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『いらっしゃい・・・・あ、累!』
累に連れられて店に入ると、店員が累を見ておぉ!という顔をした。
累「おーっす。」
店『久しぶりだな!他の4人は良く来るけど・・・お前最近顔見せないから心配してた!』
累「ごめんごめん。」
最近顔見せないって・・・
え、もしかして私に付き合ってたからか?
そういや桜館に来て累たんはずっと作業を手伝ってくれてた。
そして夜の酒も。
(る・・・累たーん!お前・・・・お前って奴は!!)
大学ではいきなりチューかまされた時はビビッたが
やっぱお前っていい奴!
さすが心の弟。
私の目に狂いはない。
店『今日はほら、純が来てる。』
「「え-------?」」
累とハモって店員さんが指差す方を見ると
可愛らしい女の子と並んでカウンターに座っている純君を発見。
ざわつく店内。
こっちには気付く様子が無い。
(可愛い彼女だなぁ・・・)
彼女さんは緊張している様子。
肩を竦めて少し俯き加減だ。
非常に微笑ましい。
店『あれ、気付かないな。呼んでくるよ。』
「い、いいっすよ。邪魔しちゃ悪いし。ほら、座ろう累。」
累「うん。」
純君から少し離れたカウンター席。
目が合わなければ気付かれることは無いだろう。
店「累はいつものでいい?」
「ああ。」
店「彼女さんは・・・」
「焼酎置いてます?」
店「もちろん!」
「じゃあ銘柄は何でもいいんでロックで。」
店「ロック?」
「ロック。」
今日はスタートから焼酎。
次は日本酒いって、それから・・・
いやいやちょっと待って。
今なんか…変な言葉が聞こえなかったか?
「・・・あいつ今、彼女さんって言わなかった?」
累「言ったね。」
「・・・気付いたなら否定しろよ。」
累「なんで?」
にこにこしながら顔を覗き込んでくる累。
こらこら、なんすかその表情は。
「なんでって・・・そんな勘違いされたらお前の彼女に申し訳ないだろ?」
累「彼女?」
「あー、やっぱ初めの格好で来ればよかった。」
累「え?」
こっちを見つめたままパチパチと瞬きする累。
なにその反応。
意味分かんねぇ。
累「やっぱ・・・有希って変な奴。」
「は?」
それこそ意味が分からない。
店『はーいお待たせしましたー!』
「あ、どうも。」
酒、到着。
累「取り合えず。乾杯しよ。」
「あぁ、ではでは--」
累「初デートにカンパーイ!」
「何言ってんだお前。乾杯。」
心なしか楽しそうな累。
行動も言動も意味不明。
累たんも十分変な奴だと思います。
とりあえず乾杯だからな。
キュッと一気に飲み干した。
店「わ、彼女さんお酒強いんすね!次は何飲みますか?」
「今のと同じで。ていうか彼女じゃないっす。」
店「え?」
「焼酎ロックで。で、彼女は無しの方向で。」
店「え・・・えぇ?」
わたわたと酒を作る店員さん。
出来ればジョッキに入れてはくれないだろうか。
そんな小さなグラスじゃすぐに飲み干してしまう。
累「今日は初めから飛ばすの?」
「こういうとこで飲む時はちびちびやってたら金がいくらあっても足りねぇじゃん。だから初めからぐーっとやるわけ。」
累「そんなの気にしなくていいって。今日は俺が誘ったんだから全部俺に任せろよな。」
「え。」
ちょっぴり睨み気味で視線を寄こす累。
ていうか---
「学生さんが何言ってんだ。自分、一応社会人なんで。今日は私に任せなさい。ていうか飲む量半端じゃないし。」
累「ダメ。」
「いやいやダメじゃなくて--」
累「絶対ダメ。」
「なんで。」
ダメの意味が分からない。
私の飲む量を甘く見るなよ?
最近一緒に飲んでて分かってるだろ。
中途半端じゃねぇぞ?
ガッツリやるぞ?
累「女の子に出させるなんて・・・考えられない。」
「は・・・・」
おやおや・・・
「・・・・・ふーん。」
累「・・・なに。」
「累たんの男らしい一面を見てしまった。」
累「え?」
最近は割り勘が多いと女子友に聞く。
合コンとか行かないから良く分からんのだが・・・
---女の子には出させない
現金・・・ってワケじゃないけど
女子はそういうところに惹かれてしまうもんです。
可愛いくせに。
なかなかやるじゃないか。
「でも他の女子に優しくしたら彼女が悲しむぞ?気をつけろよ。」
累「・・・そんなのいないから。」
「はいはい。」
別に嘘をつく必要はない。
君みたいに可愛い---
同年から見たらきっとカッコいいんだろう男子に彼女がいないわけ無いじゃないか。
店「どうぞー。」
「どうも。」
出来上がったグラスを受け取る。
そしてくいっと流し込みそのままおかわり。
店「す、凄いっすね。」
「え?あ、あぁすみません作るの大変っすよね。あの、ボトルとか無いんですか?」
店「あ、ありますよ。」
「じゃあ今飲んだヤツが欲しいです。自分で作るのでセット持ってきてもらえます?あと出来ればジョッキも。」
作るのはやります!
