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男友達—–6 GAME

「ん・・んッ・・・」

 

聞きたくも無い自分の声が
音の無い静かな部屋に響く。

 

「ぁッ・・ん---」
晋「・・・逃げるな。」

 

逃れようと顔を動かすと、髪を弄んでいた手が頭に滑り込み抵抗を押さえこんでくる。

執拗に舌が絡み付き
少しでも抵抗しようもんなら強引に吸われ
従順にしてれば優しく、甘く撫でられる。

 

「--ッ・・・し・・・・んっ」
晋「ん。」

 

どのくらい時間が経った?

 

1分、10分・・・
それとももっと?

 

いつの間にかソファーに座ってて
晋は目の前に膝立ち、私の体を挟むように背もたれに手を置いてる。

私はというと・・・

とりあえず動けないとでも言っておこうか。

手にも足にも全く力が入らない。
まぁ、完全なる腑抜け状態とも言う。

 

晋「まだ抵抗すんのか?」
「---ッ・・」
晋「力、入んねぇくせに。」
「・・・・んッ・・」

 

もちろん危機感を手放してはいない。
ヤツから離れようと胸を押し返している。

だが・・・失笑したいくらい力が入らない。

その様子が可笑しいんだろう。
時々唇を離してからかってくる。

非常にムカつくが残念なことに言い返す余裕も気力も残っていない。

 

晋「お前、キスに感じるんだな・・・」

「んッ-----」

 

(や、やっぱり・・・・・?)

 

変態にも指摘されたが・・・
どうやら私は、リアルにキスに弱いらしい。

なんとなく分かってはいたが改めて言わせてもらおう。

 

私は、キスが好きだ!

 

そしてもう一つ言わせてもらう。

 

晋のキスは、凶器だ!

 

「---んっ・・ん・・・」

 

熱っぽい舌が何度も、何度も絡まってくる。

荒々しいと思ったら実は柔らかくて

そしてとことん

 

---優しい

 

「ん---ッぁ・・・」

 

(・・・・・・なぜだ。)

 

辰巳さんも晋も、イケメン共はキスが上手いのか?
それって常識?

だってこの前会ったばかりのヤローだぞ。

好きでも無い上に無理矢理奪われて、本当なら嫌で嫌で堪らないはずなのに・・・

 

(・・・・・・・・どうしよう。)

 

これは・・・
これは、まずい

 

体の芯がとろけてしまいそうで

 

ヤバいくらい

 

気持チ イイ

 

「---ん・・・・・・ッ」

 

夢中になって

 

何も考えられなくなる・・・

 

「ぁ--------」

 

チュッと小さくリップ音を立てて、唇の感触が消えた。

 

(-----?)

 

なんだ・・・なんで?

どこに行くんだよ。
まだ足りないのに・・・

 

(待てよ・・・コラ----)

 

心の中で悪態をつく。

もう・・・終わりなのか?
どう考えても中途半端だろ。

まだ、もっと、味わっていたいのに---

 

ぼんやり目を開くと遠ざかっていくヤツの服が見える。

思わず手を伸ばして、胸倉を掴んだ。

 

(まぶ・・・し・・・・)

 

随分長く目を閉じてたからか。
部屋の蛍光灯がすっげぇ眩しい。

 

晋「透。」
「ん・・・んー」

 

少しずつ視界がはっきりしてくる。

掴み上げた黒いシャツ
チラリと見える鎖骨

そして形の整った、濡れた唇・・・

 

(------うわ・・・)

 

紅い舌がゆっくり下唇を舐めた。

そいつは不意打ちだろ。
無駄にエロい仕種にうっかり目を奪われてしまった。

 

晋「足りないのか?」
「・・・ぇ?」

 

一瞬、どこから声が聞こえたか分からなかった。

しかし次の瞬間・・・
風呂上りのお色気野獣とバッチリ目が合った。

 

「・・・・・・・・。」
晋「・・・・・・・・。」

 

まぁ・・・ハッとしたね。

そして、すぐさま胸倉を解放した。

 

(・・・・・・・・・・・。)

 

え、えぇーーと・・・

 

私は今、何を考えてた?

 

①もう終わり?
②まだ味わっていたい?
③濡れた唇がエロいじゃないかー??

