ぽっちゃり系

ぽっちゃり系 06 SAKURA∞SAKU second






「疲れたぁ・・・・・・」






目の前には大きな玄関。

その横にある無駄にオシャレなインターホンをぽちっと押した。



約1ヶ月半、ライブツアーでしばらく家を空けてました。

家っていっても自分の家じゃないんだけどね。

俺って桜館に住んでるようなもんだし?

きっと皆、俺がいなくて寂しかったはず。

仕方ねぇなぁ。
あいつら俺がいないとなんにも出来ないんだからっ。





「おーす!」





今日は日曜だから、多分奴らの半分は家にいるはずだ。

ま、俺としては有希がいればそれでいいんだけど。






累「遼!なんか久しぶりだな!」

純「本当だー。」

孝「なんか用か。」

真「何しに来た。」

要「お土産は?」






後の3人は無視だ。

この鬼畜共め。

俺を苛めてそんなに楽しいか。
そんな攻撃に屈して堪るか。





それにしても







「有希は?」







有希の声が聞こえない。







真「あぁ、あいつなら・・・」

有「ただいまぁ。」






あぁ愛しい声!

良かった。
ちゃんと家にいたんだな。

元気か。
こいつらに何かされなかったか。






有「あれ、遼じゃん。ライブ終わったのか?」






ちゃんと覚えててくれたんだな!

超嬉しい。






「さっき帰ってきたとこー。俺がいなくて寂しかった???」

有「バカかお前は。とりあえず座れよ。ゆっくりしろ。」

「はーい。了解で、す・・・・・」






あ、あれ。

あれ・・・・・・・・・・?




ジャージ姿の有希。

タオルを首にかけ階段を上って行く。



そんなありふれたそれにどこか違和感。

どこかっていうか・・・

完全なる違和感。






要「お土産はー?今回全国回ったんだろ?」






有希に声をかけようとしたら要に阻止された。






「あ、あぁ。ほら、各地名物お菓子さん。まぁ、専ら要と有希への土産だな。」






よっこいしょとテーブルにお土産を置く。

すげーぞ今回は。

恐らく何か月分はあるだろうお菓子さん達。

有希の奴、泣いて喜ぶんじゃねぇか?






要「やったー!遼ったら大好きーありがとー。」






男に『ありがとー』とか言われても嬉しくもなんともない。

有希が喜べば他はどうでもいい。






累「お、お菓子?」

純「うわぁ・・・・それはまずいよ遼。」

孝「まぁ、気持ちは分かるけどな。」

真「やはりお前も同類だな。」

「は?」

要「すげ、マジで揃ってる。ある意味全国制覇。」






要以外、言ってる意味が分からない。






有「ふー。今日も頑張ったなぁ。で、お土産ってなんだ?」

累「有希は見ない方がいいよ!」

純「姫、こっちにおいで!とりあえずお土産見ちゃダメ!」

孝「良かったな有希。お前の好きなモンばっかだぞ。」

真「そうだ。俺の分、お前にやる。」

要「これとこれと・・・・・これも欲しいな。」






いつもに増して団結力の無い会話。

全く意味が分からない。







「何かあったのか-----」






意味が分からなかったので有希に助けを求めてみたんだが・・・・・






(・・・・・・・・・・・・あ!)






分かってしまった。

さっき感じた違和感。




決して嫌ではない。

むしろ喜ばしい違和感。







「なんだよお前、ぽっちゃり系にはまってんの?」







素直に「可愛くなったじゃん」と言えない自分が歯がゆい。

だって恥ずかしいじゃん。

みんなの前だし?



ライブに行く前にも少し気になってたけど。

しばらく見ないうちに大きくなっちゃって。

こいつもとうとう女に目覚めたのか。

もー、可愛すぎっ!








累「りょ、遼っ!謝った方がいいよっ!!」

「・・・・・・・・・・へ。」






照れ隠しのつもりだったんですが

『ぽっちゃり系』

確実に禁句だったようで・・・・・






(ひ、ひぃぃぃ------!)






『ごごごご・・・・』と効果音が聞こえてきそうな。

そんな悪魔的なオーラを感じる。

簡単に言えば怒ってる。

怒ってるよ-----!







有「・・・今やられるか後でやられるか。どっちがいいか選ばせてやる。」

「ひっ!!!!!」






ぽっちゃりな自分、相当気にしてたらしい。

誰か助けて。

てかお前ら、ちゃんと教えてくれれば良かったんだ!!






