宣戦布告

宣戦布告.1 SAKURA∞SAKU first

「い、いやぁ・・・孝様もいい車に乗ってらっしゃるんですねぇ。」
孝「だからやめろ。その呼び方。」
「さすがお医者様。」

 

買出しは孝の車で出ることになった。

そしてやはりすんごい車が出てきた。

高級車は座席から違う。
私の部屋のソファーよりふわふわだ。
こっそり取り替えてやりたい。

 

(ウイスキー、ブランデー、焼酎にワイン・・・っと。)

 

もっとふわふわを堪能していたかったがスーパーに着いた。

酒置き場に直行し見つけた酒共を片っ端からカゴに放り込む。

 

「あいつらのはこんなもんか。」
孝「いいんじゃねぇ?」

 

酒が大量に埋まった籠を軽々しく持ってレジに向かう孝。

さすが馬鹿力。
籠の方がイカレそうだ。

 

『いらっしゃいま、せ---!?』

 

レジに行くとお姉さんに二人で飲むの!?的な視線を頂いた。

いやいや違いますよ、6人分です。
ま、ほとんど私のだけどな。

 

(・・・・・ん?)

 

酒瓶と缶をせっせとレジに通すお姉さん。

だがどうしたんだろう。

みるみると顔が赤く染まっていく。

そしてチラチラと上がる視線--

 

(・・・・あぁ!)

 

なるほど。

原因はこいつだ。

俺様孝様。

どうやらあまりのイケメンを前に可愛らしく顔を染めるお姉さん。
周りを見回すと他のレジの子も買い物客も皆孝を見ている。

 

(確かに見た目はいい男だもんなぁ・・・でもね皆さん騙されちゃいかんですよ!こいつはいい面を被った俺様野獣なんです!)

 

心の中で訴えた。

 

「孝、今日は私が出すからな。ていうかほとんど私のだし。」

 

しばらくかかってレジ打ち終了。

この前は世話になったからな。
今日こそは私が、ということで財布を出--

そうとするとまたもや孝が先に諭吉様を数枚出した。

 

孝「は?」
「いやいやだから--」
孝「バカかお前は。」
「は・・・」
孝「いいからそれ、袋に詰め込んどけ。」
「え、ちょ-----おいっ・・・」

 

邪魔だ、とでも言うように背中を押された。

 

・・・参ったな。

 

この前も出してもらったし・・・
今度から先に出しておけばいいのか?

袋にガチャガチャ詰めながら次の策略を練る。
とにかく次回は絶対払わせてもらおう。

 

「ふ、袋破れそうだな・・・」

 

はちきれんばかりに詰められたアルコール達と車に乗り込む。

孝を連れてきて良かった。
一人じゃ絶対ムリだった。

 

「ていうか孝、精算ありがとな。でも今度は--」
孝「礼を言うことじゃねぇ。この前も言ったぞ。」
「そ、そっか。」

 

言われたけどやっぱお礼は言いたいじゃんか。
そしてやはりこういうのは慣れない。

 

「-----あ、そういえば店の奴ら皆お前に見入ってたな。」
孝「いつものことだ。」
「うわなんだ今の発言!おモテになる方は言うことから違うんですねぇ。庶民には理解できないっす。」
孝「うざいだけだ。」
「へぇへぇ。」

孝「-----で?」

「は…?」

 

で?って

なんだ?

 

孝「さっきの話。」
「さっきの話?なんだっけ?」
孝「・・・真樹のこと。」

 

真樹のこと?

え、何かあったっけ。

真樹、真樹…

 

「あー・・・・その話か。だから何もないって。」
孝「何された。」
「・・・お前もしつこいなぁ。」
孝「言え。」

 

言えって言われてもな…

寝起きにディープなキッスをかまされましたなんて言えるわけねぇだろ。
むしろ消し去りたい事件だあれは。

 

孝「早く言え。」
「いいじゃねぇか別に。気にすんな。」

孝「・・・・・・・。」

 

うわ・・・無言の圧力。

空気に押し潰される。

 

「え、えーと、えーと…」

 

なんか、なんか他にないか。

言い訳カモーン・・・

 

「その・・・そう、アレだ、孝様と同じっすよ。あいつも私で遊んでいるようでして・・・」
孝「遊んでる?」
「私の常識ではチューとかギューは簡単にできねぇモンなんだけどな。なのにお前らときたら・・・挨拶はろくにできねぇくせにチューはぶちかましてくるんだもんな。」
孝「・・・・・・・・。」

 

言い訳というかなんというか・・・

日頃溜め込んでいるストレスをぶちまけてみた。
しかも孝、この件に関してはお前も同類だ。

 

「やっぱあれか?お前ら外人さん目指してんの?チューを挨拶にしてんの?」
孝「・・・・・・・・。」

 

だんまり。
まさか図星か。

 

「--------?」

 

 

ふと、孝が車を止めた。

 

 

え、まだ家に着いてないっすけど…

 

なんで?