間違いない。

間違いない。—3 SAKURA∞SAKU first

--要--

 

誰か気付いてくれこの違和感。

 

さぁ間違え探しだよ。

分かる人は・・・
やっぱりいないかぁ!
そうだよねー。

 

···なんて馬鹿なことやってる場合か。

 

突然現れた有希の妹。

千秋、ちゃん。

どうしても名前と「ちゃん」がくっつかない。

---千秋君

これならごく自然にいけるんだけど・・

 

はっきり言ってコイツは、男子だ。

姉の有希も男らしいが顔は女だしそういう格好すれば可愛くなる。
でも千秋、ちゃんはそのまんま男子。

だってカッコいいんだもん。

無口な上にギラリとしてる。
そりゃもう雄って感じ。

 

だが、どうやら本当に女子らしい。

良く見れば体の線は細いし顔も綺麗。

タイプはそうね・・・
孝と真樹の中間みたいな感じ?
くそ、いいとこ取りしやがって。

 

『うわ。何これ。モデル集団?』
『皆カッコいいー!』
『あの男の子だけ小さいね。』
「・・・・・・・・・・。」

 

ほら見て。
誰も間違いに気付かない。

皆さん聞いてください。
この中には女子が2人います。
さてさて誰と誰でしょうかっ!?

 

まぁそれは置いといて・・・

ただ今飯を終えて帰宅中。

 

さすが累と純。
既に千秋···ちゃんと打ち解けたようだ。

というよりあのオーラに免疫が出来たのか?
遼も一緒にワイワイ騒ぎながら4人で前を歩いている。

 

(身長も高いんですね···)

 

女子にしてはかなりでかい。
両手をポケットに突っ込み淡々と歩く後姿は正に男。

 

まさか----皆で俺を騙してる?

はーい、ドッキリでしたー!

とか言っちゃうんじゃないよね。

嫌だよそんなの。
自分だけ騙されてる耐えられない。

 

真「おい有希。あいつ、マジでお前の妹なのか?その前にあいつは本当に女なのか?ドッキリなんじゃねぇのか?」

 

珍しく真樹が焦りを見せる。
帝王にも苦手なジャンルがあったらしい。

 

孝「ドッキリ?なるほどそうだったのか。それなら納得がいく。」

 

孝のヤツ、不明な点はドッキリで辻褄を合わせるらしい。

まあ気持ちは分かる。

 

有「お前らなぁ・・・あいつはマジで可愛い女だぞ。外見ばっかりで人間と付き合うから分からなくなるんだよ。まぁ、見かけは正に男だけどな。」

 

外見の話をしてるんだよ。
さっき会ったばかりで中身が分かってたまるか。

 

有「2、3日泊まると思う。宜しくな。」
真「?」
有「多分話したいことがあんだよ。なかなか話し出さないからさ。いつも時間が掛かるんだ。」
真「・・・・・・・・・。」

 

ほう、さすが姉ちゃん。
何でもお見通しってわけね。

 

「気が済むまでいればいいじゃん。」

 

暗黙の了解で分かり合える家族かぁ。
なんだかいいな。

 

有「サンキュ。」

 

フッと口角を上げる有希。
やはりお前も男らしい。

ちょっぴりほのぼの気分を味わいながら
前を歩くかっこいい妹と共に桜館へ帰った。

 


 

(えー、と・・・あの、その・・・)

 

全員揃って家に帰ってきた。

 

うん、帰って来たはいいんだよ。
お腹いっぱいあー幸せって感じ。

でも---

 

有「-------。」
千「---------。」

 

なんなのこの張り詰めた空気。

ケンカしてんじゃないのよ。
険悪なムードってわけじゃないのよ。

ただ---

 

無言。

 

ソファーに並んで座ってボーっとしている2人。

初めは久々で恥ずかしいのかなぁなんてほのぼの見守ってたんだけど···

沈黙すること23分。

見守っているこっちの身にもなってほしい。

 

非常に・・・

 

息苦しい!!

 

「ちょ、ちょっと遼!なんなのアレ!あの人達何やってんの!?」

 

いい加減耐え切れずこそっと遼に助けを求める。

 

純「俺も聞きたい。」
累「お、俺も。」
真「・・・・・・・・。」
孝「・・・・・・・・。」

 

こそこそと全員集合。

 

遼「何って、見た通り座って--」
「ふざけんなよてめぇ。そんなことは分かってんだよ。」
遼「え、な、なんでそんなに怒って---」
真「早く説明しろ。」
遼「は、はいっ!」

 

真樹、もっと脅してやれ。

 

遼「ななな何してるって言われても・・・あいつらいつもあんな感じだぞ。周りの空気を重くしてやろうとかイジワルしようとかプレッシャーかけようとかとかとかとか---そんなこと恐らくきっと多分思ってねぇよ!お前ら初めてだからビビッただろ!おおお俺は慣れてるけど!」
「「「 -------------。」」」

 

めちゃくちゃプレッシャーかけられてんじゃねぇか。

 

遼「ととととにかく!あいつらにとってあれが自然体なの。でもずっと話さないわけじゃねぇよ?急に話し出すからビックリす--」

有「あ、そういえばよ。」

「「「 ・・・・・・・!」」」

 

急に口を開いた有希。

同時に俺達に緊張が走る。

有希さん一体何を・・・
何を話し出すんですか!?

 

 

 

有「お前んとこの猫、元気か?」

「「「 ・・・・・・。」」」

 

 

 

ね、猫?

 

千「ミー子のことか?」
有「そうそうミー子。」
千「それがよぉ。ちょっと聞いてくれよ。」
有「なんだ。何かあったのか?」
千「去年引越ししたんだけどさ。引っ越した先がペット禁止とか言いやがってよ。」
有「マジかよ!なんだその家は!文句言えよ!」
千「頼んだけどダメだった。」
有「じゃ、じゃあミー子は···」
千「友達に預かってもらってる。」
有「えー!」

 

いやいや、引っ越す前にペット可かどうか調べろよ。

 

有「くそ、お前の友達が羨ましい。私も猫さんと暮らしたい。」
千「だろ?私も夜が寂しくてさ。今度会いに行くんだけど行くか?」
有「行く!」
千「分かった。」

 

・・・なにそれ。

 

遼「ほ、ほらな?急に喋り出すんだよあいつら。ちなみに2人とも大の猫好きです。」
孝「ふざけんな。」

 

全くだ。

 

累「えー!有希って猫が好きなの!?」

 

突然累が目覚める。

そういえばこいつも無類の猫好きだったような···

 

有「えっ!もしかして累も!?」
累「そうなんだよー!」
千「へぇ、累こっちに来い。 仲間に入れてやる。」
累「やったー!!」

 

ちょっと待て。

いいの?
こんなノリでいいの?

 

遼「とととにかく!あんまり気にしない方がいいかと。気にするだけ疲れると思う。」
純「既に疲労困憊。」
真「・・・調子狂う。」
孝「はぁ・・・」

 

つ、疲れる・・・

 

遼「慣れたらいい奴だよ、千秋は。人見知りが激しいから慣れるまであんまり話さないけど。」
「そ、そう。」
遼「それに、性格はすっごい可愛いし。」

 

そういやさっき有希も言ってたな。

 

「全っ然意味が分かんない。」
遼「しばらく一緒にいれば分かるよ。」
「ふぅん。」

 

あいつらに目を向けると3人仲良く猫について語らい合っている。
どうやら楽しいらしい。

 

 

とりあえず・・・

 

 

どうでもいいから沈黙だけは勘弁してくれ。