(何に対して謝ってんだ・・・?)
縮まる姿はまだまだ見ていたい。
だがそろそろしつこい。
謝る理由も分かんねぇし…
有「適当に受け流そうと思ったんだけどよ。どうしても我慢できなかったんだ。」
「・・・・・。」
有「だってお前・・・卑怯なヤツにお前を最低呼ばわりされて黙ってる方がおかしいだろ?」
「・・・・・。」
(そのことか・・・)
実は後ろで全部聞いていたなんて思ってもいないんだろう。
俯き加減で目だけを俺に向ける有希。
だがその目線は止めろ。
心臓に悪い。
有「お前は何考えてるか分からねぇ奴だけどしれっと優しいし・・・俺様なだけあって心は男らしいもんな。」
「・・・・・。」
有「女遊びは激しいのかもしれねぇけどよ。卑怯な真似するような奴じゃねぇし、どっちかって言うとストレートだもんな。」
「・・・・・。」
それにしても・・・
再度聞いてもすっげぇ嬉しいというか。
ていうかお前、本人を前によくそんな恥ずかしいことが--
(-----っ・・!)
今の今まで小さくなってたってのに
何を思ったのか、急にふんぞりかえる有希。
そして、まるで"誉めてやってんだぞ!"とでも言うように
ニカッと満面の笑みを浮かべやがった。
---ドクンッ
その裏のない笑顔に
また鼓動が狂い出した。
(なんなんだ・・・・)
なんなんだ
この可愛い生き物は
有「それを工藤め・・・あいつがどんだけお前を知ってんだって話だよな!なんも知らねぇくせにペラペラと嘘並べやがって!やだ!なんかムカついてきた!!」
可愛くて
愛しくて
堪らない
(もう、ダメだ・・・)
我慢できねぇ。
「有希。」
有「ん?」
今日初めて
狂った思考が一つになった。
≪こいつが欲しい≫
思考が一つに。
そうなれば体も自然に動く。
「ん・・・・っ!」
警戒の壁も無いこいつの唇を貪るように奪う。
(抵抗すんな・・・)
押し返されたくない
拒否されたくない
(俺を求めろ・・・・)
もっと深く繋がりたくて口を開かせる。
そして捕まるまいと必死に逃げる舌を執拗に絡め取って・・・
絶対、逃がさねぇ。
「ぁ・・・っ!」
(・・・・・っ・・)
時々漏れる小さな吐息。
その可愛らしい声に耳からも煽られて、背中がゾクリと震えた。
---もっともっと近づきたい
---もっとこいつを感じたい
感じたことのない激しい感情がグツグツと湧き上がってくる。
(や・・・・べぇ・・・)
---唇だけじゃ足りない
その感情に任せて有希の体を抱き上げた。
どうやら足に力が入らないらしい。
細い腰を引き寄せて支えた。
(止まらねぇ・・・)
前から感じていたことだが
こいつとはキスの相性がいい。
だがなぜだ・・・今日は特に気持ちよく感じてしまう。
「--こ----う・・っ!」
(-----!)
苦しそうな声で呼ばれてハッとする。
気付けば体の力がほとんど抜けてしまっている有希。
そういえばこいつ・・・
キスの間に息が出来ない不器用な奴だったな。
でも
(ダメだ、まだ離れたくねぇ・・・)
全然・・・
全然足りねぇんだよ。
---一日一回のキス
以前車の中で命令した。
だがこいつが守るはずもねぇ。
捕まえてもスルリと逃げるし
ついでに住人共には邪魔されるし
そのせいで「キスしてぇ」だの「触りてぇ」だの欲求がどんどんでかくなる。
完全に悪循環ってヤツだ。
(くそ----)
イライラと愛しさを
一気にぶつけてしまいたくなる
たとえ押さえつけてでも
こいつを自分のモノにしてしまいたい--
---ポンポン
「・・・・・・。」
有希が肩を叩いた。
おそらくリアルに限界なんだろう。
(・・・仕方ねぇ。)
まだまだ足りなかったが
仕方なく解放してやった。
有「・・・・ッ・・・は・・ぁっ!!」
胸に崩れ落ち空気を貪る有希。
やはり相当やばかったようだ。
有「はぁっ・・・・は・・・ぁっ・・お前・・・なぁ・・・・ッ!」
見上げてくる目には涙が溜まってる。
なんだよそれ勘弁してくれ。
涙目は反則だろ。
(はぁ・・・)
可愛い、と思う
愛しい、と思う
こいつに対し、自分がそんな感情を抱いているということは認めよう。
じゃぁなんだ。
このわけの分からない感情は一体なんなんだ。
名づけるとすれば---
有「くそ!いい加減離れろ!!」
「・・・・・。」
何とか力が戻ってきたのか
弱々しい力で押し返してくる有希。
だが---
まだ、放してやらない。