軽ノリすんな・要

軽ノリすんな・要—3

「と、ところで有希ちゃん。なんでお酒飲まないと眠れないの?」

 

呑まれた。

 

たった少しの笑顔に
一瞬、呑まれてしまった。

 

とっさに話題を変えた。

何故なら俺だけじゃなく
他の奴らも固まってしまっていたから。

 

呑まれたのは多分、あまりのギャップに驚いたからだろ。

普段があんななんだ。
急に見せられたら固まるのも当然だ。

 

純「あぁそれ、俺も気になってた。」

 

ナイスだ純。
乗ってくれてありがとう。

 

有「え、あー、あぁ…」

 

さっきの笑顔とは一変、罰の悪そうな顔をする有希。

既に誰かから追求されたか?
どちらにしてもあまり話したくないことらしい。

それにしても飲まないと眠れないってなに。

アル中か?

何度か夜の飲み方を見たけど…
そんな風には見えなかったけどねぇ。

 

純「姫?」

 

なかなか話し出さない有希を促す純。

当の本人は話題よ変われ!って思っているのかとぼけた顔をしているけど。
でもそう簡単には変えてやらないよ。

 

孝「夢見たくねぇんだと。」
有「コラ!言うなよ!」

 

(あらら・・・)

 

眉間にシワ寄せてグラスの氷をカラカラ言わせる有希ちゃん。
余計なこと言うなってことか?

ていうか夢見たくないってなに。
夢を見ないために毎晩酒を浴びてんの?

そんな無茶苦茶な・・・

 

真「夢、見たくねぇのか?」
有「まぁ・・・そんな感じ。」
純「どういうこと・・・?」

 

しーん…

 

(え・・・く、空気重い。)

 

再びだんまりする有希ちゃん。
しかも今度は重苦しい雰囲気…

は、早く話してよ有希ちゃん。
なんだか俺が責められてるみたいで息が出来ない。

 

有「あーもう…見たくない夢を何度も見ちゃうんで。酒で潰れて眠りたいの。それだけ。」

 

吐き出すように渋々口を開く有希ちゃん。

見たくない夢を何度も見る?

嫌な過去でもあるのか…
謎だね。

 

純「毎回同じ夢を見るの?」
有「必ずってわけじゃないけど・・・確率高いんだよ。」
累「3年前から飲んでるって言ってたよね?」
有「そうそう。3年前は100%その夢見てたから酒に頼っちゃって。で、今も継続中。」

 

え、3年?
3年もこんなの続けてんの?

 

真「3年も経ってんならもう大丈夫なんじゃねぇか?」
有「もしかしたらね。----でも怖いんだよねぇ。だから飲んじゃうんだよなぁ。」
孝「・・・・・・・・。」
有「うわ!なんか空気重くなった!やめやめこの話は終わりな?楽しく飲もうー!」

 

(ちょっと・・・なにその表情。)

 

無理矢理作った陰を帯びる笑顔。
多分意識してないんだろうけど、こういうのに男は弱いよ。

 

有「せっかく飲んでるんだ!暗い話は終わりな!」

 

そう言うと孝のグラスに無理やり自分のグラスを当てて

 

注がれたばかりの酒を一気に飲み干した。