名付けるとすれば

名づけるとすればーーー2 SAKURA∞SAKU first

 

(・・・・・・・・・・・え。)

 

ドアを開けたところまでは良かった。

だがすぐに後悔した。
無理してコーヒー飲んでれば良かったと思った。

 

なぜなら---一体これはなんだ。

 

目の前に・・・

 

----え?

 

有「ったくお前なぁ・・・さっき言ったばかりだろ?部屋に入るときはノックしろ。マジで学習しねぇ奴だな。」

「・・・・・・・。」

 

ちょ、ちょっと待て。
お前・・・本当に有希か?

 

ウソだろ

 

 

すっげー、綺麗・・・

 

 

(・・・やばい。)

 

 

目の前に君臨する美女から目が離せねェ。

 

有「そういえば孝も着替えたんだな。お前も似合ってるぞ。ま、私には負けるけど。」
「・・・・・・。」

 

なんなんだよこのギャップ。
こんなに変わるなんて反則だろ。

 

有「お、おいどうしたんだよ。どっか痛むのか?」

 

こいつ、こんなにイイ女だったのか?

 

マジで
マジでヤバい

 

体が動かねぇ・・・

 

有「なんだ孝様。もしかして見惚れちゃってんのか?」
孝「-------------。」

有「そりゃぁ仕方ねぇ。お兄さんの協力でいつもの5倍は可愛くなっちゃったからなぁ。な?お前もそう思うだろ?」

 

 

(・・・・・・・・・・。)

 

 

「・・・馬子にも衣装だな。」
有「・・・取り消せ。」

 

 

お前が取り消せ。

 

(チッ・・・)

 

一気に現実に引き戻されちまったじゃねぇか。
せっかくの気分が台無しだ。

 

『ふふっ。やっぱり特別みたいですね。』
有「はぁ?どの辺がですか。」

 

意味有り気な目で見てくる優男。

ていうか特別ってなんだ。
意味分かんねぇ。

 

『見とれてらしたんでしょう?五十嵐様』
有「あ、やっぱり?」

 

ふざけんな。
さっきのは・・・アレだ。
ただの立ちくらみだ。

 

「時間がない。行くぞ。」

 

とりあえず無視。
これ以上ザレゴトに付き合ってる暇はねぇ。

 

有「で、どこに行くんだよ。」
「車の中で話す。」
有「おまっ・・・さっきは用意が済んだらって・・・・・!」

 

気持ちは分かる。
だが今は時間が先だ。

 

「次は絶対だ。」
有「・・・・・・・・・約束しろよ。」

 

下から睨みつけてくる有希。
悪いがその格好で睨んでも全然怖くない。

むしろ・・・

 

そそられる

 

 

なんてバカなことを考えてる場合じゃない。

 

 

「あぁ。ほら、行くぞ。」

 

無意識に手を差し出した。
ヒール履いてるからな。

それに女のエスコートは男として当たり前だろ?

なのに

 

(え・・・)

 

明らかに表情を変える有希。

俺がエスコート?なんて思ってるんだろう。
相変わらず失礼なヤツめ。

 

だがその戸惑った表情が

 

バカみたいに可愛い。

 

(お、おい。そんな顔やめろ。)

 

有「ど、ども。」

 

戸惑いながら手を重ねてくる有希。
重なった手は少しひんやりしていて、思わず引き寄せてしまいそうになった。

 

歩幅を合わせてゆっくり進む。

さすがにヒールは不慣れなようで歩く速度が遅い。

 

車までの距離を異常に遠く感じたが
むしろ着かなければいいと思った。

 

この手を・・・

 

放したくない。

 

(参った・・・)

 

一体俺は何を考えてる?
自分の感情に理解が追いつかない。

 

有「あ、ありがと。」

 

釈然としないまま、車に乗った。

とにかく・・・
今は目的地に向かうのが最優先だ。

 

有「そうだ、孝。ドレスっていくらだったんだよ。なんのつもりか知らねぇが着てきちゃったもんは仕方ねぇ。これは自分で買うから。」
「・・・お前はやっぱりバカだな。」
有「・・・てめぇには言われたくねぇよ。」

 

有希のこういうところは今度説教だ。

服を着せておいて自分で払うだと?
恥をかかせる気か。

 

「買ってやりたいから買ったんだ。黙って受け取っとけ。」
有「へ・・・」

 

(・・・・・ん?)

 

買ってやりたい?

選ぶ言葉を間違えてないか?
今のだとこいつにプレゼントしたかったってことになるじゃねぇか。

 

(動揺してる・・・?)

 

俺が?動揺?

いやいやそれはない。
あるはずがない。

 

 

あぁ・・・でも---

 

 

今日の俺はもうダメだ。
自分でも訳が分からねぇ上に

 

制御不可能だ。

 

「それと・・・・・」
有「ん?」

 

 

 

「綺麗だ。」

 

 

 

誰か助けてくれ。
俺は一体どうなっちまったんだ。

理解不能な自分の言動に頭を抱える俺
俺の言葉に反応する有希を「可愛い」と思う俺

反する感情が渦を巻いて全くコントロールが効かない。

 

(こいつを・・・「可愛い」だと?)

 

マジでどうかしてる。

やはり俺は病気なのか?

ウイルス?
有希ウイルスなのか?

そんなものに感染したかと思うと寒気がする・・・

 

有「あ、ありがとう。」

 

 

ドクンッ・・・!

 

 

(・・・・・は?)

 

なんだ今のは。
とうとう鼓動までイカレやがったか。

 

 

(・・・・・・・・・重症だ。)