有「あ、あの・・・離れてください。」
「却下。」
この感情はなんなんだ?
ウイルス・・・じゃねぇよな。
有「却下ってお前・・・意味分かんねぇ。」
「恋人だろ。今日一日。」
有「・・・それはパーティーの間だけだろうが。」
「0時まで約3時間。お前は俺の女だ。」
有「・・・・・・。」
じゃぁ一体なんだ?
有「と、とにかく離れろ。」
「このままがいい。」
有「い、いやいや何言って--」
「有希。」
有「な、なんだ?」
「お前が言ったこと。なかなか嬉しかった。」
有「・・・・・そうかよ。」
(・・・・・・・・・まただ。)
俺の言葉にピクリと反応を示す有希。
そして少し照れたような、バツの悪そう声色で返事を返す。
そんなこいつを可愛いと思う自分がいる。
出来ればもっと見たいと思ってしまう。
「お前、なんでこんなに細ぇんだ?」
有「は?え、そうっすか?」
---触れていたい
欲求に任せて腕に少し力を入れると余計に華奢な線が顕わになる。
どんなに男らしくても、やっぱりこいつは『女』だ。
「お前、女なんだな。」
有「-----そうですけど。」
口も悪い、色気も無い、暴力も振るう…
そんな男勝りなこいつに「女」を意識してる自分。
正直言ってそんな自分は認めたくねぇ。
出来ることなら目を覚ませと喝を入れてやりたい。
だがどんなに理屈を並べても---
本能は従順だ。
有「そんなことよりいい加減--」
「放さねぇ。」
有「・・・・・・・。」
なぜなら-----口が勝手に動きやがる。
有「孝、頼むから---」
俺はこいつを女として見ていて
そしてこいつが欲しい
そう認識してるのは間違いない。
「放したくねぇんだ。」
有「・・・・・え?」
(・・・・・・・バッカじゃねぇの。)
自分から求めるなんて有り得ない。
こんなこと、今まで一度も無かったってのに--
有「こ、孝様・・・?」
「・・・どうなってんだよ、俺は。」
有「へ?」
でももう
この気持ちを抑えるのは
無理だ。
「お前が欲しくてたまんねぇ・・・」
腕の中にいる有希の体が
少し跳ねた。
(マジで・・・・・・有り得ねぇ。)
この感情をなんと呼べばいいのか
それは分かんねぇ。
だが
欲しくて欲しくてたまんねぇのだけは
痛い程理解できる。
有「ここっ孝様!!そろそろお時間では!?院長も工藤も心配してるかと!!」
「なぁ・・・」
有「なな、なんすかっ!!?」
「このドレス。帰ってから脱がせていいか?」
有「・・・・・・・・・・。」
(------------しまった。)
有「・・・死ね。」
「---っ!」
見事な一撃が腹に決まった。
なかなか辛い。
(この求め方はアウトだったな・・・)
腕からすり抜けた有希。
怒りのオーラを垂れ流しながら会場へ向かって歩いていく。
「怒るなよ。」
有「けっ!ふざけんな!」
ビームでも飛ばすつもりか。
凄まじく鋭い目付きで睨んできやがった。
ま、そんな格好で睨まれても怖くもなんともないけどな。
(・・・はぁ。)
なんか------疲れた。
『有希さん!』
会場に戻ると院長のおっさんが近づいてきた。
誰に何を聞いたのか知らないが有希をいたく気に入った様子。
裏腹にバシバシ背中を叩かれて迷惑そうな顔をする有希。
どうでもいいが有希に白々しく触るのは止めろ。
『じゃあ有希さん!今度ゆっくり食事でも--』
「こいつはダメだ。別の女を誘え。」
『え!ちょ---孝くーん!』
「行くぞ。」
有「あ、あぁ・・・」
一人盛り上がる院長を置いて
げっそりする有希の手を掴み会場を出た。
それにしても
この不可思議な感情は、一体なんだ?
車に乗っている間考えてはみたが思いつかなかった。
---恋愛感情
ふと頭を過ぎる。
(恋愛ってお前・・・)
「好き」とか「惚れる」ってことか?
(いやいや、さすがにそれはねぇよ。)
有「お前のせいだからな。」
「・・・・・。」
有「おい、聞いてんのか?」
「・・・・・。」
考えはまとまることなく
桜館へ帰宅した。
・・・・・名付けるとすれば(完)