BAR・Black Part1

BAR・Black Part1 / 2 SAKURA∞SAKU first




累「入っておいでよ。もう少しで準備終わるから。」

「ほーい。失礼しますよー。」






どうやらまた準備中らしい。

とりあえず中で待たせて貰おうとドアを開けた。






「おー、意外と片付いてんだな。」






色んなポスターやら小物が多いが整理整頓された部屋。

基本黒で固めているがアイテムがカラフルで部屋全体が明るい。

これぞ男子の部屋だぜ!って感じだ。






累「昨日片付けたばっかり。いつもはもっと散らかってるぞ。有希はラッキーだよ。」

「そっか。」






あとは上着、と薄手のジャケットをクローゼットから取り出し羽織る累。

ほう、なかなかセンスが良いようで…






「・・・その上着、いいな。」

累「え、こういうの着る男が好み?」

「いや、自分用に。」

累「自分用にって・・・これ男物だぞ。」

「そうなんだけどな。」






女子らしいひらひらしてる服も鑑賞するのは大好きだが・・・

基本ボーイッシュな服を好んで着る。

特に飲みに行く時は男子スタイルを心がけているというか・・・



ま、その結果---







良く男子に間違われます。







累「そういえば・・・・今日は一段とボーイッシュだな。」

「ああ。」

累「・・・なんで?」

「なんでって・・・声掛けられたら面倒だろ。」

累「声掛けられる?・・・・・あぁ、男から?」

「そ。」






夜ってそういう世界だろ?

酒が入ると気持ちも大胆になるし

男は女を、女は男を求めて声を掛け合う。



私はというと飲んで酔って眠りたいだけだからな。

そういう関係は求めてない。






累「良く声掛けられるんだ?」

「良くっていうか・・・誰にでも声掛ける奴っているじゃん。あんまり慣れないんだよそういうの。だから初めから男の格好して行くんだ。」

累「ふーん・・・・」






何を思ったか、じっと見つめてくる累。

どうした。

早く行くぞ。






累「今日は俺が守るからさ。可愛い格好してよ。」

「・・・は?」

累「ほら!早く着替えに行こう!」

「え・・・・・え!?」






肩を押されて私の部屋へとリターン。

わけが分からない。






累「ほら選んで。」

「え、選んでってお前・・・」






デスクチェアーに座ってこっちを見つめる累。

私はというと部屋の真ん中に置き去りにされ、呆然と突っ立っている。


なにこれ。

どういう状況なんすか。






累「早くしないと俺がクローゼット物色するよ?」

「・・・選びまーす。」






さすがにクローゼットを覗かれるのは困る。



てか・・・・何がしたいんだ累たん。

なんで可愛い格好しないといけないんすか。



それより可愛い服なんてほとんど持ってないし着るのも久々で・・・

まぁアレだ。

かなり恥ずかしい。







累「これにしてこれ。」

「うぉ!?」







クローゼットを漁っていたら

急に上から声が降ってきた。







「こ、こら!勝手に覗くな!」

累「これ。可愛い。」

「え!・・・・・こ、これはちょっと。」






薄いピンク地に小さな花柄のチュニック。


間違っても自分で買ったんじゃない。

いつかの誕生日に女子友がプレゼントしてくれたもんだ。






累「なんでまだタグがついてんの?」

「・・・・・・・・・。」







一度も着てないからです。








累「これと・・・あ、これね!」

「え・・・」






結局クローゼット漁りに参加した累たん。

どこから探り出したのかショートパンツを引っ張り出し

ささっとコーディネートしてしまった。







「いいいいやいや!これは無理!」






こんな格好出来ないっすよ!

誰に迷惑かけるって・・・

自分が気分を害します!






累「ほら、早く着替えてね。」

「・・・・・・・・・。」






無視か?

私を放置し部屋から出て行こうとする累。

もちろん絶対着替えねぇからなと目で訴える。






累「着替え終わるまでここにいてもいいんだけどな。」

「別にいいぞ。」






それで脅したつもりか?

そんなんじゃ私はめげんぞ。

着替えなんて断固拒否。


ていうかこんな格好で外は歩けないって。

恥ずかしすぎる。








累「俺・・・それ着た有希を見てみたいな。」

「------え・・・」








る・・・・累たん。

その顔---わざとっすか!?








「・・・・出ててくれよな。」

累「やった!着替えたら出ておいでよ?」

「・・・・・了解。」







か・・・・可愛すぎるんだよお前はっ!!







私は恐らく

いや、絶対・・・






弟妹系に弱い。







お願い事されると断れない。

なんでも叶えてあげたくなっちまうー。







(うわ・・・・・・似合わねぇ・・・)







しぶしぶ着替えてみたわけですが・・・

あまりの似合わなさに衝撃を受ける。



でもまぁ仕方ない。

累からお願いされちまったんだもの。



化粧は---直す時間なし。

髪は---まとめてピンでざっくりやっとくか。







「き、着替えましたぁ・・・・」







恐る恐るドアを開けると

累はドアの横に背もたれて立ってた。







累「・・・・・・・・・・・・。」

「えーーーーっと・・・」

累「・・・・・・・・・・・・。」







うっわ、感想なし!

はい撃沈。

分かってたけどやっぱ恥ずかしいっす。






「え、えーと・・・やっぱり元に戻りまーす。」





は、恥ずかしすぎる。

やっぱ人様に見せられるような姿ではなかった。

分かってたのに・・・

すみません調子に乗りましたー!







累「ダ、ダメ!」

「は?」







ドアを閉めようとすると手を掴まれた。






「あの、手ェ放して」

累「すっごく可愛い。」

「・・・・・・・・・・は?」

累「ビックリした。いつもとあんまり違いすぎて・・・すっごく可愛いよ。」

「・・・そりゃどうも。」






どうやら累たんの目には可愛く写っているらしい。

物好きな奴だな。

もしかして意外性が好きなタイプだろうか。






累「い、行こ?」

「え・・・・!?」






手を掴んだまま歩き出す累。

おいおい。

マジでこれで行けと?






累「これからはずっとそんな格好しててよ」

「冗談言うな。」

累「すっごく似合ってるのに。」

「そ・・・・・そうか?」






いやいや気をしっかりと持て。

累たんのキューティーオーラに呑まれるな。







とりあえず







誰かに見せるわけでもねぇし

累はなんだか喜んでるし







今日はこれでいいか。







なんて思ってしまった次第であります。








桜館の灯りを全て消し去り

何年かぶりにしっかり女子に見える格好して







累に手を引かれて出発した。