「ごごごごごめん言い方が悪かった!!!でもね本当は可愛くなったなぁって思ったんだけど恥ずかしくて言えなかったんだよ!!ほら俺って照れ屋だから!!!」

有「知るか。」

「知ってるだろー!!!!」

有「知らねぇよ!」

「有希ーーーー!!!!」






泣きそう!

泣きそうよ俺!!







有「こいつらと示し合わせたのかぁ?お前まで私を太らせようと企んでるのか?」

「そそそそんなわけないじゃん!!!」

有「言い訳すんな!!こんなにたくさんのお菓子さんを買ってきてくれてありがとう!いやいや買ってきやがって!!」

「ちちち違うよー!!お前が喜ぶと思って買ってきたんだ!!」

真「遼も仲間だ。」

孝「そうだ。こいつが親玉だ。」

「なっなに言ってんだお前ら!!」

要「悩む・・・・今日のデザートどれにしよう。」

「お前は黙ってろォ!!!」






くそ!

そういう奴らだと思ってたよ!!

もうダメ。
もうイヤ。

もう・・・・もーーーーーーーぉ!!!!







「お前っ!!可愛くて堪んねぇぇー!!!」

有「は・・・はぁっ!!??なっなにすんだてめぇ放せ!!」

累「あー!!遼っ離れろー!!」

真「遼。」

孝「・・・・・・・・・・。」

「絶対ヤダー!!!!」






いつもとやってること変わんないんだけどよ。

そりゃゴゴゴゴってすごんでるんだけどよ。


そんなぽっちゃり可愛い姿で下から睨まれたら・・・

可愛くて仕方ねぇじゃんかー!!!!






「ぷにぷにだぁー幸せー。」

有「お、おい!!やめんか!離れろー!!!」






腕の中で必死で暴れる有希。

でも絶対放してやらない。



こんなに柔らかくなっちゃって。

女の子はちょっとぽちゃっとしてた方が絶対可愛い。

こいつの場合、あのことがあって痩せてしまったから・・・・

昔に戻ったみたいで嬉しさも7割り増しだ!!!




それに----

やはり当たる。

有希が俺を誘惑する。







有「おいっいい加減にっ!!」

「有希、俺は今くらいが好みだからな!」

有「・・・・・・・・・。」









あ。









有「お前もやっぱりおっぱいかぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「ぎゃぁぁぁ!!!!!」

「「「----------。」」」






体重が増えたおかげで腹に食い込んだ拳も非常に重かった。

これはヤバイ致命傷だ。

ぽっちゃりのお前は可愛いが、やはり3キロばかり落とした方がいいかもしれない。

凶器だ。
お前の拳は凶器だ。






有「ふざけんなよ!!お前らなんか大っ嫌いだー!!!!」

「「「・・・・・・えっ」」」






近くに散乱したお菓子さんの袋詰め箱詰めをかき集める有希。

そして持てるだけ持って二階に駆け上がっていく。






「待ってよ有希ー!!」

要「嫌いって言うなー!!」

真「なんで菓子を持って行くんだ?」

孝「さぁ。食うんじゃねぇの。」

純「姫、お菓子はダメだよー。お腹空いた時は野菜だからねー。」

累「もー。最近少し治まってたのに。遼のせいだからな!」

「知らなかったんだ!仕方ねぇだろー!!」






ねぇ、俺、さっき帰ってきたばっかよ。

超疲れてるんだけど。
誰か俺を労わってよ!

これじゃ踏んだり蹴ったりじゃん!









結局-----

有希のダイエットはしばらく続き、何度も夕方のウォーキングに付き合わされている。

が、しかし。

住人共の努力も凄まじく、未だに痩せきれないでいる有希。






有「なんなんだあいつらはよ!ここぞとばかりに日頃の恨みを返してきやがって!!」






違う違う。

違うよ有希ちゃん。






有「でもちょっとでも運動するのって気持ちいいな!」






隣をてくてく歩く有希。

そう。

この前までは『カッコよく』歩くだった。

これだけで・・・

そう、有希が可愛いだけで俺は十分だ!






有「聞いてんのか、遼!」

「ぐわぁ!いっ、痛ぇぇ!」

有「大げさな奴だなぁ。」

「マジで痛いから!」







うーん。







やっぱ3キロお願いします。
















-----------------ぽっちゃり系(完)