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---やばい!
見事に顔にそう書いてある。
だがそんなのに構う必要はねぇ。
たまたま空いてた有希の隣の席。
荷物を置いて座り込んだ。
有「あ、あれぇ?誰この人。累の知り合いか?」
「・・・・・・・・・・。」
こいつ・・・
仁「ええええぇ!ちょちょちょっと有希さんっ!?」
店員が焦る。
そうだコレが普通の反応だ。
お前も少しは焦ってみろ。
有「だだだって知らねぇもんなぁ。そうだろ、累。」
微妙に言葉をどもらせる有希。
どうやら少しは焦ってはいるらしい。
累「なんだよ孝。邪魔して悪かったな。早く彼女のとこに戻りなよ。」
彼女?
有「そそそそそうだぞ!あんな出るとこ出てるいい女なかなか手に入るもんじゃねぇぞ!早く戻ってやれ!」
出るとこ出てるって・・・
オヤジかお前は。
「今日は止めた。そんな気分じゃねぇ。」
正直な気持ちだ。
あの女と今からって気分じゃない。
有「バ、バカ!彼女なんだろ!?もっと大切にしてやれよ!可哀相じゃねぇか!!」
彼女?
彼女って・・・
「バカはお前だ。さっきの女は彼女じゃねぇよ。」
有「・・・累もお前も、なんでそんな嘘をつくんだ?」
「は・・・?」
嘘?
一体なんのことだ。
有「ちょ・・・・孝様。 マジで早くあっちに戻れよ。」
「なんで。」
有「だって彼女がこっち見てる!勘違いされるじゃねぇか!美人さんに睨まれるとどうしたらいいか分かんなくなる!」
「・・・?」
さっきまで座っていた席を気にして挙動不審になる有希。
釣られて女に目をやると・・・
確かに有希を見ている。
見てるっていうか・・・
睨んでるなあれは。
どうやら確かに勘違いしてるようだ。
有「あのさ、見てたのは謝る。だからほら早く行け。」
大きなため息を一つ。
そして犬を追いやるような仕草を寄こす有希。
すげぇムカつくのは気のせいじゃない。
「だから、あいつは彼女じゃねぇって言ってんだろ。今日は止めにしたんだ。それともなんだ?俺が隣で飲むのは気が進まねぇのか?」
有「うわっ!」
ムカツキついでに肩を引き寄せてやった。
そして・・・
髪をまとめてるせいで顕になった首元に顔を埋めてみる。
(・・・・・・・いい香りがする。)
さっきまでの思考がリピートする。
自分でも良く分からない不可思議な感情。
有希を見ていると湧いてくる奇妙な苛立ち。
そして
キスしてぇ・・・
(なんでこんな格好してやがる・・・・)
近くで見るとますます違和感を覚える女の有希。
外に出るときはいつもこうなのか?
だとしたら今後外で飲むのは禁止だな。
酔っぱらったナンパ男に持って行かれるのはいい気持ちがしない。
「・・・痛い。」
有「当たり前だ。抓ってるんだからな。」
肩を引き寄せた手を抓られた。
地味に痛い。
有「お前なぁ。彼女にヤキモチ妬かせるなら他の方法を選べよ。こういうのは反則だろ?」
「は?」
ヤキモチ妬かせる?
お前を使ってあの女にってことか?
バカ言うな。
そういうつもりは更々ない。
有「あっ!ほら!彼女怒って帰っちまうぞ!さっさと追いかけろ!」
「別にいい。」
有「良くねぇだろ!!ちょ、ちょっとお姉さん!!!」
帰ろうとする女を追いかけようと勢い良く立ち上がる有希。
そしてマジで追いかけようと走り出した。
「待て。」
有「----ぐぁ!!」
襟元を掴むと色気の無い声。
まぁ仕方が無い。
本気で前進してたところを止められたら誰だってそうなるだろう。
有「ゴホッ!!て、てめぇ何しやがる!ていうか早く行けよ!!」
「だから気にするなって言ってんだろうが。それにあの女も今頃他の男に連絡取ってる。」
有「は・・・・はぁ?」
ポカンと口を開き放心する有希。
この前キスした時も思ったが、こいつは男に慣れていない。
一夜限りの関係なんて理解出来ないタイプなんだろう。
有「・・・わけ分かんねぇ。」
「分からなくていい。」
有「・・・そうかよ。」
やっと諦めたか。
チッと舌打ちをかまし、しぶしぶ元の席に戻ってきた。
仁「え・・・な、なに・・・孝さんのことお前呼ばわり・・・しかも名前で・・・?」
突然、店員が意味不明なことを呟き出した。
どうした。
壊れたか?
有「何言ってんだお前。壊れたのか?」
有希が代弁する。
仁「だって・・・孝さんのこと名前で呼ぶ女の人、初めて見ました。」
有「へ・・・」
そう・・・・・・だったか?
名前で呼ばせてる女・・・
そういえばいないな。
有「・・・五十嵐君。」
「やめろ。気持ち悪い。」
ボソッと訂正する有希。
今更止めろ。
変な感じがする。
累「もー、なんだよ孝。せっかく有希とデートだったのに。いつもは気付いても近寄りもしないのにさ。」
女のこともやっと一件落着・・・
と思えば今度は累がふて腐れ出した。
ていうかデートってなんだよ。
まさか---
やっぱりお前ら・・・
有「こらこら累たん、誤解を招くようなことを言うな。」
累「誤解って---」
「孝様は医術は完璧だが常識に関しては緩んでるからな。多分・・・いや絶対誤解すると思うぞ。」
累「・・・・・・。」
「-----んだと。」
仁「あわわわわ!有希さん!」
俺の常識が緩んでるだと?
なんて失礼な女だ。
そもそもお前に常識を語られたくねぇ。
(チッ・・・)
こんな女にキスしたいだの抱きしめたいだの・・・
ある意味俺の頭はマジでどうかなっちまったんじゃねぇか?
常識の前にそっちを疑う。
有「いててててて!」
とりあえず、ムカついたんで頬を抓ってやった。
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