秘密

秘密—5 SAKURA∞SAKU first

「では、失礼します。」
「あ!待ってください杉浦さん!あの件、考えてもらえましたか?」
「・・・すみません。仕事もありますし、実は人前に出るのが苦手なもので。」
「またまたぁ!ご冗談を!」
「冗談に見えますか?」
「・・・き、気が変わったら宜しくお願いします!」
「はい、それでは。」
「き、気をつけて!」

(・・・・・・・疲れた。)

 

現在、MIKAMIミュージック。

仕事は順調だったが疲労感が半端じゃない。
とにかくスカウトが煩いのだ。

 

『あ!杉浦さん!』
『本当だぁ!』
「・・・・・・。」

 

今度はなんだ。
出来ればそっとしておいてもらいたい。

 

『今日は終わったんですかぁ?』
『私達、来週からライブなんです!見に来てくれませんか?』
「来週は---無理。」
『『そんなぁ!!』』

 

こいつら誰だ。
知り合い---じゃねぇよな。

 

『ちょっとだけでもいいんで!』
『お願いしまぁす!』

 

(そういえば・・・)

 

ふと時計を見ると5時。

着信もメールも入っていないが・・・
有希はまだ終わらねぇのか?

 

(・・・・・・。)

 

まさか・・・
なんかあったんじゃねぇだろうな。

 

(--------チッ。)

 

仕方ねぇ、電話してみるか。

 

と思ったら

 

電話がかかってきた。

 

有『あ、真樹?』
「何かあったのか。」
有『・・・終わったんだよ。』

 

今終わりか?
ずいぶん遅かったんだな。

ていうか声に元気がねぇが・・・
やはり何かあったのか?

 

 『3日あるんで一日くらい来て下さいよぉ!』
 『杉浦さぁん!』

「そうか。ご苦労だったな。」
有『お前は?まだ仕事?』
「ちょうど終わったところだ。」
有『そ。お疲れさん。』

 

(おいおい・・・)

 

なんだよその覇気のない声は。
気になる・・・
すっげぇ気になる。

 

(・・・・・・・・・・・・。)

 

・・・仕方ねぇ。

 

迎えに行ってやるか。

 

『杉浦さんの為に歌っちゃうかも!』
『やだぁ!照れるぅ!』

「どこにいる。」
有『え、まだ出先。』
「迎えに行く。」
有『は?』

 

さて。
そうと決まればさっさと行くか。

 

(エレベーターは・・・あっちか。)

 

『杉浦さん聞いてるぅ?』
『無視したらやだぁ!』

有『お気になさらずにどうぞ。女の子と一緒なんだろ?私のことは気にせず帝王になってこい』
「あぁ?何言ってんだお前は。」
有『もぉ真樹君ったら!後ろで女子の声が聞こえてるっすよー。今夜はうはうはですなぁ--』

 

(うはうはってなんだよ。)

 

『そうだ!仕事終わったんですよね?今夜一緒に食事に行きましょうよー!』
『行きたーい!』

「----ったくしつけぇな、お前ら。」

「えっ・・・?」

 

(ん・・・?)

 

今のはなんだ?

 

随分近くで声が聞こえなかったか?

 

(・・・?)

 

周りを見回すが誰もいない。

 

(気のせいか?)

 

煩かった女達は俺の言葉に驚いたのか見事に固まっている。

ていうか電話中だぞ。
邪魔するんじゃねぇよ。

 

「悪ぃ、有希。」

『有希!?誰ですかそれ!』
『杉浦さん、彼女いるんですかっ!?』

 

何故か復活した女共。
やはり煩い。

それよりなんで返事がねぇんだよ。
思わず切っちまったかと思ったがディスプレイには『通話中』の表示。

 

「おい有希、返事しろ。」

『ちょっと杉浦さんっ!聞いてるんですかぁ!?』

 

やはり返事が無い。
そして何も聞こえない。

一体なにが起こってる?
意味が分からない。

 

『あっ!有希さん!!良かったーまだ帰ってなくて!』

 

不意に、男の声が廊下に響いた。

 

 

(有希・・・?)

 

 

名前に反応して無意識に声の方を見る。
どうやら角の向こうから聞こえたみてぇだな。

もちろんあいつだとは思わなかった。
あんまり珍しい名前でもねぇからな。

だが・・・・

 

『さっきは本当にすみませんでした。でもやっぱり諦め切れなくて。お願いです有希さん。もう一度考え直してくれませんか!?』
「い、いや!あの!」

 

(・・・・・・・・・。)

 

小声で答えたつもりなんだろうが丸聞こえだ。
おまけに「しー!!」と制止する声まで聞こえた。

 

(・・・なんでこんなとこにいるんだよ。)

 

 

「・・・・・"有希"。」

 

 

名前を呼ぶと角の向こうから息を呑む音。
ついでに焦った空気まで流れてきた。

 

そしてそにいたのは

 

やっぱり有希だった。