約束

約束 11 ~GAME


<玲>






透ちゃんとのエッチは








しばらくお預けにしようと思った。








どういう心境の変化だよって?


え、失礼だな。
別に体調が悪いわけじゃないよ。







お預けしようと思ったのにはもちろん
ちゃんと理由がある。







そのきっかけはまぁ・・・







昨日のアレだよね。







昨日の夜

寝ぼけた透ちゃんに忍くんと間違えられて
泣きながら謝る彼女を目の当たりにして




正直言って・・・






すごくショックを受けた。






抱きしめた体が予想以上に震えてて
背中を擦っても頭を撫でても治まらなくて






なんだか胸が苦しくなった。






元々女の子の涙を見るのは苦手だ。

昨日は特にそう思った。

透ちゃんのこんな涙・・・
二度と見たくないと思った。






あ、でも勘違いしないでね。

昨日のことで透ちゃんに特別な感情が芽生えたわけじゃないよ。






ゲームやめるだの友達だの色々言っちゃったけど

俺にとって透ちゃんは所詮「女の子」

「落としたい対象」ってことに変わりはない。
ついでに言うとそれ以上の感情もない。





ただ・・・





昨日の透ちゃんを見たら誰でも心配すると思う。

何かあったのかな、大丈夫かなって。

俺も同じだよ。

さすがにちょーっと気になるっていうか・・・






「・・・・・・。」







ごめんウソ。







実はすっごく気になってる。







「あーもう・・・眠れないよ。」







あれから自分の家に帰ってシャワー浴びて、少し眠ろうとベッドに潜り込んだ。


けど眠れない。

さっきの透ちゃんが気になって眠れやしない。






「うーん、んー・・・」






ベッドの上をゴロゴロ転がってみる
枕を抱きしめ丸くなってみる


そして目を瞑ると思い出す







泣きながら謝る、弱々しい透ちゃん・・・







「・・・一体、なんだったわけ?」







余計な詮索なんだろうけど・・・

なんで泣いてたのか
なんで謝ってたのか

気になって気になって仕方がない。







そして、気になることといえばもう一つ。







「---シノブって、何者?」







枕に向かって独り言。


勝手な予想だけど

透ちゃんが寝ぼけて呼んだシノブと司くんが言ってた忍くんは同じ人、だよね?


つまり忍くんって

①透ちゃんと司くんの共通の知り合いで
②色んな意味で軽い関係ではないっぽい人

こんな感じ?






「司くんと忍くんは・・・仲良しって雰囲気だったよね。」






直樹くんにも今度紹介するって言ってたし。






じゃあ、透ちゃんと忍くんは?






「うーん・・・」






透ちゃんと忍くんは

仲良し、ではないよね。






だって泣いてた。
震えてた。






それに---謝ってた。






何度抱かれてもお前を好きにはなれない

だからごめん、って






「どういう意味なんだろ・・・」






謎が多すぎて言葉の意味が良く分からない。




ま、それは置いといて




透ちゃんの言葉から分かるのは
2人の間に「体」の関係があったってこと。

「何度抱かれても」って言ってたし、その関係はかなり親密っぽい。






でも---






2人は恋人同士ではない、よね






恋人なら「好きになれない」なんて言わないだろうし
そもそも透ちゃんの反応を見れば一目瞭然だ。


じゃあ・・・元彼とか?


いやいやそれもないか。

もしそうならあの最強番犬・司くんが黙ってない。
別れた男と透ちゃんを引き合わせるはずが無い。






それじゃ一体、どんな関係・・・?






「・・・・・・・・。」






ダメだ。
さっぱり分からない。

分からないことだらけでモヤモヤす--







「あ・・・!」







来た・・・





見事な閃きに思わずベッドから飛び降りた。






「もしかして・・・」






もしかして透ちゃんと忍くんって









エッチ友達だったんじゃない?









「なるほど、なるほどね・・・」






---エッチ友達

それはすなわち、体だけの付き合いの異性

その間に「好き」とか「愛してる」なんていう感情はない




つまりこうだよ。




二人は司くんも知らない秘密のエッチ友達だった。

だけどいつしか忍くんは透ちゃんを好きになっちゃって

でも透ちゃんはそれに応えることが出来なかった・・・







「ちょっと・・・冴えてるじゃん、俺!」







勢い良くベッドに飛び込んだ。
ついでに天井に向かって勝利の拳をあげる。

確証は無いけどこれしか考えられない。
謎が解けるっていい気分。






「あー、すっきりした・・・」






それにしても







忍くんってすごい人だよね・・・







だってあの透ちゃんをエッチ友達にしちゃうんだよ?

しかも司くんに(多分)悟られずに。

おまけに今でも友達関係を保ってるみたいだし。






「うーん・・・」






半分振り出しに戻るけど

忍くんって一体何者なんだろう。



司くんの話から予想すると年は離れてる感じじゃないよね。

もしかして学生時代の先輩?後輩?

それとも---









「・・・幼馴染?」

司「そ。」









時は本日。

約束通り、皆で司くんの家に遊びに来た。


そこで分かった新事実。







忍くんは、まさかの幼馴染だった。







(えー・・・)







正直言って、すごく意外だ。






だって幼馴染って・・・

人間関係の中でもかなり絆が強い方だよね。

実際にアルバムの中の3人はとても仲が良さそうで、まるで本当の姉弟のように見える。




なのに・・・




透ちゃんと忍くんには体の付き合いがあって

しかも泣きながら謝らないといけないようなドロドロした関係だった・・






「・・・・・・・。」






複雑だなぁと思った。

しかも現在進行でトラブルを引きずってるみたいだし






だけど







面倒臭いなとは思わなかった。







ちょっとビックリだった。

だっていつもの自分なら確実に面倒だと思うはず。

巻き込まれないようにしようとか
上辺だけの関係をキープしよう、なんて思ったと思う。



でも・・・



透ちゃんとは一応「友達」だし
それに人間的にも好きだから。

困ってたら助けてあげたい。
泣いてたらもちろん慰めてあげたい。

そう思う。








まぁ、そんなこんなで








透ちゃんとエッチするのは

しばらくお預けにしようかなと思った。








心の傷ってこじらせると大変だし

無理に迫って透ちゃんを傷つけるのも嫌だからね。

そこら辺は大人なんだよ俺。
辰巳や晋とは人間的にレベルが違う。















なぁんて思ってた大人の俺は















一体どこに消えちゃったんだろう。