許せ!

許せ!—6 SAKURA∞SAKU first

「・・・・・・・。」

 

はっきり言おう。

 

非常につまらない。

 

孝「つまらねぇな。」

 

孝も同じ気持ちらしい。
不機嫌そうに呟き溜め息をつく。

とにかく

乾杯までが長いんだよ。

 

「シャンパンの炭酸、抜けちまったんじゃねぇか?」
孝「全くだ。」

 

副院長だか知らねぇが誰も聞いてねぇってことに気付いてくれ。
腹も気力もそろそろ限界だ。

 

『それでは・・・・・乾杯!』

 

やっと!やっと飲める!

ウェルカムアルコール!!
グラスを合わせるといい音が鳴った。

 

「あ。良かった、抜けてなくて。」
孝「そうだな。」

 

手始めに食事。

その後、雑談会と称したゴマ摺り合いが始まるらしいが・・・
朝から何も食べてないのでとりあえず食事を楽しもうと思う。

 

(やば。めっちゃ美味いっすよ。)

 

ふわふわのパン
ふわふわの肉
ふわふわの、なんだコレ

さすがお医者様。
食べる物が違うんすね。

 

 

(いやいやその前に・・・)

 

 

ちょっと待ってはくれないだろうか。

 

現在我々が座っているでかい丸テーブル。
10人ほど座っているだろうか?

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。

 

気になるのはその面子。
座ってるのは---男ばっかり。

 

(なんでだよ・・・)

 

初めに席に案内された時から気になってたんだが・・・

女子が、いなくね?

皆さん平等に"いい加減ちゃんとした女を"って言われてんじゃないわけ?

男共の中に女一人の自分。
激しく浮いてるような気がするのは勘違いじゃないと思う。

 

(くそ・・・こうなったら食いまくってやる。)

 

右隣に座る孝。
そわそわする私に気付くはずもなく隣に座る男性と何か話してる。

チッ、無視だこんな奴。
とりあえず胃袋を満たすことに専念しよう。

 

 

『孝さんの彼女・・・いや婚約者さんかな。』
「え?えぇ。まぁ。」

 

 

突然、左隣からひそひそ声。
チラリと目を向けると孝と同じくらいの男子。

 

早速出番らしい。

 

素早く頭を切り替え"そうですよ"と答えてやった。

 

「えと、僕は孝さんの---」

 

この男子、孝と同年かつ同期らしい。
ていうかなぜ "さん"呼び?

 

『孝さん、本命見つけたんだぁ。あ、ごめんね。変なこと言って。パーティーに初めて女の子連れてきたからさ。さっきからどういうことだって問い合わせが多くて。』

「・・・・・・・え。」

 

ひらひらと携帯のメールを見せる同期。

ほんとだ、メールいっぱい来てるね。
どうやらお医者さん達は噂話が好きらしい。

 

『孝さんってあのルックスでしょ?それに成績優秀かつ期待のホープだし!一体どうやって落としたの??』

「え・・・」

 

 

孝が?
ホープ?

え、ホープ?

 

疑いの目を向けると首を傾げる同期。
どうやら孝のホープ説を訂正する気はないらしい。

 

(あはは、信じらんねぇ・・・)

 

どうやら孝様は優秀なお医者様だったらしい。
想像していた不憫な職場環境がガラガラと崩れていった。

 

『ねぇねぇ教えてよ。どうやって落としたの?』
「え?あ、あぁ・・・」

 

どうやって落とした---か。

さてさて、なんて答えるか。

 

偽装とはいえ今は恋人同士。
約束もあるし、ここは上手く立ち回らねばなるまい。

 

 

「私はずっと好きだったんです。落とせたのかは分からないけど・・・お前は俺の、って熱い言葉を貰えたから。それを信じただけ。」

 

 

孝を立てるのは忘れずに
軽い笑みと一緒に答えた。

どうだ。

何点くれる!?

 

 

(え・・・・・?)

 

 

なぜか目を見開く同期。

 

なんだよその反応・・・

しくじった?
何まずかったか?

 

『俺の、って・・・もしかして"俺の女だ"とか言われたってこと?孝さんから?』
「そう・・・ですけど。」

 

なんだそんなことかよ。
ビックリさせんなよ。

それなら本者の私も言われたことがあるぞ。

誰にでも言ってんじゃねぇの?

 

『信じらんね。孝さん本気なんだなぁ。』
「・・・・・・・?」
『あ、ごめんね。さっきから失礼なこと言ってるね。』
「いえ・・・」

 

全然

 

意味分かんないんすけど。

 

 

「おい有希、行くぞ。」

「え?う、うん。」

 

 

突然、腕を掴まれた。

もちろん、犯人は俺様孝様。

 

(えー、まだ飯食ってないんすけど。)

 

でもまぁ仕方が無い。

 

しぶしぶ立ち上がり同期に軽く手を振り

 

腕を掴まれたまま孝に着いていった。