予感

予感 11 ~GAME






私は今、心の底から後悔している。







「ん・・、---あっ・・」







背中には清潔な匂いのする柔らかなベッド。

薄く目を開くと目の前には白い天井を背にした変態。


身に着けているものは乱れたシャツとキャミ、そしてホックを外された下着のみ・・・

さっきまで自分を守ってくれていたスーツはずいぶん前にベッドの下に消えた。

そして・・・







「ゃ、ぁ-----んんっ・・!」







強引に開かれた足。

そしてその中心に無遠慮に突き立てられた長い指が

自分でも知らなかった敏感な部分をゆるゆると撫で上げてくる。






「ぁ、あ・・・それ・・・や、だ--」

辰「・・・嫌?」

「や・・も---やめ・・」

辰「ココはこんなに気持ち良さそうなのに・・透ちゃんは嘘つきだねぇ。」







じわじわと押し付けられる甘い痺れに背中が仰け反ってしまう。



---いい加減にしろ!



本当なら叫び散らしてやりたい。

ついでにヤツの綺麗な顔を思い切り殴ってやりたい。

だが力の抜けきった手は拳を握るどころか

ろくにシーツを手繰り寄せることもできず・・・






辰「透ちゃん、かわいい。」

「ゃ--あぁっ----!」






腑抜けた私がそんなに面白いのか、クスクスと笑いを漏らす辰巳さん。

そしてトントンとソコを突いたかと思ったら、再び緩く、焦らすように指の動きを再開させた。








何度も言うが・・・








私は今、猛烈に後悔している。








---辰巳さんは、狼である。


そんなことは分かってた。

普段のこいつは涼しい顔して紳士のふり

でも蓋を開ければビックリ狼

これが奴だ。




---辰巳さんは変態である。


これももちろん分かってた。

仕事のせいか最近は大人しかったが、あいつが話の通じない質の悪い変態であることは身をもって痛感している。






そこまで分かっていたのに、なぜだ・・・

なんであの時、私は我慢できなかった?






確かにあの辰巳さんは可愛かった。

一瞬同じ人間かと疑うほどに可愛かった。

だがもう一度アレをやるのは極めて危険---

やれば確実にヤツの変態スイッチを押してしまう

そんなのちょっと考えれば分かったはずだ。








それなのになんで・・・

なんであの時シャッター押しやがったんだこのバカ透!








(く、そぉ・・・)






我ながらつくづく学習しないヤツだと思う。

あの時、あの意外なテレ顔を眺めるだけに留めておけば・・・

赤く染まった可愛い顔を心のアルバムにそっとしまっておけばこんなことにはならなかった。

なのに--






「やだっ‥ぁ----やめ--」

辰「もっと欲しい?」

「ち・・ちが、ぅ---!」

辰「遠慮するなよ。まだ足りないだろ?」

「--あっ!ゃ、いやっ--!」






ぬるり、と親指が割れ目をなぞる。

そして傍にある敏感な突起を器用に暴き

まるで羽で触れるように優しく優しく擦り上げてくる。






「ぅ----あぁっ・・・!」






今までとは違う、灼けるような刺激に下腹部が激しく疼き出す。

中で蠢くヤツの指を無意識に締め付け、奥へ奥へと誘ってしまう。








でも・・








(足りな、い---っ・・!)








登りつめるには、刺激が弱すぎる・・









「ゃ--ぁ、んっ!」

辰「そんなに気持ちいい?」

「ん---っ、ぁ‥あ・・ッ」

辰「指、飲み込まれそう・・」

「-----はっ、ぁあっ・・!」






耳元で囁かれる言葉に思わず目を瞑ってしまう。

恥ずかしいことをペラペラと・・

出来ることならならすぐさま蹴り飛ばしてベッドの下へ沈めてやりたい。







でも、無理だ・・・







(も---ヤバ、い・・・)







熱を帯びてしまった体は、その低音の声にすらゾクゾクと反応してしまう。










 限界までイかされるのと

 限界まで焦らされるの・・・

 どっちがいい?









悪夢の始まりは---変態のこの言葉だった。







「は、ぁっ・・・・?」

辰「だから、イかされて泣くのと焦らされて泣くの、どっちがいい?」







数十分、くらい前だったと思う。

ヤツは腰が砕けそうな激しいキスを中断し、とんでもないことを尋ねてきた。


だが情けないことに変態のキスにリアル腰砕け状態だった自分。

そんな蕩けきった頭ではその言葉の意味を理解するのは不可能だった。






辰「ねぇ、どっちがいい?」

「ん・・・、・・?」

辰「エロい顔しちゃって・・・相変わらずキスに弱いねぇ。」

「・・ぇ・・・?」

「ま、透ちゃんはイくのが嫌いみたいだし・・・俺も出来れば嫌がることはしたくないから。今回は焦らして焦らして焦らし抜いてみよっか?」

「じら・・・」







---焦らす







その言葉で頭に浮かんだのは







先日のエロス王子。







容赦なく与えられる激しい快感。

何度も何度も弾けそうになって

でも登りつめる瞬間、刺激を取り上げられて







イきたくてもイけない

甘くて残酷な快感地獄・・・








「・・・ぇ、・・、--」

辰「言っとくけど・・・ 泣いても止めないから。」

「----っ」







心底楽しそうに口端を上げる変態。







もちろん、一瞬で頭が覚めた。







まぁそれから先は---

認めたくないが完全なるお手上げ状態。







ろくに抵抗出来ないままベッドに放られて--

慌てて逃走を図るも無駄な足掻き。

ハイテクキッスに再び自由を奪われ、ついでに服まで奪われ・・・







そして、現在に至る。