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玲「だから、何度言ったら分かるの?これ以上透ちゃんには手を出すなって言ってるの。」
晋「何言ってんだてめぇ。透は俺のモンだ。お前こそ手ェ出すんじゃねぇ。」
「・・・・・・。」
俺は夢でも見てるんだろうか
それとも疲れすぎて幻覚が見えてるんだろうか
玲「・・・ちょっと、俺のモノってなに?透ちゃんは晋のじゃないだろ。」
晋「あいつは俺のだ。」
玲「は?なんで?」
晋「なんででも。」
玲「意味分かんない!」
お、俺も・・・
玲「言っとくけど!透ちゃんは晋なんかにはあげないから!」
晋「なんで。」
玲「なんででも!」
晋「意味分かんねぇ。」
え
え
えぇ・・・
(おいおい・・・お前ら何言ってんの?)
白熱する玲と晋。
なんとなく置き去りにされた気がするっていうかタジタジっていうか・・・
「・・・・・・。」
とりあえず酒を口に運ぶ。
うーん、まったく味がしない。
とにかく・・・
何がどうなってこんなことになったかというと
事の発端は、玲が言ったこの一言。
玲「あのさ・・・透ちゃんとのゲーム、やめない?」
どういうつもりで言ったのかは知らない。
透ちゃんに飽きたのか、それともほかに理由があるのか・・・
「やめたいならやめれば?俺はぜんぜん構わないけど。」
とりあえず俺は、その言葉を「玲=ゲームリタイア」という意味で受け止めた。
何度も言うがそれはぜんぜん構わない。
ゲームプレイヤーが一人減るだけ。
それだけのことだ。
だが・・・
それだけじゃ終わらなかった。
晋「ゲームをやめようが続けようがどっちでも構わねぇよ。」
玲「良かった。それじゃ--」
晋「そんなことより・・・お前らに言っておくことがある。」
「?」
玲「なに?」
晋「これ以上、透には手を出すな。」
玲「・・・へ?」
「は・・・」
(な、なんだって・・・?)
晋がどういうつもりでそう言ったのかは分からない。
そして・・・意味も分からない。
だって、手を出すな?
なんで?
玲「・・・それ、どういう意味?」
そして更に意味不明な事件が発生。
ついさっきゲームやめるなんて言ったくせに・・・
すっごい怖い顔で玲が晋の言葉に食いついた。
晋「どういう意味も何も。そのままの意味だ。」
玲「ふざけるな。ちゃんと説明しろよ。」
「・・・・・・。」
そんなこんなで勃発した言い争い。
内容はというとお互い「透ちゃんに手を出すな」と主張。
しかも両者共に一歩も引かない。
(お、おかしい・・・)
そんな燃え上がる二人を見て固まる俺。
だって---なんだか着いていけない。
ていうか入り込む隙がない。
それに・・・
(それに・・・これじゃまるで--)
晋「とにかく、透は俺のモンだ。今後一切あいつには手を出すな。」
ギラリと目を光らせ俺と玲を睨んでくる晋。
うん、相変わらず男前だねお前。
玲「だから、それはこっちのセリフだって。晋も辰巳も透ちゃんには手を出すな。」
珍しく鋭い視線で俺と晋を威嚇する玲。
うん、そんなお前も可愛いね。
---じゃなくて!
(なな、なに言ってんのお前らマジで・・・)
これじゃ、これじゃまるで・・・
お前ら二人、透ちゃんを奪い合ってるみたいじゃないの。
(う、うそだろどうなってんのこれ・・・)
当初の予定では
「こんなの初めてだよなぁ。さすが透ちゃん、マジびっくり。で、お前ら次の作戦どうするつもり??」
なんて話題で盛り上がるつもりだったのに・・・
晋「お前も分からねぇヤツだな。透は俺のだって言ってんだろ。」
玲「違うよ!晋のモノにするくらいなら俺がもらう!」
「・・・・・。」
こいつは激しく予想外だ。
だってどう見てもこいつら・・・
透ちゃんに揺さぶられてる。
しかも〝ちょっと〝じゃない
がっつり揺さぶられてる。
(し、信じられねぇ・・・)
あの晋が?
あの玲が?
女に?心を揺さぶられてる?
いやいや無い、有り得ない。
玲「ていうか辰巳、ちゃんと聞いてる?」
「え、え・・・?」
玲「もー!大切な話してるんだぞ!」
「・・・・・。」
ご、ごめん。
ちゃんと聞いてたけどあまりの衝撃に意識がトリップして・・・
晋「そういや辰巳。」
「え?」
晋「・・・お前に聞きたいことがある。」
「え、な、なに?」
晋「・・・・・。」
「・・・?」
怜から視線を逸らしじーっと俺を見つめてくる晋。
どうやら言い争いは一時中断らしい。
でもお願い・・・
今は難しい話はやめて。
晋「透の会社で俺に言ったこと・・・覚えてるか?」
「え?」
玲「?」
透ちゃんの会社で?