と言い張る店員さんを押し切り、焼酎と氷のセットを持ってきてもらった。
簡単に言えばオヤジの晩酌セットですな。
近くに座ってた女子から軽く驚きの視線を頂いた。
「累は?お前もこれ飲むか?」
累「後で貰う。」
「そ。」
出来ればボトル二、三本持ってきてもらえると嬉しいんだが・・・
でもまぁここは自宅ではないからな。
少しは人目を気にしようと思う。
「本と凄く強いんですね。あ、俺は仁っす。宜しくお願いします!」
「あ、どうも。有希です。」
ボトルを貰って二杯目を流し込んだ時、店員さんから自己紹介された。
そういえばここって累の知り合いの店だったよな。
この人がそうか?
「累が言ってた知り合いって、仁君?」
累「そ。俺ら高校の同級生なんだ。」
「へぇ。」
累「それにここ、あいつらも良く来るよ。」
「ふーん、桜館ご用達ってわけか。BAR・Black。あいつらにぴったりのネーミングだな。」
仁「あいつらって・・他の皆のことも知ってるの?」
累「ああ。」
仁「やっぱり、有希さんって累の彼女っすか?」
「違います。」
なんでそこに流れるんだ?
私と累。
どう見ても姉ちゃんと弟じゃん。
あ、そうか、店内が暗いから。
累「そう見えるだろ?」
「こら累、お前も否定しろよ。」
累「なんで。この際付き合っちゃおうよ。」
「バカかてめぇは。そういうのは軽く言っちゃダメだろ。彼女が聞いたらショック受けるだろ?」
累「だから、いないってば彼女。」
「へー、そうなんだ。」
仁「あの・・・・」
「「 ? 」」
そろーっと右手を上げて質問いいですか?のポーズをとっている仁君。
え・・・そういうノリで来んの?
乗らなきゃダメな感じ?
「え、えー。じゃぁ次の質問は、仁。なんでも先生に聞いてみろ。」
累「・・・・・・・・・・。」
仁「はい先生。さっきから見てると累が有希さんを口説いてるように見えるんですが、そこのところどうなんでしょうか。」
「・・・仁、君の観察力はネジが緩んでる。明日までに観察力についてレポートまとめて提出しろ。」
仁「えっ----えぇぇぇ!!?」
累「仁はおかしくないよ。俺、有希のこと好きだもん。」
「!」
るる、累たん---!
(どんだけ私の心を擽れば気が済むんだお前はー!)
『俺、姉ちゃんのこと好きだぜ!』
もしこんな可愛い弟がいて、もしこんなこと言われたら・・・
もしかしなくても「あー!!」ってなるだろ!
もはや累の醸し出す空気に頭の中まで呑まれそうだ。
いやむしろ呑まれてしまいたい。
「ありがとな累。私もお前が好きだぞ。だがな、仁君に変な誤解されたら困るだろ?何度も言うが気をつけろよ。」
累の肩に腕を回しぽんぽんと叩いてやる。
顔を覗くとふてくされ顔で睨まれた。
が、ムダムダ。
そんな顔しても全然怖くありません。
仁「累にも落とせない女子がいるんだ・・・」
「・・・は?」
累「------。」
呆然と立ち尽くす仁君がぼそりと呟く。
ていうか何言っちゃってんのお兄さん。
そんなジョーク、全く面白くないっすけど。
「取り合えず・・・・・・飲んどこうか。」
仁「べ、別にスベったんじゃないっすよ!」
グラスを持ってなかったので私のヤツを差し出した。
のだが・・・
苦笑いしながら遠慮された。
わけが分からない。
「さすが桜館住人の知人だな。類は類を呼ぶ。仁君もやはり変人か。」
累「何それどういうこと。」
仁「"も"ってなんすか!!」
「言葉通りの意味だよ。」
焦る仁君を笑い飛ばし、タバコに火をつける。
累「タバコ吸ってたっけ?」
「普段はあんまりやらないけどな。酒飲む時はかなり吸うよ。」
累「ふーん。似合わない。」
「良く言われる。でもな?酒+タバコってすっごい酔えるような気がするんだよなー。こう、くらくらーっと。」
天井に向かって紫煙を吐き出す。
ノロノロと立ち上る煙を目で追って
そしてふと視線を落とすと・・・
「あれ。」
累「どうした--------あ。」
視線の先にいたのはいつの間にやって来たのか
仁「あ、孝さんだ!」
そう、俺様孝様。
隣にはそこだけ違う世界かってくらい別嬪なお姉様が座っていた。
正にメガ美人。
一生掛かってもあんな風に美しくなれない自信がある。
「すっげぇ美人だなあいつの彼女。おっぱいでかいしスタイル抜群じゃん。さすが俺様。」
累と仁君と顔を近づけてひそひそと密談タイム。
気分は中学男子だ。
仁「本とっすね!うわー超セクシー。どうやったらあんな人口説けるんだろ。教えてもらいたいっす。」
「聞いててやろうか?一杯おごりで手を打ってやるぞ?」
仁「マジっすか!?」
累「あれ、彼女じゃないよ。孝も彼女いないし。今日の相手じゃない?」
「はぁ?何言ってんだお前。あんないい女逃したら次はねぇよ。絶対彼女だって。」
仁「ですよね!うわ見てくださいよ!美女が孝さんに----!」
「おいおい仁君、そんなじろじろ見るんじゃねぇ。気付かれるじゃねぇか------って・・・」
「「「あ・・・」」」
俺様と
目が合った。
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