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『じゃぁな。幸せになれよ、孝。』
「・・・・・・・んだよ、それ。」
目の前にいるってのに
届く距離にいるってのに
手を伸ばしても掴むことができるない。
なんで
なんで離れて行くんだよ・・・
『・・・・・・・・さよならだ。』
「---------!」
有「うぉ!?な、なんだ?また怖い夢か?」
「・・・・・・・・・は?」
また・・・・・・夢-----?
有「大丈夫だ安心しろ。ここは家だぞー。」
「・・・・・・有希?」
有「そうだ、私だぞ。」
いつの間にか
また有希の手を掴んでた。
(なん・・・・だよ。あんな・・・夢・・・)
頭の靄が晴れて、だんだん視界がはっきりしてきた。
心配そうな表情で有希が顔を覗き込んでる。
「-----は・・・・ぁ。」
有「大丈夫か?よっぽど怖い夢だったんだな。」
思わず脱力。
ため息と一緒に手で顔を覆う。
夢にうなされて目が覚めるなんて・・・
ガキかよ俺は。
有「なぁなぁ、どんな夢だったんだよ。」
「え・・・」
心配してるぞ、でも興味津々だぞって顔を向けられた。
ていうかどんな夢って・・・
お前の夢だよ。
お前が俺に背を向けて
そして---
思い出したくない。
有「お前が怖がるものってなんだ?今後の参考に是非聞いておきたい。」
「・・・・・・・・・。」
今後の参考ってなんだ。
有「あれ、顔赤いな。熱が上がっちまったかな・・・」
頬に触れる手。
冷たいそれが悪夢を癒してくれるようで
気持ち・・・いい・・・・・
----------さよならだ。
「--------っ!」
有「わ!どど、どした!?」
思わず体を起こす。
あまりの勢いにビックリしたのか有希が後に倒れそうになった。
(くそ・・・・・なんなんだよ。)
ただの夢じゃねぇか。
なんで頭から離れないんだよ。
なんで振り回される---
「・・・・はぁっ・・・・は・・・・ぁ・・・」
動悸が激しい。
心臓の音が聞こえそうなくらい大きい。
(く、そ------)
・・・・苦しい。
上手く息ができねぇ。
有「大丈夫か?そんなに怖かったのか?」
俺に手首を捕まれたままの有希。
遠慮がちに下から覗き込んでくる。
(・・・・・・・怖い?)
確かに・・・怖かった。
こいつが離れて行く。
それがこの上なく・・・
怖いと感じた。
「・・・・・・っ!」
有「お、おい大丈夫か?何か飲むか?」
(さよならって------)
ゆっくりと目を開き、有希に視線を向ける。
すっげぇ心配そうな顔。
掴まれてない方の手をベッドにつき身を乗り出して俺を見てる。
(この有希が-----いなくなる?)
顔も見ることができない
声も聞くことができない
触れることもできない・・・
こんなに愛しくて堪らないのに?
「・・・どこにも行くな。」
有「え?」
掴んでいた手を離し、有希の頬を包む。
ちゃんと・・・・触れる。
有希はここにいる。
「俺の前からいなくなるな。」
有「お前・・・もしかして私がいなくなる夢でも見たのか?」
「・・・・・・」
有「心配するなって!良くなるまでずっとここにいるからな。」
『看病なら任せろ』と親指を立ててニコッと笑いかけられた。
「・・・違う。」
有「は?」
「そういう意味じゃねぇ・・・」
有「へ?」
さっきのアレが夢だってのは分かってる。
分かってる----
だが、もし現実になったら?
さよならなんて・・・・
(絶対イヤだ・・・・)
所詮夢の中の出来事。
現実に起きても無いことを恐れるなんてバカみたいだ。
だがあの夢のせいで
こいつを手に入れたくて堪らない渇欲が、一気に膨れ上がったような気がする。
抱きしめたくて
触れたくて
愛しくて
欲しくて欲しくて
堪んねぇ・・・
(やば、い・・・)
有希に対する欲求がグラグラと湧き上がってくる。
ただでさえ自分を抑えるのに日々苦労してんのに
熱で朦朧としてる頭で制御すんのは---
有「うわっ!!?」
無理・・・・だ・・・
有「---え----ぁ、んぅ?!」
驚く有希をベッドに引っ張り込んで
唇を奪った。
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