GAME

男友達—–9 GAME

<晋>

 

透「----ゃッ--ぃやぁぁぁっ---ッ!!」
「-----!」

 

ハッと我に返り

 

頭が凍りついた。

 

俺は今・・・

 

何をした?

 

透「・・ッ----嫌だッ・・・!」
「--------!」

 

---しまった

 

透「--ッ・・・ハァッ・・・ゃ・・」
「おい・・・透---」
透「さ、触るなぁッ!!」
「------!」

 

パシッという音とともに
近づけた手を思い切り振り払われた。

 

透「ぃ---や・・嫌だッ・・・」
「・・・・・・・・・・。」

 

(お、おい・・・)

 

身を守るように自分の体を抱きしめる透。
焦点の合わない瞳は恐怖を訴えている。

冷静になってみると・・・

あまりにも酷い様子に---体が硬直。

 

「透・・・こっちを見ろ。」
透「や---やめろッ!!」
「-------。」
透「近寄るなッ!」

 

眉間にシワを寄せ、固く目を閉じて必死に俺の胸を押し返してくる。

その手から震えが伝わって---

ちょっと待て、なんだこの激しい震えは。

 

透「ゃ・・・い・・やッ・・・」
「・・・・・・・・・・。」

 

(なに・・・やってんだよ・・・)

 

声が出ない。
体も動かない。

自分がやったこととはいえ、酷すぎる。

 

(なんて・・・言えばいい・・・)

 

<大丈夫 落ち着け 怖がるな>

バカか俺は・・・
俺に怯えてこんな風になってんだぞ。

だがどうすればいい---

 

透「もう---いや・・・だ・・ッ!」
「------。」

 

透「お前なんか---嫌いだッ!!」

 

(え・・・)

 

ちょっと待て。
それはお前---

 

(・・・・・・・・・・・・。)

 

何やってんだ俺は・・・

 

怖がらせたかったのか?
嫌われたかったのか?

そうじゃねぇだろ。

 

今日は確実に
透を堕とすんじゃなかったのかよ

 

なのにこんな・・・
怯えさせるなんて有り得ない。

 

透「嫌だ---ゃめ・・・ッ」
「・・・・・・・。」

 

頭に血が上ってましたじゃ済まねぇ・・・

 

(-----最低だ。)

 

 

今更だが・・・こんなはずじゃなかった。

 

抱こうと思ってたのは認めるが無理矢理なんてとんでもない。

出来れば穏便に・・・
そして確実に透を堕としたいと思ってた。

 

そう、「今日」で確実に堕としたかった。

 

言っておくが透に惚れたわけじゃない。
ゲームに勝ちたかったわけでもない。

 

堕としたかったのには深刻な理由がある。

 

それは---安眠を取り戻すためだ。

 

実のところ先日のデートからこの一週間、俺は人生初の激しい寝不足に悩まされていた。

不眠症というわけじゃない。
どちらかというと寝付きもいい方だと思う。

 

じゃあなぜ眠れないか・・・

 

それはな、透が夢に現れるからだ。

 

『よぉマイフレンド!今日もナイスな友達っぷりだな!』

 

気持ちよく夢を見てると突然乱入。

帰れと言っても帰らない。
来るなと言っても隣に座り込みタバコに火をつける。

そして友情がいかに素晴らしいかについて語り始める。
もちろん俺と透の友情についてだ。

『私らの友情ってのはなぁ---
『私らの友情レベルはなぁ---

永遠と続く友情トーク。
そしてある程度満足すると決まって言うセリフがある。

 

『全く~お前は男と思えないよな!最高の---友達だ!!』
『なんだと。』

 

イラッとすんだろ?
そして目が覚める。

ちなみに一度や二度じゃない。
一晩に何度も何度も、朝になるまでしつこく起こされる。

 

これが毎晩だぞ。
まるで嫌がらせ、いや拷問だ。

 

---なんであいつの夢を見る?

 

当然の疑問だろう。

だが勝手に出てくるんだ。
そんなの分かるわけが無い。

酒を飲んで寝ても他の事を考えながら寝ても音楽流しながら寝ても必ず現れる。
そしてやはりイラッとして目が覚める。

気付けば睡眠不足で身も心もボロボロ。

俺はあいつに殺されるかもしれない・・・
本気でそう思った。

 

『夢を見ない方法っすか!?』
「・・・あー」
『毎日その人の夢を見るんすか?その夢のせいで眠れないんすか?』
「・・・あー」

 

不眠生活5日目、つまり昨日だが
ワラにも縋る思いで連れに相談してみた。

 

『あの、それって恋煩いなんじゃ・・・』
「なんだと。」
『い、いえ!なんでもないっす!!』

 

