予感

予感 06 ~GAME





透「おまけに変態だし強引だし二重人格だし。」

「は・・・」







更なる非情な追い討ちにビタリと足が止まる。







(え、えぇー・・・!)







出鼻をくじかれたどころじゃない。
踏みつぶされてグリグリされた気分。

せっかく助けに行く気満々だったのに

酷い・・・酷いよ透ちゃんっ!


リアルに涙でそう・・







透「でもまぁ・・・水嶋さんの言う通りですよ。仕事に女を連れ込むような奴じゃないと思いますけど。」

「え?」







えっ!







透「あんまり褒めたくはないですが・・・仕事に対する姿勢は素晴らしいと思います。一緒に仕事しててそう思いました。」







(え・・・)














-----え・・















透「だからこれまで通り認めてやってたらいいんじゃないですか?」

「え・・」

透「二人がどういう関係か知りませんけど--










透ちゃんが何か喋ってる。











けど・・・

全然耳に入ってこない。










 仕事に対する姿勢は素晴らしいと思います。
 一緒に仕事しててそう思いました。








なぜだろう








さっきの透ちゃんの言葉が








ストンッ、と胸の中に落ちてきたような気がした。









(ちょ---なにこれ・・・)









マジで、なにこれ。









なぜか心臓が------変だ。









しかも、なんで・・・?









顔が









顔が、熱い・・









(え、ちょっと------は?)







思わず口を押えてしまう。



だって仕事に関する賞賛賛辞なんて聞き慣れてる。

そもそも仕事に対する姿勢が素晴らしいなんてよくある社交辞令だろ。

透ちゃんだって深い意味があって言った言葉じゃないはず。








なのになんで・・・









なんでこんなに嬉しいわけ?









(お、おいおい・・・)







嬉しいの理由はともかく

今の俺は---やばい。







不本意だが恐らく赤く染まってる顔。







こんなの、誰かに見られたら--










「------うわ--ぶっ!?」

「!」









突然、胸に何かぶつかってきた。







「え---っ!?へ、変--辰--!??」







ぶつかってきたのは透ちゃんだった。


角のギリギリに立ってた俺。
恐らく気付かず飛び込んでしまったんだろう。

ちなみに激しく驚いたらしい。
俺の名前が定まらない。







透「なな---なにやってんですかこんなとこで!ていうかいつからいた!?」







顔を打ったのか、鼻をさすりながら見上げてくる。







透「辰---進藤さん?」







何も答えない俺を変に思ったんだろう。
軽く首を傾げながら顔を覗き込んできた。


ちなみに仕事中の透ちゃんは俺を「進藤さん」と呼ぶ。

当たり前のことだがなんとなく面白い。







いやいやそんなことはどうでもいい!







「・・・い、今来たところ。」

透「ほ、本当に?」

「ほ、ほんと。」

透「ていうか顔赤いけど・・・どうかしたんですか?」





え!





透「まさか風邪でも--」

「ち、違うよ心配しないで。ちょっと疲れてるだけ。」

透「・・・それならいいですけど。」

「そ、それよりそろそろ会も終わるよ。会場に戻ろう?」

透「・・・はい。」









なぜだ









なぜだ










隣を歩く透ちゃん。

まだ風邪を疑ってるのか、じーっと俺の顔を見上げてくる。








(---お、おいおい・・・・)









その真っ直ぐ向けられる視線を










直視することができない。