約束

約束 09 ~GAME





忍の話題に冷や汗かいたり
玲くんの「大丈夫」にうっかり涙が飛び出たり

今日はヤケに感情を揺さぶられる日だ。







だからだろうか







「----ん?」







唇に柔らかな感触を感じても
玲くんの長い睫毛を至近距離で直視しても

まるで夢でも見てるかのように
我が身に何が起きてるのか良く分からなかった。







だがそれも








熱い舌の侵入であっさり終わりを告げる。








「---ん!?んぅーっ!」







もはや無条件反射。

無意識に手が動き玲くんの肩を力いっぱい押し返す。




しかし---王子もやはり男。




懇親の抵抗虚しくあっさり拘束される手首。

そしてあろうことか体ごとソファーに押し倒された。






「ちょっ---えっ?やめ------んっ!」






一瞬だけ解放された唇。
だがすぐに塞がれた。





(----?------!?)





意味不明な展開に頭が動かない。

ついでに体も動かない。
なんて無駄の無い押さえ込み。





「なにすんだコラーっ!!」





思い切り叫び散らしたい。




だがムリだ。




追い詰めるように塞がれる唇
黙ってろとでも言うように口内を蹂躙する舌

さっきまでの穏やかエアーはどこに捨てたのか。

今の玲くんは正に獣。
叫ぶどころか呼吸すらままならない。






(やめんかコノヤロー!!)






とりあえず足をバタバタやってみた。









ていうか、なにこれ。









一体何が起こってるんだ?









もしかしてだけど

これってまさかの君流友情表現じゃないよね。



-- 友達が泣く姿なんて見てられないよ。
-- キスしてあげるから泣かないで、ね?

みたいな?






いやいやふざけんな!

こんな過激な友情お断りだ!







「ん----ぅ・・・!」







それにしても・・・







これは、非常にヤバイ状況だと思う。







そうだろうな、とは思ってた。

そして不運なことに予想は的中。







やっぱり玲くんも








キスが上手い。








「ん・・・!」







じゃれるように唇をぺロリと舐めてみたり
裏腹に熱っぽく舌を絡ませてきたり


変態による余裕たっぷり大人キスとも違う
俺様による怖いくらいの甘いキスとも違う


可愛らしいのに情熱的というか・・・

そんな無邪気なキスに








ヤバイくらいにクラクラする。








そして困ったことに
ヤバイ理由がもう一つ。


それはね・・・








さっきから、リアルに息ができない。









「---、・・待っ---!」






今の今まで泣いてたんだぞ?

それなのにこんな激しいキス・・・







今の私に、耐えられるワケがない。







「れい、く---!」

玲「・・・・・。」

「苦---し・・!」

玲「-----。」






---殺される






ふと不吉な予感が頭を過ぎった。






(まさか、まさかね・・・いやいや絶対本気だろコレー!)






命の危機だ。
さっきより激しく足をバタバタやってみる。



頼むよ玲くん。

お願いだから息継ぎさせて---!










「-----っ!?・・・は、ぁっ!!」







死んだ!と思ったその時

台風もビックリな勢いで酸素が入り込んできた。






「はっ!はぁっ!ぜぇっ!!---はぅっ!」






く、苦しい。
マジで苦しい。

全力マラソンの3倍苦しい。






「ぜぇっ!ぜぇっ!」

玲「・・・・・・。」

「はぁっ!ゲホゲホ---ッ!」

玲「・・・透ちゃん、大丈夫?」






激しく咳き込む私
そしてなぜか頭を撫でてくる玲くん


ていうか大丈夫かだと?

なんて白々しい。
見ての通りじゃコラ!







「てっ、てんめぇこの---!ふざけんなッ!」






怒った。

もう---怒ったからな!






「一体なに考えてんだ君は!死ぬところだっただろ!」

玲「・・・・・。」

「その前に何でキスした!まさか友情キッスなんて言わないだろうな!?」

玲「・・・・・。」

「ていうか退け!いつまで乗っかってるつもりだ!」

玲「・・・・・。」






怒りポイントが多すぎて自分でも何を言ってるのか分からない。

とにかく私は怒っている。
色んな意味で怒り爆発。






「とりあえず手!手ェ放せ!」

玲「・・・・・。」






ギラリ!

音を鳴らす勢いで玲くんを睨み上げる。

正にカミソリアイ。
今なら視線で殺れそう。





「聞いてんのか!?さっさと放さないと本気出すぞコラ!」

玲「・・・・・。」

「ほら!早く!」

玲「・・・・・。」

「おいコラいい加減に---!」









(・・・え?)










突然ですが

思考がフリーズ。








だって、なにコレ。








「れ、玲くん・・・?」







すぐ目の前の王子はいつも通り
とっても綺麗な顔で私を見つめている。





だがその瞳はキラキラと潤み

すべすべの頬はなぜかポッと紅く染まってて







「え、えと、あの---?」







どうした。
どうした玲くん。










なんでそんな可愛い顔してんの。