約束

約束 10 ~GAME





「れ、玲くん・・・?」

玲「・・・透ちゃん、ごめん。」

「は・・・」

玲「・・・ごめんね?」






ごめんねって・・・え?

今のちゅーのこと?
もしかして悪いと思ってんの?



まぁ・・・普通なら許さないだろ。
切腹すると言われても許しがたい。



しかし






(ちょ、ちょっとちょっと---!)






①キュッと噛みしめられた唇
②ごめんなさいと寄せられる眉根
③様子を伺うように向けられる上目遣い


そんな

そんな悩ましげな顔で謝られたらお前・・・







そりゃ怒りもぶっ飛ぶわ。







玲「・・・ごめん。」

「いや、あの・・・」

玲「透ちゃん・・・」

「っ!わわ、分かった!反省してるのは分かったから!」






甘い。
甘いぞ透。

だが今の玲くんを怒るなんてムリだ。
むしろ頭を撫で回してやりたい。






玲「ねえ、透ちゃん。」

「えーとあの・・・と、とりあえず座り直そっか!」

玲「・・・・・。」

「のの、喉渇かないか!?コーヒーでも作ってくるからさ!ほら、退いて退いて--」


玲「エッチしたい。」









・・・え









(な、なんですと・・・?)






相変わらず恥らう乙女のように頬を染めて
目なんかまるで子犬のようにうるうるさせて

そんな可愛い顔してお前・・・







今、なんと?








玲「透ちゃんと、エッチしたい。」








(・・・・・・・。)








「あ、あの玲くん。一体なにを言いやがって---」

玲「ダメ?」

「・・・・・。」






か、可愛い。






じゃなくて!






「な、何言ってんだよ玲くん。冗談きついぞ。」

玲「・・・・・。」

「あ、もしかして冗談だった?笑いを取って私を元気付けようと--」

玲「そそられた。」






・・・は?






玲「透ちゃんの泣き顔・・・すごくそそられた。」

「へ・・・」






なな、泣き顔?






玲「可愛すぎて心臓止まるかと思った。」

「・・・な、何言っちゃってんの君。私は断じて泣いてません。コンタクトがずれただけです。」

玲「もう・・・あれは反則だよ透ちゃん。」

「いやいやだから---ちょ、え!?」






悩ましげに目を伏せてため息を吐く玲くん。

そしてうっとりと目を開き再び距離を詰めようと顔を寄せてくる。






「コ、コラ!何するつもりだ!」

玲「なにって・・・もう我慢するのムリ。キスさせて?」

「は---は!?」






キス?
キスさせろだと?






「な、何言ってんだ君は!ちゅーしてゴメンって・・・たった今謝ったばっかだろ!」

玲「え?」






え?じゃない!






「とぼけるな!そ、それにっ---!変なことしないって言ったじゃないか!約束はちゃんと守れ!」

玲「約束?・・・あぁ・・」






いかにも「忘れてました」って顔の玲くん。

だがな・・・


--透ちゃんと一緒にいたいから
--だから変なことしない

家に来る前に誓っただろ。
忘れたとは言わせんからな!







玲「だから先に謝っとくね、ごめん。」








・・・。








・・・え?









玲「約束守れなくてごめんね?」

「・・・・・。」









(な、なにそれ・・・)






まさか、まさかだけど・・・
さっきから言ってるごめんってそういう意味?

変なことしないって約束したけど・・・
やっぱり変なことしたいから約束破るね、ごめん。

みたいな?







「ふ、ふざけんなー!」

玲「わっ・・」







ゴメンで済んだら約束なんていらないんだよ!

ていうかまだギリギリ間に合うだろうが。
謝る前に守る努力をしろ!






「いい加減にしろよ玲くん!今ならまだ許してやるから!バカなこと考えてないでさっさと--」

玲「よいしょ。」

「あ!コラ!何すんだ!」

玲「だって透ちゃんが暴れるから。ちょっと大人しくしててね?」

「ちょっ、うわっ!」






拘束していた両手首をグイッと持ち上げられた。

そしてあろうことか・・・
頭の上で一まとめにしやがった!






玲「よし、これで右手が使える。」






手をヒラヒラさせながらへへっと笑顔。

ていうかさらっと怖いこと言うな!






(な、なんなんだよこの王子----!)






さっきまでは普通だったのに

俺がいるよ、透ちゃんの味方だよ、なんて友達の中の友達面してたくせに・・・

この---裏切り者め!






いやいや待て待て!
今はそんなこと考えてる場合じゃない!






「ちょちょちょっと待て玲くん!話を聞いてくれ!」

玲「えー、なに?」

「この前言ってたよな!ゲームやめるって!」

玲「うん、やめた。」

「私達は友達だよな!」

玲「うん、友達だよ。」





よ、よーし!





「だったら今すぐ退きなさい!」

玲「なんで?」

「なんでって---友達同士でこれはおかしいだろ!」

玲「え、おかしくないよ。」

「お、おかしいんだよ!だいたい君は---!」

玲「ふふっ」

「---は!?」







玲「泣き顔も良かったけど・・・怒った顔も可愛いね。」


「・・・・・。」







ダ・・・







ダメだこいつ!







「て、てんめぇいい加減にしろよ!もう怒ったマジで怒った!今すぐ退け!じゃないと絶交だ!」

玲「えー。」

「マジだぞ!マジだからな!」

玲「・・・絶交は嫌だ。」

「だったら---」

玲「ねぇ、そんなに怒らないでよ透ちゃん。」

「-----!」









玲「絶交するなんて言えないくらい

 気持ち良くしてあげるから。」












細められた玲くんの目が








青く光ったような気がした。








「------っ・・!」








思わず、息を呑んだ。








もちろん急に頬を撫でられて驚いたからってのもある。








でも・・・

なんか違う。








さっきまでの可愛い玲くんはどこへ行ったのか

ゆっくり近づいてくる別人かと思うほど鋭くて

そして・・・








寒気がするほど、色っぽい。








(ちょっと・・・待っ・・)








こいつは一体誰だ。








こんなの・・・

こんなの私の知ってる玲くんじゃない。








「・・・・・っ--!」








あまりにも「男」な玲くんに気圧されて








背中に嫌な悪寒が走った。