BAR・Black Part1

BAR・Black Part1 / 10 SAKURA∞SAKU first



---気持ち良くない






主に、キスについて。






そして多分・・・






原因は、こいつ。






この色気のかけらもない女、有希。






店で飲んでる時からずっと考えていたんだが・・・

確かめてみるか、と思う。






まぁ、確かめたところで

もし本当にこいつが原因だったら俺はどうすればいいんだ・・・とも思う。






考えてもみろ。

元々キスに気持ち良さを求めているわけじゃない。

だがこいつとのキスが気持ちいいと感じてしまったら・・・?



俺は絶対どこかがおかしい。

原因不明の病だ。

そしてそれをどうやって治したらいいかさっぱり分からない。

非常に恐ろしい。






だが・・・






---キスしたい






そう思うのも事実。






確かめるか否か・・・

家に帰りシャワーを浴び

ソファーに座ってボーっと考えていた。






そこへ風呂上りのこいつ。






髪なんかほとんど拭いていない。

こんな状態で寝たら風邪引くに決まってんじゃねぇか。ガキめ。



医者として仕方なく、だ。

風邪予防を真向拒否しようとするこいつの髪を拭いてやった。






有「ちょちょちょちょ・・・マジで眠っちまうから・・・」






だが相当眠いらしく、弱々しく手を止められた。

俺に触れる手には全然力が入っていない。






そして眠そうな顔でこっちを見上げてきて--






(・・・・・・おいおい。)






乱れた髪の下から覗かせたこいつ・・・

なんだこれ。








(可愛いじゃねぇか・・・)








いやいやちょっと待て。

可愛いってなんだ。

この女がか?

いや違う全然好みじゃない。






(・・・・・・・・え。)






部屋へ戻ろうと立ち上がろうとする有希。






だがその手を無意識に掴んでいる自分の手。






なにやってんだ俺は。

もうわけが分からない。






「キスさせろ。」






おい待て何を言い出すんだ俺の口は。


止めてくれ。

これは一体なんの病気だ。

聞いたこともないぞこんな不可解な症状。






有「んー。んんん!!?何言ってんだお前は!!」






ごもっとも。

俺もそう思う。







あー・・・







でも、ダメだ。








キスしたくて








たまんねぇ・・・








有「ちょちょちょっ!」






酔いと眠気で全然力が入らねぇらしい有希。

体を押すと面白いように後へ倒れていく。






(少し・・・少しだけ試すだけだ・・・)






半ば言い訳しながら背中と頭に手を回し

ゆっくりとソファーに押し倒していく。

そして






有「-------ん!」






無防備な唇に、自分のを重ねた。






有「ぁ・・・・・、っ・・・」






抵抗する手は抑える必要もないくらい弱々しい。

必死に肩を押し返してくるが

放っておいても問題ない。






問題なのは--







(・・・・・・・やばい。)







確実に俺は---







病気だということだ。







なぜならこいつの唇が

こいつとのキスが





絡め取る舌も

時々漏れる小さな吐息も








気持ちいいと感じる。








有「・・・・・こ・・・・ぅ・・・っ!」







不器用な奴だ。

息が出来ないようなので途中で息をさせてやった。







だが・・・・まだ足りない。







一旦離して

再び深く奪った。









(これは------ヤバい。)









病みつきになる---









有「・・・・・・ん・・・」

「----!」








突然、有希の体から力が抜けた。








「-----。」







ゆっくり唇を離すと

やっぱり---








「寝てやがる・・・」








確かに眠い眠いと言ってはいたが・・・









「・・・失礼な女。」









さすがにキスの最中に寝られたのは初めてだ。






ていうかここからどうすりゃいいんだ?






気持ち良さそうに寝息を立てる唇。

だが濡れたソレはゾクッとするほどに艶かしくて・・・





また触れたくなる。

また・・・







重ねたくなる・・・







いやいや待て待て。





俺はおかしいんだ病気なんだ。

原因が分かるまで抑えろ。

暴走したら取り返しがつかなくなる。







「はぁ・・・」







結局、ソファーで寝てしまったこいつ。






まあ・・・仕方がない。

ここに放置するわけにもいかねぇからな。






(・・・・・・軽い。)






横抱きにすると抱えたこいつの軽さに驚く。

ちゃんと飯食ってるのか?

まさか---私の飯は酒だ!なんて思ってんじゃねぇだろうな。






(色気のねぇ部屋・・・)






開けっ放しにされていたこいつの部屋。


初めて入ったがなんだこれ。

部屋の大部分を占めるPC群。

見渡す限り女特有のヒラヒラキラキラした物は一切目に付かない。

やっぱりこいつ・・・

男なんじゃねぇのか。






ま、そんな事はどうだっていい。






有「・・・・・・・ん。」






ベッドに寝かせると軽く身じろぐ有希。

ついでに眉間に皺を寄せやがった。






---飲まないと眠れない

---夢を見たくないから酒を飲む






ふと、こいつの言ってたことを思い出した。






(嫌な夢見てんじゃねぇだろうな・・・)






なんとなく、頬に手を滑らせてみる。


飲みすぎなのか風呂上りだからなのか少し体温が高い。

指を絡めるとまだほんのり湿ってる髪。

仕方なく頭の下にタオルを引いてやった。

明日は寝癖確定だな。







(・・・・・・・・・寝よ。)







眉間も穏やかになったし

このままここにいたら自分が何をしでかすか分からないし






何しろ今の俺は具合が悪い。






明日にでも症状と照らし合わせて何の病気か調べてみよう。

早く治さねぇとマジでやばい。

手遅れになるような気がしてならねぇ。







「・・・・・・・・・・・・。」







病気のことは






明日から調べることに・・・






「・・・・・・・・。」








無防備に開くソレに軽く唇を重ねて








部屋へ戻った。














------Bar Black Part1(完)




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