ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part1

ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part1—–3 SAKURA∞SAKU second

---仕事中は女であれ

 

そう固く決意して仕事に臨んだはずだった。

しかし・・

 

「・・・・は?」

 

ダメだこりゃ。
思い切り素に戻ってしまった。

だって---

 

真「会いに来たぜ、ネネ。」

 

(な・・・)

 

なにこれなんでいるのこいつ。

まさか私を指名したのって・・・ユー?

毎日家で会ってるのに?
わざわざ店に来ておまけにご指名?

いやいやそんなバカな・・・

 

「・・・間違えましたぁ。」

 

そうだこれは間違いだ。
間違いに決まってる。

 

真「おい、さっさと来い。」

 

(ひぃぃ・・・!)

 

そそくさと逃げを試みると不機嫌そうな帝王の声が突き刺さった。

なんてこった・・・
どうやらこのご指名は間違いじゃないらしい。

 

「・・・失礼しますよ。」
真「ああ。」

 

しぶしぶ横に座ってみる。

うっわー変な感じ。

スカート姿すら披露したことないってのに・・・
なんだかドレスを着てる自分が恥ずかしい。

 

『ほぅ、綺麗な人だな。』
「え?」

 

良く見たら対面のソファーに連れがいた。
真樹の威嚇にビビって気付かなかった。

 

「も、もしかして私を指名してくれたのって・・・」
真「俺だ。」
「・・・アリガトウゴザイマス。」
『ふふっ。』

 

分かってますよ・・・
だってお連れさんの横には既に女の子が座ってるからな。

ていうか君、大丈夫か?

真樹を凝視して頬を紅く染めている女子。
どうやら帝王のお色気にやられちゃってるようです。

 

(カワイイ子だなぁ・・・)

 

まあ気持ちは分かる。
真樹のヤツ、見かけは超一流だからな。

それにお連れさんもアーティストっぽくてカッコいい部類の人なんだろう。
通路を通る女の子やお客さんが2人をチラ見しながら通り過ぎていく。

それにしても---

 

「なんで来たんだよ!やりにくいじゃねぇか!」

 

真樹の耳元に近づいてひそひそ話す。

本当なら怒鳴ってやりたいんだけどな。
さすがにここじゃいつも通りには話せない。

 

真「なんでってお前・・・面白ぇからに決まってんだろうが。」
「お、面白ぇ!?なんだそれは!」

 

そんな理由で来るんじゃねぇ!

 

真「それに---」
「!?」

 

背もたれに伸ばされていた奴の左腕。
なぜかそれがスルッと肩に絡みついてきた。

 

「こ、こらっ!」
真「ここじゃ思い切り抵抗できねぇだろ?」
「は!?」

 

真「今日は・・・逃がさねぇからな。」
「・・・・・。」

 

(ちょ、ちょっとちょっと---!)

 

店長ピンチです。
このお客さんタチが悪すぎます!

 

「ったく・・・バカかお前は。結局邪魔しに来ただけじゃねぇか。」
真「まぁ、お前弄りと見張りが目的だな。」
「見張り?」
真「変な客が着いたら困るだろ。全員一致で誰か監視に行けってことになった。」
「はぁ?」

 

なんだそりゃ。

 

真「ちなみにあいつらは用事が入ってて泣く泣く諦めたみたいだぞ。だから俺が来た。」
「チッ、余計な真似を・・・」
真「そういや孝の奴がすっげぇ不機嫌だったなぁ。」
「・・・意味分かんねぇ。」

 

全く・・・
知り合いに接客するのがどれだけやり難いか分かってんのかお前。

今の真樹に比べたらさっきクソガキの方が全然マシに見える。
まぁ、不愉快感は別にしての話だけどな。

 

真「んだよ、文句あんのか?」
「------!」

 

しまった機嫌を損ねたか!

絡み付いていた手がぐいぐい肩を引き寄せようとする。
困りますお客さん、ちょっと近すぎです!

 

「ちょっ・・・止めろーっ!」
真「お前よぉ・・・」
「なな、なんだよ!」

 

嫌がらせなのかなんなのか。
わざとらしく耳元に唇を寄せてボソッと呟いてくる。

 

真「あんまり耳元で喋るな。襲いたくなるだろうが。」
「へ!?」

 

(おそおそ襲う---!?)

 

思わず突き飛ばした。

と思ったがビクともしない帝王。
しかも耳元はやめろといったくせにグイグイ肩を引き寄せてくる。

ハードだ。
出勤初日からいきなりハードだ。

とにかく、相手がエロエロ真樹様ってのが何より辛い。

 

(くっそぉ---!)

 

 

「もう・・・じゃぁキュートなネネちゃん言葉で話すから、離れて。」

 

 

真樹の体を押す。
そして誰に聞かれても支障のない言葉遣いに変換してみる。

 

真「・・・・・・・。」
「どうしたの?そういえば・・・こうやって話したら孝も固まってたよ。」

 

そんなに意外だったのか。
見事にフリーズしてみせた真樹。

本っ当、君たちって失礼だよね。