 

(・・・・・・・・・。)

 

いやいやいやいやそんなバカな。

 

ボーっと霧が掛かっていた頭の中が急速に冷め上がる。

我に返ってみると---
なんとも恥ずかしい大失態。

 

「・・・・な・・んだよ。」
晋「・・・・・・・・・。」

 

じーっと見てくるもんで喋りかけてみた。

が、返事が返ってこない。
何か言えよすっげぇ恥ずかしいじゃないか。

 

「なんだよ・・・その顔・・・」
晋「・・・・・・・・・。」

 

まるで新オモチャを手にしたガキのように無邪気チックな顔で覗き込んでくる。

そんな顔で見るな。
寒気がする。

 

晋「そそられた。」
「・・・・・・・は?」

 

な、なんだって?

 

晋「さっきの顔、そそられた。」
「そ・・・そそ---?そそそんな感想はいらん!」

 

なんて恥ずかしい感想を述べやがるんだ。

そういうのは心にしまっとけよ。
そっとしといてくれよ!

 

晋「お前・・・やっぱり女なんだな。」
「・・・そうですけど。」

 

・・・今更かよ。

 

晋「なぁ、透。」
「な、なんだよ!その前にいい加減離れろ!」
晋「透。」
「だからなんだ---」

 

 

 

晋「すっげぇ抱きてェ・・・」
「ぇ------」

 

 

 

耳に唇を寄せて囁いてくる。

 

さっきよりも低くて掠れた声。

 

ゾクッとした。

 

膝から太股に向かって大きな手がなぞり上がってくる。

直接肌に感じる体温が心地良くて、無意識に体が跳ねた。

 

(いやいや待てェェい!!)

 

さぁさっきの続き~ってか?
次のステップに突入ってことか!?

悪いがそういうわけにはいかないんだよ!

 

「おいコラ触るな!」
晋「嫌だ。」
「ちょちょちょっと待て!」

 

思い切りヤツの手を掴んだ。

頼むから待て。
この流れはまずい、非常にまずい。

 

晋「・・・・んだよ。」

 

ほら見ろ。
俺様の機嫌が一瞬で極悪に---

 

いやいやそっちじゃなくて!

 

これ以上行為を続行させるわけにはいかん!!

キスは確かに良かった気持ちよかった。

だがこのまま「ヤっちまおうぜー」なんて展開はNGだ。

ていうかムリムリ有り得ない。

 

「コ、コラ待てって!」
晋「嫌だ。」

 

キスが良かったのは認める。
メロメロになったのも認める。

---なんだかんだ言って喜んでんじゃねぇか

そう思われても仕方ないってことも認める。

だが待て違うんだ!

 

「やややめろっ!」
晋「なんでだよ。お前ももっと欲しいんだろ?」
「えっ!」

 

(違う違う誤解だー!)

 

まずいぞヤバいぞ。
さっさと誤解を解かねば。

ちゅーは良かった。

だがエロい世界に突入するつもりは無い。
大人の関係に足を突っ込むつもりもさらさら無い!!

 

「し、晋っ!ちょっと待て---」
晋「無理。」
「話を---」
晋「黙ってろ。」

 

耳元に押し付けられる唇。

大きな手がヒップをなぞり、そして前に滑り込もうと動き出す。

足を閉じようと力を入れるがヤツの体が邪魔で閉じきれない。

だったら!と腕を掴んだ手に力を込めるが、これまた嘲笑うようにピクリとも動かない---

 

ていうか待てェェェい!

 

なんだこれなんだこれ!
なんで手の感触を直に感じるんだ!

恐る恐る自分の下半身に手を伸ばしてみる。

 

(・・・・・・・・・。)

 

ぅう嘘だろ!
やっぱりパンツ履いてない!!

 

(ぉぉおいおいおいおいーー!!)

 

キスされてる時か!?

パンツ喪失に気付かないほど腑抜け状態だったってのか私は!?
どんだけキスにメロメロになってんだよ!!

自分の不甲斐なさに眩暈がする。

 

もはや背水の陣。

どうすんのこれ。
どうすりゃいいの---

 

「やっ---やめろ!待てっ!!」
晋「待たねぇ。」

 

ヤツの手は内股を優しく滑りゴールに向かって確実に距離を詰めてくる。

10cm、5cm・・・

このままだと

このままだと---

 

 

 

「------ちょ・・・ちょっと待てェェい!!」

晋「・・・・うるせぇ。」

 

 

 

それはもう

 

隣人に聞こえるかってくらいでかい声で叫んだ。