恋煩いだと?
ふざけんな。

 

『あ、あのぉ・・・晋さん。』
「・・・なんだ。」
『そんなに気になるならさっさとモノにすればいいじゃないっすか。』
「・・・・・。」
『堕としてしまえば気になることもないし、夢も見なくなるんじゃ・・・』
「・・・なるほど。」

 

なんて頭のキれる連れだ。

正に地獄に仏。
もはやそれしか方法はないと思った。

 

「岡本、良くやった。」
『岡野っすよー!』

 

あぁ、岡野か。

 

『で、今回はどうやって堕とすんですか?お食事デートっすか?それとも一発っすか!?』
「は・・・」
『まぁ晋さんなら1スマイルで勝利っすね!俺なら確実にメロメロっすー!』
「------。」

 

どうやって堕とす?
そりゃお前・・・

 

『あの・・・晋さん?』
「・・・うるせぇ黙ってろ。」
『は!すみません!』
「・・・・・・。」

 

(透を堕とす方法・・・?)

 

食事→×
ドライブ→×
キス→×
抱く→保留

おいおいなんてことだ。
ほとんど全滅じゃねぇか。

 

『ま、まさか!スマイルじゃダメだったんすか!?』
「・・・・・。」
『なんすかその人!どんな人なんすか!本当に女の人なんすか!?』
「・・・・・。」

 

(どんな人って・・・)

 

【透のまとめ】

・デートの最中に高校生とリアルバトル
・ヤるならエロい女を選べと発言
・キスをすれば何すんだとマジ切れ

改めて思い返すとすごいヤツだな。

ていうか俺はこの女を堕とせるのか?
無理なんじゃねぇのか?

 

(いや待て諦めるな。)

 

明日透に会うまでに確実に堕とせる作戦を立てておきたい。
これ以上の睡眠妨害には耐えられない。

 

『あ、あの・・・』
「・・・・・・・・・・。」
『し、晋さん?』
「・・・・・・・・・・。」

 

(ダメだ・・・分かんねぇ・・・)

 

考えれば考えるほど透というブラックホールに全力疾走しているような気がする。

いつの間にか透菌に脳内を犯されていくような・・・
考えただけで吐き気がする。

 

『し、晋さん・・・大丈夫っすか?』
「・・・・・・・・・・・・。」

 

まぁ・・・いい。

とりあえず、抱こう。

それしか思いつかねぇ。

 

(覚えてろよ透。)

 

明日は意地でもお前を堕とし
穏やかな安眠を取り戻してみせる・・・

 

そして本日。

作戦は順調に進んでいたはずだ。

 

晩飯の後、透を自宅に連れ込むことに成功。

途中、ハプニングも起こったがさすが俺。
透提案のゲームバトルに余裕で勝利。
正々堂々とヤツを抱く権利を獲得。

 

そして半ば強引に、透を組み敷いた。

初めは拒否してたがあいつも満更じゃなかったはずだ、と思う。
キスには特に感じてたしドキッとさせる官能的な表情だった。

なんだよお前・・・
結構可愛いじゃねぇかなんて思ってしまった。

 

正直言うとなかなかいい気分だった。

 

そしてそのまま「とりあえず抱こう」作戦は成功を迎えるはずだった。

なのに、どこで狂った?

 

「えぇぇえーとー!わ、私らこの前知り合ったばっかだ!」

 

これか?

いや違う。
こんなのどうでもいい。

 

「おおお前と私はっ---友達だろーっ!!」

 

これだ、間違いない。

 

どうやら俺は、予想以上に「友達」に引っかかっていたらしい。

 

コレを聞いた時、いつもの夢かと思った。
だが現実と分かった瞬間激しくムカついた。

得体の知れない熱が一気に膨れて爆発寸前。
そんな感じだ。

 

「忘れちまったのか!?この前海で誓っただろ!ずっと友達でいようねってー!」

 

人の気も知らず、追い討ちをかけるように「友達」を連発する透。
しかも誓った覚えもねぇ。

 

「とととにかく!私とお前は友達なんだ!!」

 

だから友達って言うな。

大体なんで俺とお前が友達なんだよ。
もう全てがさっぱり分からない。

 

「そ、そうだ!友達同士仲良くゲームでもやんねぇ?テレビの方の!!」

 

(・・・・・・・。)

 

ここら辺で完全に頭に血が昇った。

そして、爆発。

 

その後のことはあまり覚えていない。

 

なんでだよとか
ふざけんなよとか

堕としてやるとか
求めさせてやるとか

思考はめちゃくちゃで
とにかくイライラしてた。

 

 

その結果、これかよ・・・