SAKURA∞SAKU first

異常—–4 SAKURA∞SAKU first

「ゃ・・・・・嫌・・・っ!」

 

抱き寄せた有希の体は
想像以上に震えていた。

その上ろくに力の入らない手で必死に俺を押し返そうとする。

 

(なんでこんなに震えてんだよ・・・・)

 

寒い時のそれとは全く違う。

人間ってこんなに震えるものなのか?
そう思わせる程こいつは震えてて
そして、何かに怯えてる。

 

「落ち着け・・・・もう大丈夫だ。」

 

---何かに怯えてる

それは分かってるのにどうすることも出来ない。

助けてやりたいのに安心させてやりたいのに
なんて声を掛けたらいいのかすら分からない。

 

だが、もう泣かないでくれ。

 

(有希・・・)

 

震えの治まらない小さな体を抱きしめて

 

ただひたすら

 

---守る

 

そう思った。

 

 

どれくらいそうしていたのか・・・

 

 

やっと落ち着いたのか
それとも疲れしまったのか

どっちかは分からないが抵抗が緩んできた。

震えは大分治まって
呼吸も落ち着いてきたと思う。

 

(・・・・・・。)

 

力いっぱい抱きしめていた腕を少し緩め髪を撫でてみる。

・・・どうやら抵抗は無い。

 

 

「-----真、樹・・・?」

「!」

 

 

(俺の名前・・・?)

 

思わずピクッと反応してしまった。

すぐにでも顔を見たかったが・・・
だがもう少し落ち着かせてからの方がいいと思った。

 

「あぁ、そうだ。落ち着いたか?」

 

安心しろの意味を込めて頭をぽんと撫でてやる。

 

「う、うん・・・・ごめん・・」
「・・・謝らなくていい。」

 

さっきとは違いちゃんと返って来る返事。
どうやら会話できるくらいには回復したらしい。

とりあえず顔を見ようとゆっくり腕の力を緩めた。

 

(お、おいおい・・・)

 

俺を見上げる有希の顔は真っ青。

頬に残る涙の跡が痛々しくて
思わず目を逸らしたくなった。

 

有「私・・・あ・・ごめ、ん・・・皆・・」

 

周りを確認するようにうろうろと視線を泳がせる有希。

そして集まる住人共を見て驚いたのか
青い顔を更に青くして焦り出した。

 

孝「・・・謝るな。」
要「そうだよ。・・・何か温かいものでも飲むか?落ち着くぞ。」

 

これはどういう反応なのか。

有希は明らかに2人の言葉に動揺し
力無く俺の服の裾を握ってきた。

 

有「う・・・ううん。お風呂・・・お風呂に入ってくる。」
「「「・・・・・・。」」」
有「あ・・・・ご飯まだだったよね。先に食べててね・・・」
「「「・・・・・・。」」」

 

フラフラと立ち上がりゆっくりと階段をおりていく。
今にももつれそうな足元が危なっかしい。

 

 

「・・・・・大丈夫か?」

 

 

---大丈夫なわけない。

そんなことは分かってる。
だがそれしか言葉が見つからない。

 

有「----もう、平気だよ。」

 

軽く振り向く有希。

そして無理矢理作った笑顔で強がってみせた。

 

結局、有希は何を説明することなく、ヨロヨロと風呂場に消えていった。

 

 

「「「 -------------。 」」」

 

 

再び沈黙が訪れる。

 

---あれは一体なんだったんだ?

 

恐らく誰もが聞きたい当然の疑問。
しかし口に出すヤツはいない。

それぞれ、しばらく動けない時間が流れた。

 

---知られたくねぇんだ

 

ふと、前に有希が言った言葉を思い出した。

 

(知られたくない、か・・・)

 

勝手な勘だが・・・
さっきのことが夢と関係してるのは間違いない、と思う。

尋常じゃないあの震えも
我を忘れるほどの怯え方も

全て夢に関係してると思う。

 

じゃああいつが見たくない夢って

 

その夢の内容って--

 

 

(やめろ・・・・・)

 

 

悪い予想をしてしまいそうで思考を止めた。
勝手な思い込みはいい結果を生まない。

 

 

PIPIPIPIPIPI---

 

 

突然、誰かの携帯が鳴った。

 

累「・・・違うよ。」
純「俺も・・・」

 

お互い「お前のじゃねェの」と顔を見合わせる。

だが次の瞬間、何かに気付いたように孝が2階へ走り出した。

 

(-----あ・・)

 

多分・・・
いや、絶対そうだ。

 

 

孝「遼!」

 

 

有希の部屋から孝の声。

やはり、遼からの電話だ。

 

(孝の奴・・・)

 

気付くの早すぎだろ。

 

「俺も行ってくる。だが誰か残っとけよ。あいつが風呂から上がった時、誰もいない状況にするんじゃねぇ。」
累「俺は行く。」

 

累はそう言うとさっさと2階へ上がっていった。

 

純「俺、残るから。」
要「俺もいる。色々聞いてきて。」
「・・・あぁ。」

 

こういう時、落ち着いたヤローがいると助かる。

 

とりあえず、俺も2階へ向かった。

 

 

 

 

 

-----異常(完)