「心配じゃ・・・ないんすか?」
少し、付け入った質問をしてもいいっすか。
遼「心配?」
「有希さん、桜館に住んでるんですよね。あの家、イケメンで飽和してるから・・・」
俺だったらすっげぇ心配。
いてもたってもいられない。
遼「心配だよー。でも有希の奴、変人だからね。見かけで好きになることがないから。」
「-----確かに。」
さすが長い付き合い。
分かってらっしゃる。
遼「でもねぇ。桜館の奴らと知り合いになったら余計心配になった。」
「え?」
遼「あいつらいい奴らばっかじゃん。見かけもも中身もフィーバーされたらどうしたらいいか分かんないよな。」
「・・・・・・・・・・・。」
そんなことないっすよ遼さん・・・
あんたもめちゃくちゃカッコいいっす。
普通、ライバルに対してそんな風に言えないよな…
「…そんなことないっすよ。」
こんなことしか言えない俺。
なんだか虚しい。
遼「あれれ、なんでそんな顔するかな。もしかして仁君・・・有希のこと好きだったりする?」
「えっ!?」
ニコッと笑いながら問いかけてくる遼さん。
そして何故か動揺する俺。
「す、好きだなって思うこともあったんすけど。どっちかというと・・・あの人は心の中の姉ちゃんなんです。」
素直に口から出てきた。
多分・・・・・・本音だ。
遼「そっか。でもあいつ、兄ちゃんの方が似合うんじゃねぇ?」
クスクス笑われた。
まぁ、言ってることは分かるんすけど…
「有希さんって確かにカッコいいんすけど・・・何故か姉ちゃんって方がしっくりくるっていうか・・・」
遼「…そっか。」
相変わらず優しく笑う遼さん。
氷をカラリと鳴らして酒を煽る。
(・・・カ、カッコいい。)
やばいぞ。
最近の俺の心臓、やたら男子にときめいてしまうんですけど・・・
いやいや違うよ。
至ってノーマルです。
遼「仁君にそう思われて有希も嬉しいと思うよ。」
「そ、そうっすか?」
遼「うん。あいつが羨ましい。」
遼さん。
俺。
俺っ---
「俺、遼さんの弟にもなりたいっす!!」
遼「え…えぇ!マジ!?やったー!リアルに嬉しいんだけど!」
「へ、へへっ!」
遼「じゃあ『仁』って呼んでいい!?」
「何とでも呼んでください!」
遼「よーし!仁!兄弟の杯だ!飲め!」
「うっす!!」
弟にしてもらった!
「あ、あの・・・」
遼「ん?」
今まで聞きたいと思ってて
でも聞いたらいけないと我慢してきたことがある。
「有希さん・・・なんで毎日酒を煽るんすか?」
遼「------。」
あ・・・
これは…
失敗した…?
「あ、あの、すみません。付け入ったこと聞いちゃって--」
遼「・・・そうしないと眠れないんだよ。」
「え?」
遼「簡単に言うとね・・・あいつは毎日やけ酒してんの。」
「・・・・・。」
遼「でも理由は聞かないでやって欲しいな。言いたい時は自分から言うと思うから。」
桜館の人達が理由を聞こうとして、誰かに止められるのを時々見かける。
それはきっとあの人たちも理由を知らなくて
そして知りたいからなんだろう。
(そうか・・・)
遼さんは知ってるんだ。
いろんな意味で
遼さんは有希さんの特別な人なんだ。
「・・・分かりました。」
色々分からないことだらけだけど・・・
姉ちゃんには深入りしちゃいけない何かがある。
それは分かった。
遼「ありがとう。」
フッと微笑む遼さん。
その笑顔はやっぱりカッコ良かったけど
なんとなく寂しそうに見えた。
『こんばんはー。』
「いらっしゃいませ----あ!」
遼「あれ、やっぱり来た。」
いらっしゃいませ、皆さん。
純「あれ、遼じゃん。」
累「ほんとだ!」
今日のメンバーは累と純。
純「あれ、姫は?」
遼「おトイレさんに行ってる。もうすぐ帰って---ほらきた。」
あ、女の子に声かけられてる。
有「あれ、やっぱり来たのか?今日は別に良かったのに。」
累「ダメだよ一人飲みは。」
有「遼と一緒なんだからいいだろ?」
そういえばこの2人も本当に女遊びしなくなったよなぁ。
もう随分女子を連れてるのを見てない。
累「うーん、まぁ許す。」
遼「なんだよ累。いい加減俺の弟になれよ。」
累「えーヤダ。」
それにしても兄ちゃん。
桜館住人達と打ち解けるなんて・・・
それだけでも尊敬に値するっす。
色んな意味ですごすぎ。
遼「くそー。でも仁は俺と兄弟になったんだぞ。」
有「は・・・はぁ!?」
遼「そうだよなぁ?仁。」
「は、はい!」
そ、そうなんす!!
有「マジかよー!!ちょっと待て。仁とお前が兄弟って事は・・・遼も私の下僕ってことに--」
遼「バカ言うな。そう簡単に俺を落とせると思うなよ。」
累「えー、結構簡単そう。」
純「うん、俺もそう思う。」
遼「-----。」
有「ぷぷ!ドンマイ!」
さっきと一変。
ワイワイ騒ぐ姉ちゃんと兄ちゃん達。
その顔はとっても楽しそうで・・・
この人達にはいつも笑顔でいて欲しいと思った。
・・・・・・・・・・同類(完)