「・・・・・・・。」
はっきり言おう。
非常につまらない。
孝「つまらねぇな。」
孝も同じ気持ちらしい。
不機嫌そうに呟き溜め息をつく。
とにかく
乾杯までが長いんだよ。
「シャンパンの炭酸、抜けちまったんじゃねぇか?」
孝「全くだ。」
副院長だか知らねぇが誰も聞いてねぇってことに気付いてくれ。
腹も気力もそろそろ限界だ。
『それでは・・・・・乾杯!』
やっと!やっと飲める!
ウェルカムアルコール!!
グラスを合わせるといい音が鳴った。
「あ。良かった、抜けてなくて。」
孝「そうだな。」
手始めに食事。
その後、雑談会と称したゴマ摺り合いが始まるらしいが・・・
朝から何も食べてないのでとりあえず食事を楽しもうと思う。
(やば。めっちゃ美味いっすよ。)
ふわふわのパン
ふわふわの肉
ふわふわの、なんだコレ
さすがお医者様。
食べる物が違うんすね。
(いやいやその前に・・・)
ちょっと待ってはくれないだろうか。
現在我々が座っているでかい丸テーブル。
10人ほど座っているだろうか?
まぁ、そんなことはどうでもいい。
気になるのはその面子。
座ってるのは---男ばっかり。
(なんでだよ・・・)
初めに席に案内された時から気になってたんだが・・・
女子が、いなくね?
皆さん平等に"いい加減ちゃんとした女を"って言われてんじゃないわけ?
男共の中に女一人の自分。
激しく浮いてるような気がするのは勘違いじゃないと思う。
(くそ・・・こうなったら食いまくってやる。)
右隣に座る孝。
そわそわする私に気付くはずもなく隣に座る男性と何か話してる。
チッ、無視だこんな奴。
とりあえず胃袋を満たすことに専念しよう。
『孝さんの彼女・・・いや婚約者さんかな。』
「え?えぇ。まぁ。」
突然、左隣からひそひそ声。
チラリと目を向けると孝と同じくらいの男子。
早速出番らしい。
素早く頭を切り替え"そうですよ"と答えてやった。
「えと、僕は孝さんの---」
この男子、孝と同年かつ同期らしい。
ていうかなぜ "さん"呼び?
『孝さん、本命見つけたんだぁ。あ、ごめんね。変なこと言って。パーティーに初めて女の子連れてきたからさ。さっきからどういうことだって問い合わせが多くて。』
「・・・・・・・え。」
ひらひらと携帯のメールを見せる同期。
ほんとだ、メールいっぱい来てるね。
どうやらお医者さん達は噂話が好きらしい。
『孝さんってあのルックスでしょ?それに成績優秀かつ期待のホープだし!一体どうやって落としたの??』
「え・・・」
孝が?
ホープ?
え、ホープ?
疑いの目を向けると首を傾げる同期。
どうやら孝のホープ説を訂正する気はないらしい。
(あはは、信じらんねぇ・・・)
どうやら孝様は優秀なお医者様だったらしい。
想像していた不憫な職場環境がガラガラと崩れていった。
『ねぇねぇ教えてよ。どうやって落としたの?』
「え?あ、あぁ・・・」
どうやって落とした---か。
さてさて、なんて答えるか。
偽装とはいえ今は恋人同士。
約束もあるし、ここは上手く立ち回らねばなるまい。
「私はずっと好きだったんです。落とせたのかは分からないけど・・・お前は俺の、って熱い言葉を貰えたから。それを信じただけ。」
孝を立てるのは忘れずに
軽い笑みと一緒に答えた。
どうだ。
何点くれる!?
(え・・・・・?)
なぜか目を見開く同期。
なんだよその反応・・・
しくじった?
何まずかったか?
『俺の、って・・・もしかして"俺の女だ"とか言われたってこと?孝さんから?』
「そう・・・ですけど。」
なんだそんなことかよ。
ビックリさせんなよ。
それなら本者の私も言われたことがあるぞ。
誰にでも言ってんじゃねぇの?
『信じらんね。孝さん本気なんだなぁ。』
「・・・・・・・?」
『あ、ごめんね。さっきから失礼なこと言ってるね。』
「いえ・・・」
全然
意味分かんないんすけど。
「おい有希、行くぞ。」
「え?う、うん。」
突然、腕を掴まれた。
もちろん、犯人は俺様孝様。
(えー、まだ飯食ってないんすけど。)
でもまぁ仕方が無い。
しぶしぶ立ち上がり同期に軽く手を振り
腕を掴まれたまま孝に着いていった。