遼「・・・どこのどいつだ。」
千「-----え?」
遼「そいつの居場所を教えろ!」
千「ちょ・・・待ってくれよ!遼まで行かれたら---!」
-----遼まで?
要「え、そういえばあいつ・・・」
純「・・・出てったよねさっき。」
真「・・・行ったな。」
確かに行った。
「有希は相手のこと知ってんのか?」
千「さっき話した。でもまさかこんなことになるなんて・・・」
間違いない。
それじゃ行き先は決まってる。
千「・・・どうしよう。あんなに怒った有希、見たこと無い・・・」
再びタオルで目を押さえる千秋。
ていうか俺だって見たことねぇよあんな目した女。
それに---あいつのあんな顔。
あの時は事情を知らなかったってのもある。
でも・・・止めておけば良かった。
間違ってもあいつは女だ。
それに千秋の相手はそういう奴らしいし話が通じる相手じゃない可能性もある。
---心配だ。
(チッ・・・)
あいつが出て行ってから1時間は経ってる。
ふしだらな男に一発ってのも有りだが
有希の身に何かあっても困る。
「おい千秋。そいつの居場所を教えろ。」
真「俺も行く。」
要「そうだな。とりあえず--」
「入れ!!」
「「「 -----------------!! 」」」
突然響いた玄関が開く音。
そして---
有「千秋!!」
凄まじい声と共に
リビングの扉を蹴破る勢いで有希が帰還してきた。
しかも--
(お、おいおい・・・)
ボロボロになった男を土産に持って帰ってきた。
累「ちょっ---有希!怪我してる!」
帰ってきた有希は傷だらけだった。
顔に小さな傷が数箇所。
更に口端から薄っすら血が滲んでる。
男を掴む手も見事に血だらけだ。
あまりの有様に絶句する俺ら。
累だけがなんとか動いて有希に駆け寄った。
「有希・・・」
信じらんねぇ・・・
こいつ、ケンカして男を引きずってきやがったのか?
更に信じられないのは男の方が酷い怪我だってことだ。
そんなことよりこの男・・・
女に手ぇ上げやがったのか?
しかも
有希に---
累「有希!消毒しなくちゃ--」
有「大丈夫だ。」
累「でも---!」
有「悪いけどお前ら・・・席外しててくれないか。」
---有希に手をあげた
込み上げる怒りに任せて体が動きそうになった時
平静を装うような低い声で、有希が言葉を発した。
ていうか--
(・・・席を外す?)
バカかてめぇは。
お前に手ェ出したヤツを放って引き下がるわけねぇだろうが。
他の連中も同様。
動く気配は無い。
有「おい、頼むからさっさと--」
遼「俺ら、さっき千秋から話聞いた。」
有「・・・・・なに?」
『な、なんなんだよこの女!千秋・・・・お前の知り合いかよ!』
千「・・・・・・・・っ!」
よほどイラついてんだろう。
話を遮るように弱々しいながらも男が虚勢を張る。
ビクッと体を揺らした千秋を遼が支えた。
有「私は千秋の姉だ!!」
『なっ!!』
有希の素性に驚愕する男。
まさか有希のヤツ、何の説明も無いまま殴りかかったのか?
なんて女だ全く。
有り得ねぇ・・・
有「謝って済むことじゃねぇ。だがな!ひたすら謝れ!!!」
怒気を帯びた声。
そして男の胸倉を引き寄せ威嚇する。
『お、俺達の問題だろうが!姉貴が出てくるなんて図々しいんだよ!』
有「-----んだとぉ!」
(------!)
どこにそんな力があるのか
止めに入る間も与えず、凄まじい音と共に男を床に転がしやがった。
有「何が俺らの問題だ!お前らの関係なんかどうだっていいんだよ!」
『だったら口出しすんな!』
有「お前は・・・・・・っ人の命を何だと思ってんだ!!」
『--------っ!?』
有「よく覚えとけよ。お前は人を一人殺したんだ。」
『・・・・・・・。』
有「それに千秋にも傷をつけたんだぞ!!お前はどんな傷を負った!?どっか痛いとこがあんのか!?へらへらしやがって!お前に俺らの問題なんて言う資格があんのか!!」
『--------。』
有「責任も取れないくせに。色気付いてんじゃねぇよ。」
『--------っ!!』
男が息を呑んだ音が部屋に響いた。
色の無い目
抑揚の無い声
俺らも
千秋も
動けない。
有「一生かけて償え。それだけのことをやったと自覚しろ。とにかく今は千秋の気が済むまで謝れ。」
有希に気圧されたのかそれとも言われたことがショックだったのか
男はがっくりと肩を落とし床に座り込んだ。
そうだ。
そうだな。
お前はそういう女だよな。
そして有希は
沈黙した。