういいんだ店長。

潔くクビにしてくれ。
むしろ頼みます!

 

そんな願いも虚しく今日もなぜかご指名を頂いたようで・・・

恐る恐る5番テーブルへ向かうと

 

「失礼しま」
「やっほー。」
「・・・すぅ。」

 

なるほど---今日はてめぇか。

 

「うわぁ、真樹の言った通りドレス姿可愛いね。有・・・ネネちゃんは。」

 

(---要ェェェェェ!!)

 

叫ぶのはなんとか抑えた。
だが怒りを隠すことなくドカッと席に着いてやった。

 

『てんめぇー!なんで来たんだよっ!』
要「だって、まだ一回も来たことなかったし。それにドレス姿見たかったんだもん。」

 

(もん、じゃねぇ!!)

 

くそ、一体なんのつもりだ。

夜の店に出勤する度、なぜか住人の誰かが客としてやってくるのだ。

従業員としては嬉しい限りだろう。
だが個人的にはやりにくいったらありゃしねぇ。

ちなみに本日も初めはこそこそ話。
だってこいつにプリチー言語話すのって気分悪いんだもん。

ってやってる場合じゃねぇ!
プリチー変換言語は知人には難しいんだよ!

 

「チッ、ふざけやがって。何が楽しくてこいつらと--」
要「え、何?ネネちゃん何か言った?何言ってるのか聞こえないよー。」
「・・・・・。」

 

こ、こいつぅぅぅ!!

 

 

「・・・今日は随分イジワルなんだね。なんかヤな気分。もう帰ろっかな。」
要「え---!」

 

 

負けた気がする。
なぜか負けた気がする。

だが仕方あるまい。
こうするしか道がなかったんだ!

ていうかなに固まってんだこいつ。

露骨に目ェ丸くしやがって・・・
そんなに変かよ私が女言葉を遣うのは。

 

要「・・・・ふーん。」
「?」

 

しばらく硬直してた要。

だが深く息を吐いたかと思ったら

なぜか顔が急接近---

 

「ど、どうしたの?」
要「・・・可愛いじゃねぇの。」
「・・・は?」
要「今日は存分に・・・楽しませてもらうとするかぁ。」
「・・・・・・。」

 

なんとも悪そうな顔でニヤリと笑いやがった。

 

出た。実は桜館変人集団の中で一番性質の悪い男。

今日はまた厄介なのが来やがった。
先が思いやられる・・・

 

 

そして、現在に至る。

 

 

要「"要ちゃん"ね、要ちゃん。そう呼んで?」
「・・・・・・。」

 

で、こいつは今、自らを要ちゃんと呼ばせることに夢中になっている。

どうでもいいがお前・・・ちゃん、なんてガラじゃねぇだろ。
呼び捨てで十分だ。

 

「やだよ今更。要は要でいいでしょ。」
要「ダメダメ。これだけは譲りませーん。」
「・・・・・・。」

 

面倒臭ぇなぁこいつ。
何度も言うが呼び方なんてもうどうだっていいんだよ。

 

「じゃぁ・・・今だけだよ、要ちゃん。」
要「・・・・・・。」
「要ちゃん?」
要「・・・・・・。」

 

バカかこいつは。

呼んだら呼んだで固まりやがって・・・
一体何がしてぇんだよ。

 

「えと、君が要の・・・?」
「えっ!?」

 

おぉ!!そういや連れがいたんだったな!
しまった、見事に忘れていましたぞ。

 

「君の事は良く聞いてるよ。」
「え、要ちゃんに?」
「要からもだし、純や累からも。」
「へ、皆のことも知ってるんですか?」
「知ってるも何も、同じ学校だからな。」
「学校・・・・・あぁ!」

 

なるほど、と手を打つ。
そういえば君達、T大つながりでしたな。

 

「ではでは、あなたも学生さんですか?」
「外れ、助教授の方。」
「そうなんですか。すごいですね。」

 

どうやら松田さんというらしい要の連れ。

少し長めの黒髪を後ろでまとめているとっても綺麗な兄ちゃん。
真樹と同じ中性タイプだな。

どうやら住人共の周りにはイケメンさんが多いらしい。

 

松「それにしても・・・ずっと会ってみたかったんだよ君と。3人の女遊びを止めた女性・・・尊敬に値するな。」
「え、なんのことですか。」
要「おいコラ松田。変な情報流すんじゃねぇ。」

 

すかさず要が止めに入った。
何をそんなに焦ってんだ。

 

松「なにが変な情報だ。特に要、お前は酷かったからな。」
要「お、おいおい松田君。それ以上は勘弁して下さい。」
松「もう特別な人は永遠に出来ないと思っていたが。出来たら出来たでここまで変わるとは思ってなかったな。」
要「こ、こら!止めろって!」
松「ははっ、焦るな焦るな。」
要「・・・・・・・。」
「・・・・・・。」

 

す、すっげー強烈な人だなこの人。
さすがの要もたじたじだ。

 

「ゴーゴーマイウェイな人だね。」
要「あぁ・・・もう・・・」

 

はぁ、と脱力する要。

それとは裏腹に話に満足したのか、松田さんは私達から興味を逸らし、今日も一緒についてくれてるサオリちゃんと話し出した。

 

さすがは要の連れ。
やはり変人か。