晋「・・・"ムリヤリ抱くな"。」
玲「え・・・」
晋「なんであんなこと言った?」
「・・・・・。」
眼光鋭く睨んでくる晋。
ついでに玲まで眉根を寄せて視線をよこす。
(ふーん・・・)
なるほど、そういうこと。
「なんでって・・・説明しなくても分かってるだろ?」
こいつらも感じたんだろう。
あの男らしい透ちゃんの"女"の一面。
そして--
透ちゃんが抱えているらしい「何か」を。
「「・・・・・・。」」
「な、なんだよ・・・」
怖っ・・・
なぜか2人して思い切り睨んできやがった。
玲「まさか辰巳・・・透ちゃんをムリヤリ襲ったとかそんなんじゃないよね。」
「え。」
晋「てめぇ・・・」
おいおい。
「全部は否定しないけど。でもお前らだって似たようなもんだろ?」
玲「は?」
晋「どういう意味だよ。」
「あの透ちゃんが抵抗することなくお前らに抱かれるとは思えない。」
「「・・・・・・・・。」」
押し黙る2人。
どうやら図星のようだ。
玲「とにかく、ゲームはもうやめようよ。透ちゃんもやめたがってるし・・・」
「・・・・・。」
玲「それと何度も言うけど・・・これ以上透ちゃんには手を出さないでよね。彼女は俺が--」
晋「ふざけるなよ玲。お前こそ透に手を出すな。」
玲「だからそれは--!」
「はいはいお前らストーップ。」
「「-----?」」
いい加減にしてくれよ。
振り出しに戻るつもりか?
そんなことより今は--
「ていうかさお前ら・・・透ちゃんに惚れちゃったわけ?」
こいつらの争いを目の当たりにすれば誰だってそう思うはずだ。
透に手を出すなだの透は俺のモンだだの・・・
コレって言い換えるとアレだろ?
俺は透ちゃんが大好きです!ってことだろ?
晋「透に惚れただと?バカかお前。あんな男女、全然好みじゃない。」
玲「そうだよ辰巳。俺が落ちるわけないじゃん。」
「・・・・・・。」
なんと・・・
両者ともにあっさり否定。
「それじゃ、俺が透ちゃんに手ェ出しても問題ないよな?」
晋「ふざけんな。」
玲「やめてよ。透ちゃんが汚れる。」
「・・・・・・。」
おいおい。
(・・・めんどくせぇなぁ。)
「とにかく・・・二人とも透ちゃんから手を引く気はないんだろ?」
晋「ない。」
玲「ないよ。」
「それじゃゲーム続行ってことでいいんじゃないの?」
「「------。」」
誰も手を引かない=ゲーム続行
そういうことだろ?
ていうか晋と玲の態度を見れば今の時点で俺の勝利は決まった気がするが・・・
まぁいい。
こいつらが認めない限り透ちゃんに心を奪われたかどうかを確認する術はない。
とにかく---
俺だって今回は・・
そう簡単に身を引いてやるつもりはない。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
ざわめく店内。
その中でまるで音を奪われたように
鋭い沈黙が走った。
玲「---二人がゲームを続けるなら俺も続ける。でも・・・透ちゃんは絶対譲らないから。」
晋「上等だ。だが諦めろ、あいつは俺のモノにする。」
「悪いけど・・・今回は俺もマジで行くよ。せいぜい頑張りな、二人とも。」
ギラリ、と音が聞こえてきそうだ。
まるで威嚇するように睨み合う--
「「・・・・・・。」」
「え・・・」
いや間違えた。
なぜか威嚇するように二人から睨まれた。
ここは3人で「お前らには負けないぜ!」なんて火花散らす場面じゃないの?
なんで俺だけ敵扱いなわけ!?
玲「じゃ・・・俺、明日早いから帰るね。」
晋「俺も。」
しばらく続いた沈黙の後、玲がボソッとつぶやいた。
てういうかもう帰るわけ?晋も?
「俺はもう少し残る。」
まだ飲み足りないし・・・
それに
なんとなく、熱が冷めない。
玲「じゃあ今日はよろしくね。」
晋「ごちそーさん。」
「あぁ。」
どうでもいいことだが、3人で飲みに行った時は最後に残ったヤツが全員分支払う。
そんなルールがいつの間にか出来上がってた。
ま、ほんとにどうでもいいことだな。
玲「それじゃ、またね。」
晋「飲みすぎるなよ。」
「あぁ、お休みー。」
軽く手を振り俺に背を向ける晋と玲。
相変わらず目立つ奴らだよな・・・
店中の客の視線集めながら出口に向かい
それを気にとめることなくドアの向こうに消えて行った。
(あーあ・・・)
少々複雑な気分で残った酒を喉に流し込む。
「はぁ・・・」
なんだか今日は
酔える気がしない・・・
・・・GAME「三者会談」完
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