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「瀬尾に連絡した。大丈夫だって言ってたぞ。しっかり休めだってさ。」
孝「・・・・行く。」
「こ、こら!」
諦めの悪い奴め・・・
もそもそと動き出す孝。
既に住人共は仕事や用事で家にいない。
私一人でこの馬鹿力を抑えられるか!?
・・・と思ったが
「・・・・・・お前、やっぱ調子悪いんだよ。全然力入んねぇじゃんか。大人しく観念しろ。」
孝「・・・・・・・・・。」
ベッドから出ようとする孝の肩を押し返す。
そしてそれはそれは簡単に組み敷くことに成功。
孝「・・・・・・・馬鹿力。」
「・・・お前が弱いんだよ。」
力の弱い孝。
ものすごく変な感じだ。
「とにかく、病院には休むって伝えたんだ。素直に休養しろ。」
孝「・・・・・・。」
「ほら、着替えるぞ。」
孝「・・・・・・分かった。」
「よし。」
スーツ姿の孝。
そんな格好じゃゆっくり休めない。
とにかく寝巻きに着替えた方がいい。
私はというと、今日は込み入った仕事はない。
不幸中の幸い。
仕方がないので世話を焼いてやろうと思う。
「色々持ってくるから。着替えとけよ。」
孝「・・・自分でできる。移るから部屋に戻れ。」
「私は風邪引かねぇよ。お前と違って強いんだ。それに見張ってねぇ逃げ出しそうだからなお前。側でみっちり見張っててやる。」
孝「・・・・なんとかは風邪引かねぇって言うからな。」
「ほう・・・今日は私の方が力があるってこと、忘れてんじゃねぇぞ。」
弱ってるくせに口の悪さは健在のようだ。
まぁいい。
こういう時に貸しを思い切り貸し付けておくのも悪くないからな。
少々のことは我慢してやろうと思う。
「えーと、こんなもんか?」
自室に戻りあれこれ準備する。
ノートパソコンに読書用の本を数冊。
よし、準備万端。
「・・・・おいこら。」
孝「・・・・・ん。」
孝の部屋に戻ると見事に出て行った時のまんま。
スーツ姿のままベッドに横たわっている。
「きついだろうが着替えろ!そして薬を飲め!寝るのはそれからだ!」
孝「------嫌だ。」
「嫌じゃない!ほら!」
孝「--------。」
頭がふらふらすんのか、いちいち動きがスローモーションだ。
なんかウケる・・・
だが辛いんだろう。
面白がってる場合ではない。
「えと・・・・・あ、これだよな?お前の部屋着。」
孝「・・・・・なんでもいい。」
「よし。」
熱が出ると頭が朦朧とする。
こいつは正にそのタイプだな。
シャツのボタンさえろくに外せないらしい。
「貸してみろ。」
見兼ねて手伝ってやる。
さすがにパンツの方は自分でやってくださいよね。
とりあえずシャツを脱がせた後、着替えが済むまで後を向いて待機します。
孝「着た。」
「よし、次は薬だな。」
ベッドの端にボーっと座っている孝。
さっき少しは飯を食っていたようなので薬を飲ませることにした。
孝「薬は嫌いだ。」
「お医者様が何言ってんだ。飲め。」
孝「・・・・・・・・・・。」
「ほら。」
嫌がる奴の口に無理やり薬を流し込む。
お医者様が薬を毛嫌いって・・・
どんな顔して患者さんに薬出してんだこいつ。
孝「・・・・・苦い。」
「良薬口に苦しってんだよ。」
孝「本当かそれ。」
「私に聞くな。昔の人に聞け。」
とりあえず薬は飲み込んだみたいだ。
「ほら、横になれ。寝ろ。」
孝「・・・・・ん。」
いそいそと布団をかけてやる。
虚ろな目。
ほんのり赤い頬。
うーん、正に病人の顔だな。
(看病か・・・懐かしいな。)
私は何故か風邪を引かない。
それは何故か?
超健康体だからですが、なにか?
いやいやそうじゃなくて---
風邪を引かないから看病役はいつも私だ。
家族の時も、友達の時も、遼の時も。
そして・・・・薫の時も。
(最後に風邪ひいたのっていつだっけ・・・?)
思えば風邪なんて年単位で引いていないような気が・・・
え---やっぱりなんとかは風邪引かないって・・・
いやいやそれはないだろあはは。
(きっとあれだ。母ちゃんが健康に産んでくれたからだ。)
ベッドの側に座り込み、心の中で自分を慰めた。
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